4 いっちーイチゴを出す
新しい朝が来た。
たぶん、希望の朝だと思う。ここ異世界だからなあ。
けどもう、昨日みたいな仕事の手伝いはできない。
「おはようございますジングー」
「おはようフレリア。朝早いね」
「ジングも早いですよー?」
「俺はちょっと寝付けなかったんで」
「なるほどお。でも今日もハードにいきますからね?」
「あの、そのことなんですけど、フレリアの手伝い以外で俺にできることってないかな。流石に昨日みたいなのはちょっと。もっと安全な仕事がしたいです」
「ふむふむー。でしたらあ、ここ3日くらいはここで泊まりながら職探しをしてもいいですよお?」
「本当ですか!」
「流石にやりたくない仕事は続かないしい。それに、私としてはポテトサラダが食べれるだけで満足ですから!」
「それは助かります!」
ありがとう、ポテトサラダ!
「ではあ、今日も早速ポテトサラダを作ってくださいー。私はパン屋でパンを買ってきますねー」
「はい、いってらっしゃい!」
ということで。
無事ポテトサラダは作り終えた。味付けは昨夜と同じ。
うーん、マヨネーズ、もしくはケチャップとかないかな。あればもっと美味しくなるんだけど。
「あ、そうだ。俺アメージング農家だよな。だったらケチャップの元、トマトくらい作れ、そ、う」
俺はイッチーを見た。イッチーは俺に向けて親指を立てた。
「いや、無理だな」
「そんなことねえよ。マスターならいけるって!」
「お前見たらそんな自信つかねえんだよ」
これがイチゴですって信じられるか!
「流石にお前は売り物にできないよなあ」
ほぼ人身売買になっちゃうし。
「うん。でも売れるイチゴなら出せるぜ!」
「本当か!」
それは朗報だ。イチゴが売れるならイチゴ農家として独立できる。
これは3日の期限なんて待たずにフレリアに胸をはれるぞ。
「じゃあ早速出してくれ、イッチー!」
「おうよ!」
イッチーはそう言って後ろを向いた。そして。
「ゲロゲロゲロゲロ。はい、イチゴ!」
「アウトー!」
お前の持ってるそれなんかテカってるんですけど!
「ていうか一個じゃん! しかも食べられない!」
「失礼なこと言うな、美味しいぞ!」
「気にしてるのは味じゃねえよ!」
ひとまずイチゴはまな板の端に置いておく。
「これじゃあイチゴで稼ぐのは無理だな」
「今はこれだけだけど、レベルが上がれば一度にもっと出せるようになるぞ!」
なんとゲームチックな。
「どうやってレベルを上げるんだ?」
「日光浴!」
ほのぼのしてるな。
「あと敵を倒す!」
「いや、それはダメだろう」
ただでさえ牛との戦いはもうごめんだというのに。あとイッチーが牛レベルを相手にできる未来が見えない。
「最後は職をこなす!」
「職って?」
「俺の職業は戦士だ!」
「それも却下っぽいな。ていうかイッチーお前戦士だったのか」
「ああ。俺の武器は頼りになるぜ!」
イッチーはそう言うと突然手にロケットランチャー的なものを生み出した。
「イッチー、それは何?」
「ロケットランチャー」
「危ないからしまいなさい」
「ちぇー」
イッチーは一瞬でロケットランチャーを消した。
「イッチーそんなもの出したり消したりできるの?」
「これが俺の武器だ!」
「驚きすぎてつっこめないが、ロケットランチャーが使えるなら戦うのもありか?」
俺は非力だが、銃があれば心強いというやつだ。
「どうだい、頼りになるだろ!」
「イッチー、一人でモンスター退治とかいける?」
「いや、俺はマスターの所有イチゴだからな。基本的にマスターの近くにいるぜ!」
「そっかー。でも、ロケットランチャーを使うならモンスターに挑むのもありか。よし、イッチー。今日はちょっと戦えるか試してみよう」
「オッケー!」
そしてフレリアが帰ってきた。
「ジング、イッチー、ただいまですー」
「あ、フレリア。おかえり」
「ちゃんとイッチーの分も買ってきましたよー」
「わーい!」
「あの、フレリア。今日は俺とイッチーでモンスター退治に挑みたいんだけど、ノウハウとか教えてくれる?」
「あれ? 危ない仕事はしないんじゃなかったんですかあ?」
「うん。だけど、ちょっと事情が変わったんだ」
「へえー。まあいいですよー。それじゃあ冒険者ギルドを案内してあげますねー」
「ありがとう。助かるよ」
そして。
「あっ、こんなところに美味しそうな樹の実がありますー!」
「ああ、それはイチゴって言ってね。厳密には野菜なんだ」
「へえー。もらっていいですかあ?」
「う、うん。いいよ」
「ではいただきますう。ぱく。んーっ、甘くて美味しいー!」
どうやら、イッチーが出したイチゴは美味しいようだった。
ただ、イチゴの出し方はフレリアには黙っておくとしよう。