表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ホラー

停電

作者: 獅堂平

突然、部屋の照明が消えた。

「うわっ」

「なんだ」

「きゃっ」

 どたばたと三人は慌てた。

「ちょっと落ち着けよ」

 低音の男の声。

「危ないって」

 テノールな男の声。

「どこ触っているのよ」

 甲高い女の声。

「僕は触ってないよ」

 とテノール。

「じゃあ、武雄(たけお)でしょ」

「俺も触ってねーよ」

 もう一人の男。

「嘘」

「本当だって」

「あ、なんか、目がやっと暗闇に慣れてきた」

 テノールが言った。

「そこにいるには亮介(りょうすけ)?」

「そうだよ」

 テノールが答える。

「こっちが武雄かぁ」

 女が言うと、

「そうだ」

 低音ボイスが返した。

奈美(なみ)は怪我はない?」

 テノールが聞いた。

「大丈夫」

「そろそろ、電気つかないかな」

 低音が言った。

「周りが一斉停電したのかな」

 テノールが言うと、三人は同時に思案し始めた様子だ。

「あれ、でも、おかしいぞ」

「どうした?」

 低音の疑問に、テノールが聞いた。

「窓から見える他の家は灯りが点いている……」

「あっ」

「本当だ」

「ということは、ブレーカーが落ちたのか?」

 低音の男がどたどたと足を踏み鳴らして玄関のほうに向かった。

「待ってろ。スマフォのライトを頼りに、ブレーカーをあげる」

 数秒後、部屋の照明は点灯した。


 ――血だらけ姿の男女が立っていた。


「あれ?」

 テノールの男が愕然とした。中肉中背で眼鏡をかけている。

「ああ」

 女は青ざめていた。華奢な腰は今にも折れそうだ。

「どうした?」

 低音の男が戻ってきた。ずんぐりむっくりとした体型だ。

「いないんだ。死体が……」

 三人は血だまりのある場所を呆然と見つめた。


 *


(こんなにもうまくいくとは思わなかったな)

 青年は大通りにでると、緊張がとけ、ニヤニヤと笑った。彼の姿は全身が血糊で真っ赤に染まっており、通行人は一瞬ぎょっとして振り返るが、悲鳴をあげることはなかった。

 今日はハロウィンだから、血だらけ男の仮装をしていても怪しまれることはない。


 あの三人の計画に気づいたのは、一週間前だった。青年を殺し、ハロウィンに便乗して死体を堂々と運ぶという計画だった。

 彼は、その逆をついて、切っ先が引っ込む包丁で刺されたふりをした。血糊を大量に放出し、倒れ、時限式でブレーカーが落ちるようにしていた。


(今頃、あいつら、泡を食っているだろうな)

 青年は愉快な気分になり、哄笑した。


 *


 * *


 * * *


「先生!先生!起きてください」

 僕は激しく肩を揺らされて、目を覚ました。

「教卓で眠るなんて、珍しいですね」

 少年は怪訝な顔で僕を見た。僕の教え子の中学生男子だ。

「いや、懐かしい夢を見たよ」

「どんな夢ですか?」

「僕が、先生が、教え子に襲われる夢だよ」

「怖いですね。それ」

 少年はぶるりと身震いした。

「なに、怖くはないさ。僕が死んだふりをして、撃退したからね」

「すごいですね。その人たちは今、何しているのですか?」

 少年に問われ、僕は指を指した。

「そこにいるよ」

 その少年の父親と母親がいた。本日は三者面談だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

同作者の次の小説もオススメです。

憂鬱

自称作家はコンビニ店員に一目惚れした。
店員と客の関係が思わぬ方向へ転がっていくサスペンス&ヒューマンドラマ。

浮気夫をタイムリープで調教します(カクヨム)

不倫阻止のため、魔法陣に血を注いでタイムリープする。
いびつな愛情のタイムリープ&サスペンス

同作者のシリーズ一覧

+ポイントについて(評価について)+

ポイントは、作者のモチベーションに繋がります。積極的に入れていただけるとありがたいです。
★1でも喜びます。


+感想について+

すべての項目を入れる必要はありません。「一言」だけでも充分です。


+お気に入りユーザー登録について+

お気に入りにすると、作者の新作や更新が通知され、便利です。

script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 確かにハロウィンの時期は、奇抜な仮装をしている人でごった返していますからね。 その中で非日常的な事が多少起きていたとしても、上手く工夫すれば紛れ込む事が出来そうです。 ギルバート・ケイス・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ