50 ぶどまるを訪ねて
張り切り始めたガーンさんは少し気になるけど、改めて考えてみても俺が戻ったところでなんにもならないんだよな。
「ガーンさん、俺、このまま帰ります。お店にお昼ご飯届けるので、ガーンさんの分も持ってきますよ」
「おうそうか、ありがとよ!」
というわけで、家に戻ることにした。
「あの、おはようございます」
「おはようございます」
「えっとたしか、ジングさんですよね?」
「はい。そうですけど、何か?」
ようやく見慣れた風景のところまで戻ると、そこでばったり大人の女性と遭遇した。
ただ挨拶だけかと思ったんだけど、彼女はなんだか俺と話がしたそうだ。
「ええ。ちょうど今お宅を訪ねに行こうとしてたんです。あの、これはつまらないものですが、どうぞ」
「ありがとうございます。花びらの瓶詰めですね」
「芳香剤です。蓋を開けておくだけで香りが出て、リラックス効果があるんですよ」
「なるほど」
せっかくもらえるんだから、ありがたくもらっておこう。
「それで実は、ジングさんにご相談がありまして」
「俺にですか? というと、うちの野菜達に何か?」
「はい。そうなんです。折角ここで出会えたので、立ち話になりますが、ここでお話してもよろしいでしょうか?」
「はい。あ、でも、野菜達と一緒の方が良いような。どの野菜に相談があるんですか?」
「名前はたしか、ぶどまるさんです」
「ぶどまるか」
残念。今ぶどまるはリフォームを手伝っていて手が離せない。呼びに行くのは忍びない。
「ぶどまるは今ちょうど仕事を任せていて、手が離せないんです。だからまずは俺が話を聞きます。それでいいですか?」
「はい。ではぶどまるさんに話を伝えてください」
「わかりました」
「実はうちの娘が、祝福スキルで水魔法を覚えているんです」
「なるほど。娘さんが。お名前は?」
「娘の名はナーウィです。それで、ナーウィにはもう少し大きくなったら町にある魔法学校に通わせようと思っているんですが、やはりそれより前にも魔法の練習をしておいた方が良いと思いまして」
「なるほど。それでぶどまるを訪ねてくれたんですか」
「そうなんですが、恥ずかしい話、肝心の娘と夫に反対されまして」
「えっと、それはぶどまるじゃダメだということでしょうか?」
「ナーウィはそうなんですが、夫はそんなお金なんか無いと一点張りで」
「あー」
確かに生活費プラス娘の学費貯金、そこに塾の講師料まで積み重なったらたまったものではないだろう。
「娘の説得はどうにかできるんです。まずはぶどまるさんに一度会わせて、そこで実力を目の当たりにすれば素直になります」
「そこまでうちのぶどまるを買ってくれるなんて。ありがとうございます」
「本当に凄かったですよ。この間の魔法のパフォーマンス。水魔法ではありませんでしたが」
「ああ、ぶどまるは水魔法も使えますよ」
「本当ですか! それではますますお願いしたいです!」
「ぶどまるが良いと言えばいいんですけどね」
俺がやれと言えばやるかもしれないけど、それはほぼボランティアだしな。ぶどまるも今日みたいにやることある日はあるだろうし、安請け合いはできない。
「お金も、少しは用意できるんです。私の稼ぎは少ないですが、それで足りればお願いしようと思いまして。それで、魔法の授業料はおいくらになるんでしょうか?」
考えてなかったな。
「ちょっと待ってください。それは俺の一存では決められません」
「そうですか」
「あと、肝心のぶどまるも今、大掛かりな仕事をやってもらっているんです。なので、魔法の授業もそれが終わってから、お店が開店したらぶどまるに頼めるようにします。それでいいですか?」
「はい、ありがとうございます。そういえばジングさん達、お店を始めるんでしたね。噂は聞いています」
「はい。場所は辺鄙なところにあるんですけど」
「村にあるだけでありがたいです。そういえばあの、焼肉のタレ。あれも売るんですか?」
「はい」
「では、絶対行きますね!」
「あ、はい」
あれ、お金、娘の塾費用が優先じゃないのかな?
まあいいや。この話はちゃんとぶどまるに、いや、皆とも相談しておこう。
この話歓迎会翌日に持ってくるのすっかり忘れていました。ギルマスも夕方に焼肉タレ買いに来てジンジャと会ってます。




