35 ギルドマスタージルオン
「ここが集会場ですー」
「ありがとうフレリア。って、もう人がいるな」
「そうですねー。いつものことですー」
集会場、っていうかただの広場だけど、もう何人か集まっていた。
ていうかここ、村長の家の目の前だ。
「村長の家の前でやるんだ」
「はいー。ここならそれなりの広さがありますからねー。でも、歓迎会はもう少し経ってから始まりますよー」
「そうか。その方がこっちも都合が良いかな。マトット、焼肉の準備頼むぞ」
「任せなさい!」
ひとまず俺達は広場に来て、彼らに近づいた。すると先に向こうから声をかけられる。
「やあ、ジング。歓迎会はまだだよ。早く来たようだね」
「こんにちは、アダンさん。こっちも料理を用意しようと思いまして。それで早く来たんです」
「ああ、例の。話は聞いているよ。ありがとう。こちらからはお酒以外は何も出せないが」
「いえ、いいんです。こっちがやりたいことなんで。気にしないでください」
広場の中心あたりにはアダンさんとミアン、あと数人の男がいた。それと数個の壺が置かれている。これがお酒なのだろう。
「それで、料理はどこらへんでやれば邪魔にならなそうですか?」
「どこでもいいよ。好きにやってもらってかまわない。あ、でもいつも炊き出しをする場所は決まっていたかな。やっぱりこっちでやってほしい」
「はい」
よし。まず場所は確保したぞ。それじゃあ後は。
「任せたぞ、マトット!」
「ええ、美味しいものを作ってやるわ。調理器具召喚!」
マトットが真の力を発揮すると、目の前にバーベキューセットが現れた。あの肉焼く網のやつだ。
「んー」
マトットはそれをほいほい3つ出すと、4つ目に寸胴鍋と簡易コンロを出す。
「鍋。ということはスープか?」
「テールスープを作ろうと思って。スパイスも買っておいたしなんとかなるわ」
「頼もしい」
「あとはまな板召喚!」
マトットはあっという間に調理スペースを作ってしまうと、すぐに野菜を切り始めた。
「すごい」
「なんじゃありゃあ」
「目の前であっという間に台所ができちまったぞ。どうなってるんだ」
遠目から観察している人たちがどよめいている。まあいっちー達の能力を知らなかったら誰でもそうなるよな。
「薪は俺が魔法で出さないとな」
「火は俺が出してやるよ。枝と枝をこすり合わせて」
「助かるいっちー。これで魔力が節約できる」
「やあってやるぜ!」
「ワン!」
チームワークも良い。これならずっと見ていなくても大丈夫だな。そもそも俺何も手伝えないけど。
「手を出す隙がないな」
「そのようですね」
「じゃあマスター、今のうちに今日のファッションの感想でも聞いてくるか? 村での交流もかねて」
「あ、そうだねジャガット。じゃあアダンさんにでも話しかけてみるか」
今のところ、アダンさんにしか話しかけづらいしな。
「それじゃあー、私はマトット達を見てますねー。可能ならお手伝いしてますー」
「あ、はい」
フレリア達と一旦分かれて、俺はジャガットと一緒にアダンさんの元へ戻った。
「アダンさん、今日は歓迎会、ありがとうございます」
「いいんだよ。いつもやっていることだからね。それより、増えたねえ」
「あ、はい」
確かに、アダンさんの家に行った時の3倍の数だもんな。
「いたら助かると思って。実際、皆よく働いてくれてます」
「なるほど。じゃあ今ジングが着ている服は、そこの彼が用意してくれたのかな?」
「ああ。ジャガットだ!」
「よろしくジャガット。私はアダン。ここの村長だ」
アダンさんとジャガットは握手を交わす。
「俺は服屋。服を用意できる。今マスターが着ているのは、俺が用意したスーツだ!」
「ほう」
アダンさんが俺の格好をじっくりと見た。
「確かに、変わっているね」
「はい。どうですか? その、感想的な」
「いいんじゃないかな。きれいだし、高価そうだし。しかし異国の服か。やっぱり変わっているねえ」
「これは普段使いのものじゃなくて、パーティーや仕事なんかに着ていくための服です。普段着のものはまた別にあるんですけど、正直な話、売ったらお金になると思います?」
「随分率直だね」
「結構必死なんです。金策」
「んー、実際のところはわからないけど、人によっては売れると思うよ。中には珍しいもの好きな人もいるし。でも高いと買い手はなかなか見つからないかもね。ここは辺境の村だし」
「いえ、珍しい、それは武器になります。そうですね。じゃあ手始めに1ダースくらい売ってみるか。ジャガット」
「任せな!」
「ミアンはどう思う?」
アダンさんがそう言うと、俺達の視線は自然とミアンの方へ向く。
「そうですね。良いと思います。けど、私が着るとなるとちょっと。ズボンですし」
「あ、スカートもあります。女性用のスーツはまたちょっとデザインが違うんですよ」
じっくり見たことないから、うろ覚えだけど。
「あ、そうなんですね」
「今出してみるか?」
「え、いいんですか?」
「出せるぜ!」
「まった。出したら試着もこみじゃないと。後で機会をください」
「はい。それじゃあ後ほど。楽しみにしていますね!」
「はい!」
おお、楽しみにされた。これは期待もてるかも!
「そのスーツ、俺も興味がある」
そして、一人の地味めな男が話に入ってきた。
「あ、俺ジングです。はじめまして」
「俺はジャガットだ!」
「俺はジルオン。この村の冒険者ギルドのギルドマスターだ」
「え!」
そう見えない! ゴツくないし!
「実は持っていた会議用の服が結構古くなっていてな。ちょうど新しいものを探していたんだ。だが、この村でそれなりの服を買うとなると、取り寄せだろ? それだったら君たちからすぐ買えた方が良いかもな」
「あ、ありがとうございます!」
「俺の服を買いたいとは、見る目があるな!」
「で、いくらだ?」
「あ」
俺はジャガットを見る。
「ジャガット、どう思う?」
「うーん。ロケランが一発2千ウレなんだろ?」
「うん」
「じゃあ上下にシャツとネクタイと一揃えして、2千ウレでどうだ?」
「と、思いますが」
「高いな」
「そ、そうですか!」
「俺が着てた古くなったやつは1000ウレくらいだったはずだ。半額にはならないか?」
「じゃあそれで」
「俺もそれで良いと思います」
「お、そうか。それじゃあそれで頼む!」
ジルオンに良い笑顔で肩を叩かれた。
あれ。俺、上手くまけられた?
でも、値段交渉なんて素人だし。
「じゃあ後で色とか決めておけよな!」
「なに、それも決められるのか」
「ああ!」
「思ったよりすごいな。お前。あと、もう1つジングには頼みがある」
「なんでしょう?」
「お前達はろけっとらんちゃあなるものを売っているらしいな。その効果、俺にも見せてくれ」
「いいですけど、ここで見るんですか?」
「ああ。何事も自分で経験するのが一番だからな。俺に向けて使ってくれ」
「え?」




