お父様やロミオのために
「ソフィア令嬢よ、私のそばに置きたい」
「え!?」
「ほう、ついにロミオ君はソフィアを口説くか。パパとしては嬉しい限りだがな」
恋愛も婚活もしたくないと思ってからわずか数日、とんでもない大物から求婚されてしまったのである。
「あ、無理です」
「「は!?」」
二人とも唖然としているようだが、ここはお断りをするしかないだろう。
はっきり言ってロミオ様と結婚したら、私の生き方に支障が出る。
「申し出はとても嬉しいんですけどね、私こういう口調ですし、貴族マナーも出来ていないですから。王子ともあろう方の妻にでもなったら世間からお互いにバッシングされるのは手に取るように分かります」
ロミオ様が王子でなかったら、話してて面白いし頼りになるから結婚もアリかもしれない。
だが、私の欠点のようなこの性格は明らかにマイナス要素だ。今までだって分かってはいたけどキッカケがなかったからそのまま生きてきのだ。
個人的な身勝手な理由になってしまうが、結婚はできない。
「ますます気に入った!」
「は!?」
思わず王子に向かって変な声を出してしまった。
「その性格に惚れているのだ。変えさせようとも思わないし、公の場での強要もしないと誓おう」
「ま、ルーンブレイス国でバッシングなどあれば俺もそいつらに制裁するだろうがな」
あぁ、お父様の力が偉大なことは重々承知していますよ。
私がお父様の顔に泥を塗ってしまっているのも事実。『なんでハイマーネ家の令嬢はあんな口調なのだろう』と何度も影で言われているに違いない。
暫く私は黙って考え、覚悟を決めた。良い機会でもあるし。
「ロミオ様、一つ宜しいですか?」
「あぁ、私なら何個でもかまわんぞ」
「もしも私が貴族令嬢としての教育を受け、口調が変わっても気持ちは変わりませんか?」
「ソフィア令嬢に変わりはない。どんなソフィア令嬢であっても私の気持ちは変わることはないだろう。あくまで好きになったきっかけがそのヤンチャな性格というだけだ」
やはりロミオ様は優しい。
お父様達には今回助けてもらったし、お礼も含めてこう言った。
「では、私に厳しい教育のご指導をしてくださる講師を配属させていただけます?」
「「は?」」
二人とも驚いた顔をしているが、私は大真面目だ。
別に正義ぶっているわけでもないし、世間の目をそこまで気にしているわけではない。
ただ、お父様達に私なりの恩返しがしたいというだけだ。
「ソフィアよ、無理をして言っているのなら、いつものように我が道を貫いていいのだぞ? パパはソフィアを枠に閉じ込めるようなことはしないと言っているだろう?」
最初が肝心だ。今までの周りの会話を参考に丁寧に喋ってみよう。
「そうですね、お父様。私はこの先も身勝手に決めます。その上で、礼儀や無礼を勉強したいと思えたのですからいいでしょう?」
やはりぶっつけ本番は難しい。
ところどころ違和感が残る言葉になってしまう。
「私がこのような口調になって何か困ることでも?」
二人揃って首を左右に高速で振っていた。動きがおかしい。
コントかよ。
と、そうやって突っ込むのもこれきりにしよう。
私は私なりにロミオ様やお父様に恥じないような女になって見せるんだから。
♢
一年後、ロミオ様とは結婚を前提としたお付き合いをしていき、ついに結婚しました。
専属講師の教育はとても厳しく、何度か逃げ出したくなることもありましたが、持ち前の根性で戦いました。
おかげで、公の場に立ってもある程度は恥じぬ女になれました。
ただし、時々ハメを外してしまうこともありますが……そんなときは皆さんが笑って誤魔化してくれます。
「ソフィア、結婚式での挨拶の台本はなくていいのか?」
「構いませんよロミオ様。私は自分の言葉でそのときの想いで喋りたいのです。多少言葉が崩れてしまうかもしれませんが、出来る限り恥じぬよう努めます」
「無理をすることもないからな。ソフィアの頑張りは誰もが認めているのだから」
結果としては、決して百点満点とは言えない挨拶でした。
お父様やロミオ様、そして大勢の出席された方々へ感謝を込めて喋り始めたのですが、途中で泣いてしまいまして……。
ですが挨拶の後、会場の拍手はなかなか途切れませんでした。
中には一緒に泣いてくださる方までいたくらいです。
ロミオ様の横にいても申し分ないくらいの女性になってみせますからね。
お父様、ロミオ様……不倫騒動になったとき、私に全力で味方になっていただいた恩は、これからも返していきます。
大変申し訳ありません。
今作は完結させていたと勘違いしたまま放置してしまいました。
長い間更新が止まっていた中、目を通していただき大変ありがとうございます。




