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シャルルクという街

検問所を抜けて3日目やっと首都の街が見えてきた。

「あ〜やっとベットで寝れる!シャワー浴びれる」

「そうだな」

ピピップ〜


「スペラはアーデンのお陰で毎日水浴びさせて貰っていたでしょ?」


そう、あれからスペラは元気になって今では主張までしてきます。

ただ、右の羽根は根元から千切れ無くなってしまってた。

何かの獣に襲われて逃げれた代償だろうとアーデンは言うけど、この子はもう再び空を飛ぶ事は出来ないと諦めなければいけない。


でも、アーデンはそれでも命は助かったのだから。そして襲った獣も生きる為に必死なのだからと……

分かっては居るのそれがアーデンの言う摂理なんだって事は。

ただ、諦めると言う事が辛いだけ

そう思いながらスペラを撫でていると


「絵里子はまた何か考えてるな」


「うん、スペラは飛ぶ事を諦めたのかな?って」


「まだ、飛べなくなった事すら分かってはいないな」


「そうなんだ。分かったら悲しいよね?」


「鳥は飛ぶ事だけが全てでは無い。飛ばない鳥も多く居るそのどれもが悲しいのか?俺はそうは思わない。飛ぶ事を知っていたから悲しいと思うのかもしれないがな」


「知らなかった頃には戻れないのに?」


「知っていてもそれ以上に今は幸せだと感じさせてやれば良い。」


「うん、そうだよね」

スペラにとって私達は家族になるからね。



街の中に入ると眼を見張ってしまった

この国はまだ独立して産まれたばかりの国家だとアーデンに聞いたけどとてもそんな風に感じない。


丘の上に有る白亜の城から放射線状に伸びる8本の主道路は綺麗に舗装され、もしかすると地下に下水道も有るのだろうか地球に有るマンホールらしい物もある。

人々の顔は朗らかに見え、笑顔で話す人も少なくない

お店も色々有って楽しめそう。


「凄いね、どの国もこんな感じなの?私ゼイグロアとシエナナの町しか知らないし。ゼイグロアは牢屋だけど。」


「いや、俺はゼイグロアに有るデラロス山とゼイグロアの街しか知らないが素直にこの街は凄いと思う」


「デラロス山?」


「そうだ、俺の居た郷の有る山だ。かなり険しくおいそれと登れる山じゃないがな」


「アーデンの故郷なんだね。また一つアーデンの事がわかった」


「フッ、そうか」


「これから何処に行くの?」


「入国管理局に行って書類を提出したら今日は宿を探して一休みしよう」


「うん、わかった。スペラもう少し我慢ね」

ピピピッピプ〜


周りをキョロキョロまるでお上りさん宜しく見回してるとやっぱり私の国の人と顔立ちも、髪の色も、目の色も全てが違うがやはり茶色の髪が多い。

仮面を付けてる人は確かに居るのだけどシエナナの町の様に好奇の目でジロジロ見る人はいない。

女性を両手に華の男の人はまぁ、毛深く、鼻は大きく張っていて目が小さい

あまり人を悪く言うつもりは無いけれど、あぁ言う人がこの星ではモテるのか………。

女性は普通なんだけどね。どちらかと言うと私の方が普通以下だよ。

二重だけど、鼻は低いしね。


「絵里子どうした?」


「あ〜、この星でのアーデンの気持ちがわかるなぁって思ってただけ」


「俺の気持ち?」


「そう、私ね日本では決して美人では無かったの」


「そうなのか?」


「少なくとも言われた事は無いかな?可愛いとも、美人だとも」


「俺は今気が気では無いのだがな」 「?」


「絵里子の星がどうかは分からないがこの星では絵里子はモテるだろうからな 愛らしい目も、その小さな鼻も…か、かわいい」


「まさか、この国だとしても良くて普通でしょ?」


「俺は仮面をしないで歩く勇気が無い。郷でも言われ続けたぞ醜悪だとな」


「醜悪って随分ひどい言われようよね」


「真実なのだから仕方ない」


「それがまだ私には分からないのよね。アーデンの何処が醜悪とまで言わせるのか」


「何度も言うがそう言ってくれるのは絵里子だけだからな」


「でもお陰様で人妻ですからその心配無いかもよ」


「そうだな、俺は幸せ者だな」


知らないでしょうけど幸せ者は私の方なんだよ。

優しくて強くて頼りになって…そして私視点での美男子なんだもの

こんな最高点の人が浮気の心配がないって最高のご褒美でしょ!



入国管理局は、東西南北に四つある門の東門近くで私達は南門から入ったから少し歩く事になる。

それぞれの門に種訳された施設が有る


北門には警備組織と銀行のような物、西門には市場や商業施設、私達が入って来た南門には消防施設や病院施設、東門には公共施設に役所など

わかりやすい配置で主だった施設が配備されている

それぞれの場所に移動するために乗車券さえ買えば一日中乗り放題の乗合馬車も有るのだから至れり尽くせりだ。


そして私達が目指す選びの森は西門から行く事になる。

一体どんな森なのだろう楽しみで仕方ない


入国管理局に着き審査を受けたのだけど何故かあっという間にOKが出て私達は首を捻った

だって見てたら待ってる人達皆が皆、かなりの時間がかかっていたから私達も当然時間が掛かるだろうと覚悟してたのに…………。

まぁ、早く済んで助かったのだけど、他の人達がジロジロ見て来るから、何かいけない事をした気持ちになっちゃって。


「何で早く終わったのかしら?」


「さぁな」


「早く済んだし宿屋探す?それとも何かある?」


「気のせいかも知れんが、この街に入ってからずっと誰かに付けられてる気がする」


「え?」振り返ろうとする私を制し


「そのまま振り返らず気が付かない振りを」


「うん」路を曲がったところで待機する



しばらくすると男の人2人がキョロキョロしながら走って来た。

「俺達に何か用か?」


「は!気がつかれてましたか」


「まぁ、あれだけ分かりやすければな」


「う〜ん、自分では上手いと思うのですがね」


「で、何か?」


「少しお時間頂いても?」


「嫌と言っても聞き入れてもらえそうも無いがな」

そう言って男の人の後ろを見ながらアーデンが答えると


「察しが宜しくて助かります。馬車をこちらに回しますので」

そう言ってクイっと顎でもう1人の人に合図して見せた


「アーデン」


「大丈夫だ絵里子、俺が守る」


「うん」


「あ〜奥方様失礼そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。酷い事をするつもりは有りませんから」


私はアーデンの腕を取りしがみついているのだけど、何故かアーデンは嬉しそうです。

私達は馬車に乗せられどう言う訳か城の方向に向かっている

そして着いた場所は城の隣りにある施設でした。


「どうぞ中に」そう言って男の人は手を差し出して来た

でも、その手と私の間にアーデンが入ると私の手を取る。


「ここは一体何処なんですか?」


「植物研究施設ですまぁ、街の人は植物園と呼んでますがね」


「なるほど、そちらの意図が分かった」


「ほう?」


「どうやら、俺は検問所でやり過ぎたようだな」


「おや、察しがよろしいですね」


「だが、事と次第によってはこの国も出る事になる」


「そうですか、こちらとしてはそこまで悪い話をするつもりは無いのですが」


「あの試験の最期の植物アレの事だろう?」


「えぇ、そうです」


「答えは簡単だ、あの植物は古代種では有るが絶滅種では無いと言う事だ」


「なんですって?」


「言った通りだが?」


「まだ、有ると言う事ですか?」


「そうだ」


「その場所をお聞きしても?」


「あぁ、構わないだが君達が取りに行く事は出来ないがな」


「は?どういう事ですか?」


「アレが咲いているのはゼイグロア国に有るデラロス山だからだ」


「な、なんと……では貴方はデラロス山に登った事が有ると言うのですか?」


「あるな」


「そうですか………」


「もういいか?」


「今一つだけ」


「貴方はその効用も何もかも知っていると?」


「大凡は知っているが教える気は無い。だからあの試験でもハッキリとした作成方法は書いてなかっただろう?聞き出したいと俺を拷問でもするか?」


「アーデン!」


「大丈夫だ絵里子」


「いえ、そんな事は我が国王が許さないでしょう」


「そうか、では国王に伝えてくれアレは絶滅すべき植物なのだとな」


「そうですか……」


「で、俺達はこの国を出るべきか?」


「とんでも有りません、ぜひこの国で薬剤師をなさってください」


「そうか」


「大変失礼致しました。奥方様にも怖い思いをさせてしまい申し訳ありません」


「いいえ」


「絵里子、行こう」


「うん」


「あ!馬車で宿までお送りいたします」


「いやいい、歩いて行く」


「失礼しました、ではお気を付けて」



こんな険しいアーデンの顔はあの牢屋以来で、私は話しかける言葉さえ思いつかなかった。

あの話は一体なんなのだろう?絶滅すべき植物って何?デラロス山には何が有ると言うの?

聞くのが怖いアーデンの郷それだけでは無いの?

私の知らない何かが怖い、でも………










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