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本編有り後日談イチャらぶSSセット  作者: たつみ
第1章:理想の男性(ヒト)はお祖父さま(ジョシュア&レティ)
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愛しくも可愛くも

 ふにゃりと、レティシアの体から力が抜けている。

 彼は、内心で苦笑い。

 

(あんなに、かちかちになっている姿を見せられると、どうもね)

 

 自分が、酷く悪い男になった気がした。

 怯えている女性に、無理強いをしているかのような気分になったのだ。

 とはいえ、少し安堵してもいる。

 それに対しても、苦笑した。

 

(彼女が慣れていないことに安心するなんて、(ろく)でもない男だ、まったく)

 

 彼は、レティシアから恋人がいたことは聞いている。

 が、具体的な話は訊いていなかった。

 私的な事柄ではあるし、女性が話したがる内容でもない。

 それが、彼に大きな影響を与えるということはないが、気にはなる。

 嫉妬、という意味でだけれども。

 

 彼女が手慣れた女性であろうが、愛していたはずだ。

 ただ、相手の男性に、どれほど深い思い入れがあったのか。

 そこが引っ掛かる。

 

(やれやれ。年甲斐もなく嫉妬など、みっともないじゃないか)

 

 こんな姿は、けして、レティシアには見せられない、と思った。

 彼女は、彼を「理想の男性」だと言ってくれたのだ。

 できれば、理想であり続けたい。

 たとえ嫉妬や独占欲に駆られていようとも。

 

 ジョシュア・ローエルハイドは完璧ではない。

 

 それは、自分が最も良く知っている。

 レティシアを泣かせたり、傷つけたりもした。

 だからこそ、今後は、気をつけるのだ、絶対に。

 

 絶対というのは、絶対と思わなければ、絶対にはならない。

 逆に言えば、絶対と思えば、絶対になる、ということ。

 

 それを、彼は、レティシアから教わっている。

 きっと彼女は完璧でなくとも、愛を注いでくれるに違いないけれど。

 

(やはり恰好はつけておきたいのだよ、愛する女性の前では)

 

 小さく笑い、彼は、レティシアの隣に体を移した。

 横になり、とんとんと隣を叩く。

 レティシアが、顔を赤くしつつ、横になった。

 その体を軽く抱き締める。

 彼女が緊張し過ぎないようにとの配慮だ。

 

 彼は、さほど睡眠を必要としない。

 けれど、先に寝た「フリ」をする。

 でなければ、レティシアが寝られないと、わかっていた。

 彼が眠ったと判断したあと、彼女は、独り言をつぶやいたりする。

 そうしているうちに、ようやく眠りにつくのだ。

 

「おやすみ、レティ」

「お、おやすみなさい……」

 

 小声でレティシアが答えるのと同時に、灯りを消した。

 初日は、灯りを消しただけで、彼女は、びくっとしていたものだ。

 その反応は可愛らしかったが、レティシアを怯えさせるのは本意ではない。

 だから、彼は、寝たフリを続けている。

 

「……平気で寝ちゃうんだから……私なんて、こーんなにドキドキしてるのに……」

 

 平気ではないのだけれどと思いつつ、彼は黙って目を伏せていた。

 こんなふうに、レティシアの独り言を聞くのも、良くないとは思う。

 それでも、レティシアを睡眠不足に陥らせるよりはいい。

 彼女は、元々が睡眠を必要とする体質なので。

 

「初ちゅーかと思って焦ったのも、私だけだったぁ……恥ずかしい……」

 

 おそらく、初めての口づけ、という意味だろう。

 独り言の際、彼女は、あちら側の世界の言葉を、よく使っていた。

 だいたいは察しがつくので、どういう意味かと問い返したことはない。

 それに、この屋敷で使われている「レティシア語」を、レティシアから、彼には使ってほしくない、と言われている。

 

(あれほど緊張していたのに、不満そうに言うねえ)

 

 うっかり笑いたくなるのを我慢した。

 こうしたレティシアの恥ずかしがりなところも愛おしくなる。

 

「ていうか、私、まだ名前で呼んだことないんだよなぁ。もうお祖父さまじゃないのにさ。けど、どう呼ぶ? 名前呼び……? いやいやいや、無理無理無理」

 

 なぜ無理なのかは、わからない。

 彼は、前から愛称で呼んでいたので、変化がないのだ。

 その点、レティシアからは、ずっと「お祖父さま」と呼ばれていた。

 急に変えようとしても、気恥ずかしいのだろうと推察する。

 

「…………じ、じ、ジョ……ジョ……」

(もう少しだ。頑張っておくれ、私の愛しい妻よ)

「ジョ……ジョシュ……」

(おや? 愛称呼びかい? それもいいね)

「ジョシュア……さん……ジョシュアさん……うはあ! やっぱ無理!」

 

 小声で叫ぶという器用さを発揮しつつ、レティシアは、彼の腕の中で、じたじたしている。

 どうやら、道のりは、まだまだ遠そうだ。

 彼は気が長いので、待てるのだが、それはともかく。

 

(レティが、羞恥死しないように、気をつけなければならないな)

 

 暗闇でも、彼は目が効く。

 レティシアは見えていないらしいが、彼の顔を見上げるようにしていた。

 

「あ、そうだ。名前が無理なら別の呼びかたしよう。やっぱり、お祖父さま以外の呼びかたはしたいもんね」

(それは、そうだよ。私は、きみのお祖父さまではない。夫なのだから)

「……旦那様、かな。いや、でも、これだと、グレイみたいじゃん。呼びかけかたとしては、ちょっと違うか……うーん……あ」

 

 レティシアが、彼の胸に両手をあてる。

 やはり見えていないらしかったが、彼を見ようとしてだろう、顔を上げていた。

 

「…………あなた……」

 

 とくん、と、彼の心臓が音を立てる。

 彼は、寝たフリを諦めた。

 そして、レティシアの顎に手を添え、くいっと引き上げる。

 暗闇でも、レティシアの驚く顔が見えた。

 

「呼んだかい、私の愛しい妻よ」

 

 言いながら、レティシアの答えを待たず、彼は唇を重ねる。




本編300話と最長であり、最初に投稿した話でした。

脇キャラ、準脇キャラと、比較的、書き込んだところもあります。

メインキャラのところを気にかけてくださったかたにも、なるべく、ここいる?と思われないように、と思いつつ、書いておりました。

初めて書いた話であったにもかかわらず、感想を頂けたり、ブックマーク、評価をつけて頂けて、とても嬉しかったのを、今も覚えております。

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― 新着の感想 ―
[一言] サリーが押し倒す側、と(心のメモ)。 なるほど、レティシアがこうだから後々のローエルハイド家で夫の名を呼ばないことになるわけですね。 民言葉やら、昔のジークの血脈やら、シリーズの中にずっと…
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