32 ベリストロとバウンヴァッフ
新しい朝がきた。希望の朝だ。たぶん。ニオンも増えたし。
「さあ、ご飯ができたわよー!」
「いただきまーす!」
「マトット、なんか今日も俺のだけおかず違うんだけど」
「マスターだけ特別よ!」
「とてもそうには見えない」
「じゃあ私はいちご犬にもごはんあげてくるわね!」
「いや、それは俺がやる!」
「いっちーはあいつの世話係だからな」
「まあ、話し合いの結果普段戦闘がない戦士の俺に役割が回ってきたからな。だがやるとなったらとことんやる! そして見事ベリストロを立派な戦士犬にしてみせる!」
「あ、名前考えたんだ」
「うん」
「いっちー一晩中考えてたもんな」
というわけで、うちのヤサ二マルの名前はベリストロに決まった。たぶん、ペット的な扱いなんだろう。
「ところで、うちも随分手狭になりましたねえ」
フレリアにそう言われて、改めてみんなを見る。
いっちー。ぶどまる。ももっぴ。ジャガット。マトット。ニオン。
そして俺とフレリア。
うん。
「やっぱり多いかな?」
「はい。正直これ以上家族が増えるのは問題かもしれませんー」
「だよね。じゃあ、ひとまずは仲間を増やすのをやめとくよ。これだけいれば、結構なんとかなると思うし」
「はいー。そうしてくださいー。その方がこっちも助かりますー」
「でもいずれは更に増やす気か?」
「そうだねジャガット。ひとまず当面の目標は、更に仲間が増えても住める家を建てることかな。でもその前に」
「その前に?」
「税金、ちゃんと払わないとな」
「あー。がんば、マスター!」
ももっぴの相槌に応えると、野菜全員にそう言われた。
うん。頑張るよ。そしてお前達も頑張ってくれ。頼りにしてるから!
ジャガットに頼んで、ベリストロ用のスカーフを作ってもらった。
「レベルアーップ!」
「おお、ちょうどだったか」
「これで4レベルだぜ。一日に供給できるジャガイモの量も4つだな」
「それよりスカーフだ! ベリストロ、似合ってるぞ!」
「アン!」
うん。赤いスカーフがとてもよく似合ってる。けど。
「ねえ、ベリストロ昨日より大きくなってない?」
「ああ、でかくなってるな!」
いっちーがうなずく。まあそれでもまだ小型犬くらいの大きさだけど。
「きっと育ち盛りなんだな」
「だといいんだけど。これ、このまま大きくなればいいけど、もしモンスターらしく凶暴な見た目になったら、ちょっと村の中で飼うのは大変かもな」
「そんな!」
「じゃあそうなったらどうするんだ?」
「たぶん。村の外で放し飼いになるかも」
「そんな、そしたら、うん、あれ? 別にそれでもいいかも?」
「アン!」
「そうか、お前もいいか、ベリストロ!」
「そっか。ベリストロもいいなら、いっか。まあ、もしもの時はだからな」
「ベリストロ、外でもたくましく生きていけるように、鍛えてやるぞ。そうすれば一人でも立派にやっていける!」
「アン!」
「さて、それじゃあベリストロをつれて俺達も行こう」
「ああ。教会だったな」
ぶどまるに確認され、俺はうなずく。
「ベリストロともう一匹のヤサニマルが出会うとどうなるか、確認しないと」
朝冒険者ギルドで聞いた時は驚いたけど、むしろこれは良い機会だ。
もしも喧嘩ばかりするとなったら、本格的にヤサ二マルの繁殖は禁則事項になるからな。逆にみんな仲良くやってくれて大人しくしてくれたら増えるの覚悟で種をまけるんだけど。
「楽しみだな!」
「そうかな。俺は不安の方が強いけど。でも、なんとかなったらいいな」
教会に来ました。メンバーは俺、いっちー、ぶどまる、ジャガット、ニオン、そしてベリストロだ。
「こんにちはー」
「よう!」
「こんにちは!」
「ども」
「ごめんください」
「アン!」
「おお、お前さんらか。ほほう! こやつがそっちの家の種から生まれたモンスターじゃな!」
「ベリストロって言うんだぜ!」
「今日は、この子とそっちで生まれた子の顔合わせに来ました」
出迎えてくれたのはナジン大神父。ナジン大神父はベリストロをなでた後うなずいた。
「うむ。いいじゃろう。うちのバウンヴァッフも同類を見たら喜ぶかもしれん。さあ、こっちに来なさい」
「あ。そっちの子はバウンヴァッフって言うんですね」
「うむ。ワシが名付けた」
バウンヴァッフは首に桃をつけた、真っ白いモコモコした犬だった。
「ワン!」
子供達と遊んでいたバウンヴァッフは俺達を見つけると駆け寄り、そして、うちのベリストロと目を合わせると睨み合った。
「ウウーッ」
「ウウーッ」
両者唸り合う。あれ、ひょっとして危ない雰囲気?
これはまずいか?
「ちょっとまずいかも」
「確認。うーむ。見た目は違いますが、どちらも同じヤサ二マルのようですね。種類的な違いはないようです」
「ちょっと離すか?」
「いや、しばらく様子を見よう」
と言ったのはナジン大神父。
「男と男はぶつかり合って友情を深め合うものじゃ。きっとこの子達もそういうやつなんじゃろう」
「いや、俺そんな展開現実で見たこと一度も無いんですが」
「お、どうやら動くようだぞ!」
「がんばれベリストロ!」
「いや、負けるなバウンヴァッフ!」
ジャガットの言う通り、二匹はゆっくり近づきあう。
とびかからないということは、そう激しい展開にはならない?
そう思った直後、二匹はなにかを吐き出した。
ベリストロはいちご。バウンヴァッフは桃だ。
二匹はいちごと桃を見比べ、数秒経った後、ベリストロが勝ち誇り、バウンヴァッフが落ち込んだ。
「アン!」
「クウゥーン」
「おお、図鑑に新しい情報が登録されました。どうやらヤサ二マル同士は力の優劣を競うとき、体内から野菜を吐き出してその品質の差で勝敗を決めるようです!」
「ほっ。平和的解決手段で良かった」
「やったな、ベリストロ!」
「アン!」
「くううー、バウンヴァッフ、ワシも悔しいぞ!」
「クウーン」
「つまり、ヤサ二マル同士が一緒にいても、大変なことにはならなそうなんだな」
「アン!」
それなら、後はこの二匹の成長過程をしばらく観察した後、問題が無ければ種がまけるな。
今育てられるのはいちご、ぶどう、桃、ジャガイモ、トマト、たまねぎ。これだけあれば畑さえ持てたら農家もできそうだ。それに副産物でヤサ二マルも増えるし。
ヤサニマルがお金になるかはまだちょっと判断しづらいけど、もう少しで野菜の栽培が再開できるぞ。




