40 リシュットの勝利と敗北
「ハッハッハッハッ」
「ハッハッハッハッ」
「おお、こいつらがギルドが前言ってたモンスターか」
「可愛いな。凶暴そうでもないし」
「あんた、ちょっと触ってみなさいよ」
「え、俺? 仕方ないな。ちょっと触っていいか?」
「ワン!」
「どれどれ。おお、フサフサであったかいな」
「それ見たまんまじゃない。大人しいわね。私も触ってみるわ」
「じゃあ次俺撫でるわ」
「ワン!」
ふと見ると、ベリストロとバウンヴァッフは人気だった。
そこにスーツ姿ジルオンさんが近づく。
「そういえば、まだこいつらの脅威度を確認していなかったな」
「いや、ギルマス。とはいっても大神父様とスペシャルスキル持ちのペットですよ。わざわざちょっかい出さなくても」
「リシュット、バカを言うな。俺達は冒険者ギルド職員だぞ。未知のモンスターの実力ぐらい知っておかないとまずいだろ。というわけで、大神父様かジングのところか、どっちかのヤサニマルと戦ってみたいんだが」
そう言って大神父様の方を見ると、ナジン大神父様はおばさま方に囲まれていた。
「ナジン大神父様は本当にかっこいいですわねえ!」
「それに素晴らしいです!」
「はっはっは。皆様お世辞が上手いのう! もっと言ってくだされ!」
「ということで。ジング。お前のところのヤサニマルと、このリシュットを戦わせてくれないか?」
「あ、はい。いいですよ。ベリストロがやる気あるならですけど」
「ちょっと待ってくださいギルマス。なんで俺が」
「俺はもう戦ったから。それにこの服汚れたら困るし。まだ新品だし」
「あ、そうでしたね。仕方ない。はあ。まあ、やれと言われたらやりますよ」
「ベリストロ。ちょっといいか?」
俺は人気なベリストロに声をかけた。
「ワン?」
「今、お前の強さを知りたいっていうお兄さんがいるから、その人と戦ってほしいんだ。できるか? ほら、あの人だ」
俺がそう言ってリシュットさんを見ると、ベリストロはやる気な目をした。
「ワン!」
そう一声鳴いて、リシュットさんに近づく。
すると、自然と周りの人は二人を囲んでバトルフィールドを作った。
「お、なんだなんだ、喧嘩か?」
「こんなかわいいモンスター相手に冒険者ギルド様がみっともないぞー!」
「ワンちゃん、頑張ってー!」
「ワンコウ、負けるなよー!」
「ワン!」
「なんか皆ノリノリだなあ」
「このアウェイ感、やる気そがれますね。けどまあ、やるしかないか。モンスター君。かかってきなさい。先手はゆずってあげますよ」
リシュットさんはそう言って、ベリストロを手招きした。
「ワン!」
するとベリストロは、 キリッとした目つきをして、すくっと立ち上がった?
「え。立ち上がる? 二本足で?」
ベリストロはそのまま後ろ足二本で歩く。よちよち歩きで。
「いいぞワン公ー! そのままいけるぞー!」
「ギッタギタにしてやってー!」
「ワン!」
初動はまるで亀の歩み。しかし次の瞬間、ぴょんとジャンプすると四本脚で着地し、そのままとびかかった。
いや、最初からそうしてろよ。
「ワオーン!」
いやでもベリストロの初撃はやっぱり前足パンチだったー!
「ふむ」
「ワン! ワン! ワンワンワンワンー!」
ベリストロは更に前足パンチの連打をおこなう。
しかしリシュットはその全てをかわしきった。
いやまあ、当然といっちゃ当然だけど。リーチ短いし。俺でもかわせるだろうし。
「ワンー!」
ベリストロは最後に後ろ回し蹴りを空振り、少し距離をとって再び対峙する。
「見た目の割にはやりますね。では、次はこちらの番です」
次はリシュットさんから動いた。
その動きはゆっくりだったが、一歩踏み込んだ瞬間に急加速する。
「ワ」
「遅い」
ベリストロは前足カウンターを狙ったが、それより早くリシュットの拳が顔パーン! した。
「ワフー!」
吹き飛ぶベリストロ。そのまま目を回す。
「ベリストロ戦闘不能。勝者リシュット。だな」
ジルオンさんがそう言った。すると。
「ワン!」
ここでベリストロをかばうように、バウンヴァッフがやってきた。
「おや、もしかしてあなたも戦うのですか?」
「ワン!」
「やれやれ、仕方ありませんねえ。ではもう少しつきあってあげましょうか。もちろんあなたにも手加減してあげますよ」
「やだ。何あいつ。ひどい」
「動物虐待かよ」
「人のすることじゃないな」
「獣以下よ」
明らかに聞かせようとする外野からのヒソヒソ声ブーイング。決して騒がしくはないが、容赦のない罵詈雑言の雨が続く。
そこで、ジルオンさんが言った。
「リシュット。ここで降参しておけ」
「ギルマス。はあ、はい。降参です。まいりました」
わー!
突然、雑音は一気に歓声に変わる。
「やったなワン公!」
「敵討ち成功ね!」
「大物を倒したな!」
「ワン!」
誇らしげに鳴くバウンヴァッフ。
なんというか。
「あー。その、ごめんなさい」
「気にするな。これも仕事だ」
そのジルオンさんの言葉は、俺に向けて言ったのか、リシュットさんに向けて言ったのか、わからなかった。
明日の投稿はお休みします。




