【ざまぁ】完璧な推理だ!
「ソフィアのやつ、家を飛び出したまま帰ってこないな」
「あら、もしかして心配されているの?」
ラランカが嘲笑ってくるので、私は軽く頷いたが、そこまで心配しているわけではない。
「気がかりなのはあのまま奴の父親のところへ行かれると少々厄介だ。だが、急に出ていったのだからそれも心配無用だろう。走っていける距離ではない」
「まさか有名なハイマーネ財閥の令嬢さんだったなんて、今でも驚きだわ……」
玄関ドアがトントンと、音が鳴った。
こんな時間に誰だ?
そうか、ソフィアだな。あいつは結局何もできずにノコノコと帰ってきたか。
私はドアを開け応対する。
「速達の手紙ですのでお受け取りください」
なんだ、ソフィアじゃなかったのか。
「夜分遅くにありがとうございます。お勤めお疲れ様です」
「ご丁寧にありがとうございます。では」
外ではいい素振りをしていないと評判に関わるから、こういった挨拶は欠かせないのだ。
本音としては『こんな時間にわざわざ来るんじゃねぇよボケ』と言ってやりたい。
手紙が入っている封筒をよく見てみたのだが、嫌な予感がした。
慌ててラランカの元へ走る。
「ラランカ……不味いことになったかもしれんぞ」
「どうしたのー? 変な勧誘でもされちゃった?」
「いや、この手紙……おそらくハイマーネ財閥からだ……」
ラランカに手紙の封筒を見せた。
「あぁ……この独特の封筒は……」
「そうだ。ハイマーネ財閥特製のものだ。ソフィアのやつ、まさか金も持っていないくせにあんな遠くまで移動したというのか……」
「とにかく中を見てみましょうよ!」
ラランカも顔色がよろしくない。
そりゃそうだ。
ハイマーネのオッサンに目をつけられでもしたら何をされるかわかったもんじゃない……。
覚悟を決めて中身を読んだ。
『アウトロ男爵殿、ソフィアから話は聞いた。
はっはっは! 夫婦喧嘩など日常茶飯事だよ。
ソフィアはご立腹で我が家に来ているが、心配無用だ。
しばらくソフィアはこちらで過ごすことになるが、いずれ怒りが静まれば帰るだろう。
それまで一人でよろしく頼む。
レイン=ハイマーネより』
私もラランカも呆気に取られた。
「これは……ソフィアは離婚のことを喋ってないということなのか?」
「とても怒っているような文面じゃないわよ……」
二人で沈黙が続いた。
手紙の内容とソフィアが出ていった時の態度が不一致すぎておかしいのだ。
「……そうか!」
私はようやく理解した。
「ソフィアは離婚することを父親に告げたが、却下されたのだ。さすがハイマーネのオッサンだな。私のことを高く評価しているからソフィアのいうことを聞かなかったか、離婚を考え直すように説得してくれたのだろう」
「なるほど! それなら納得できるわ。あー良かった……びっくりしちゃったじゃないの!」
「私だってヤバいと思ったぞ。でもこれも全て日頃の私の行いというものだ。外では徹底的に人から信頼されるような行動しかとっていないのだからな。たとえその行為が偽りだとしてもだ」
「そんなこと私に言っちゃっていいの?」
「心から愛する者だけには嘘をつきたくない。これは私のプライドの問題だ」
「素直に喜んでおくわね」
ふぅ……ひとまずこれで心配事はなくなった。
私とラランカはこの日は夜通しで共に過ごした。
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