式後
三題噺もどき―ひゃくろくじゅういち。
お題:ミルクティー・白磁・標識
眩しい日差しが肌を刺す。車に乗っていても容赦なく。
ギラギラと輝く太陽は、惜しみもなく、その光を地上へと落としている。
「……」
そんな日に。
私の友達が結婚した。
さすが晴れ女というか。ほんの数日前まで、雨の心配がされていたのに。今日の晴れ間と言ったら…。すさまじいほどの熱量と、カラリとした気持ちのいい空気感。もう、彼女そのものという感じだった。
「……」
どこまでも強気で、明るい彼女らしい。
夏生まれだと言われると、あぁなるほどと納得できるほど、彼女は夏がお似合いだ。まぁ逆に春とか冬生まれだと言われるのも、それはそれでギャップ萌えとかになるのかもしれない。
けれど、彼女には夏がお似合いだ。
「……」
大切な結婚式を、この夏日に行う、それもまた彼女らしさ。
六月には絶対しないと決めて居たそうだ。ジューンブライドとか、知らないし。
彼氏はどうやら、六月にしたいと思っていたそうだが。
彼女の話を聞きながら、他の人とは逆パターン…と思いつつ。そこもまぁ、彼女らしいというか。我の強さというか、曲げない所というか…。
それなりの付き合いではあったりするので、その癖は少々直せば?と言ってはいたのだが…。学生の頃よりは丸くはなっているので、いいのか…。
「……」
彼氏も大変だなぁ、と思いつつ式の準備についての話を聞いていたが。その辺についての話とかは、結構お互いの意見を混ぜながら決めていったようだし。
その証拠に(証拠に?)、所々、彼女の趣味ではなさそうなあれこれがあったし。
「……」
一番は、この引き出物だろう。
車を運転している私の横、助手席の上に置いてある箱。
正方形の、中くらいの箱。ベージュの箱に、ブラウンのリボンが十字に結ばれている。そこには、一枚のメッセージカードが挟まれている。彼女がわざわざ手書きで書いたのか、特徴的な文字で、一言綴られている。
「……」
中身は、白磁のティーカップとお菓子のセットだという。マドレーヌと、インスタントのミルクティーが入っているらしい。そいうのってコーヒー淹れたりしない?と聞くと、二人が飲めないらしい。―なんだかそういうのを聞くと、こそばくなるな。
しかし、そのカップの方は、絶対に彼女の趣味ではないだろうな…と。なんでも、彼氏のおススメらしい。女性陣が多く見えていたし、そういうのを考えたら、こういう感じのがいいんだろう。
「……」
個人的には、彼女がおススメしていた黒漆の方が、嬉しかったりするのだが。
割と趣味は合うのだ。性格はあっていないと思うが。だから、彼女との話というと、大抵周りから見れば、ただの言い合いにしか聞こえないと言われる。仕方あるまい。意見があったことなんかないし。
未だに、なぜこんなにも長年に渡って、友人関係が続いているのかと、自分でも思うぐらいだ。
「……」
ま、引き出物に関しては、当人たちで話した結果だし。
第三者以外のナニモノでもない私が、口出しするものでもない。
珍しく、彼女が折れたというのが印象に残ってしまっているから、気になってしまうだけだ。なんでこれなん?と。
ま、今日は彼らの結婚を祝う日だ。これからもこうして、折り合いをつけて、今日の祝福が続くことを祈ろう。
「―と、」
そうこう考えているうちに、住宅街に入った。
伝えるのがこの上なく遅くなったが、今はその結婚式の帰宅途中である。式自体はまだ続いているはずだ。私は残念ながら、午前しか時間が取れず、ほんの少しだけ、参加したのだ。
「……」
ありがたいことに、式が始まる前、彼女と話す事が出来た。その時に色々伝えることは出来たし。それまでにも、たくさん話はしていたけれど。
なんだか、綺麗に着飾っている彼女を見て、それで満足だった。
「……」
一時停止の標識が、遠くに見え始める。
急ブレーキにならないよう、緩やかにスピードを落としていく。幸い、後ろに車は居ないし、人もまばらなようだ。
「―けっこん、かぁ、」
ぼそりと呟く。
年も年なので、考えないといけないのだろうけど。パートナーがいたこともないし。そんなことを考えたこともない。
身近な人が結婚することはあったが、今回みたいにはならなかった。―やはり、彼女が、というのが私の中でかなり大きかったのだろう。
「んー…」
停止線に到着する。
きゅっと、しっかりとブレーキをかけ、目の前と、左右を確認する。ここホント、見づらいな…。左右から来る車が、ミラー越しでも見にくい。
運転席から、ほんの少し身を乗り出し、さらに確認する。ブレーキは離さぬまま。
「――――――――――ぇ?」
右の道路から、一台の大きなトラック。




