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プロローグ
――“人の気持ちが声になって聞こえる”って、便利そう?
違うよ。地獄だよ。
朝の教室。ざわざわとした話し声の奥で、
私の頭の中では、別のざわめきが渦を巻いている。
それは誰かの“気持ち”。
他人の感情が、勝手に心の声になって頭の中に流れ込んでくる。
『あー数学ダルい』
『今日の前髪、失敗した』
『お腹空いた』
半径三メートル。
その範囲の“心の声”が、ノイズみたいに重なって離れない。
ありがたいのか、迷惑なのか――そんなの考えるまでもない。
人に興味がない私には、ただの騒音だ。
……でも、一つだけ例外がある。
どんなに耳を澄ませても、聞こえなかった心の声。
あの“静けさ”が、何だったのか――今でも分からないけど。




