彼は純粋培養
今まで夜空の見えない森の中を歩いていたから気がつかなかったけれどこの星の月は30度程の角度で二つある。太陽は普通に1つだった気がするけれどやはり私の居た星とは違う。と言うかそもそも違う星なのだろうか?
俗に言う異世界とかではないの?
わからない、何度思い出そうとしてもお墓の前で記憶は終わるの。
目が覚めたら牢の中だし、殴られてるし自分から言い出した事では有るけれど結婚したし………。隣で寝てる彼は一応旦那様で。
どうもこうなって初めて知った事だけど、アーデンは形を大事にする人なのかな?
宿屋を探す前にと向かった先は宝石店………
「アーデン?何でここ?」
「夫婦に必要なものは指輪だろ?だからここに」
「まぁそうなのかもだけど必要なのかな?」
「必要だろ?」
「アーデンがそう言うなら、わかった」
「左手の中指にする指輪が婚姻指輪で、相手の瞳の色の石が埋め込まれた物をする」
(この星では左手の中指なんだ。しかも石を埋め込んだリングなんだね。
「しまった!」
「え?なに?どうしたの?!」
「今の色で作っては夫婦になれない」
「………まぁ、そうだけど仕方ないんじゃ無いの?」
(気のせいかな?この頃アーデンはキャラ崩壊して来てるような…)
「店主殿、茶色の石は有るのだろうか?」
「残念ながら茶色は無いんだよなぁ。だから皆この頃は好きな色を入れる人が増えてきてるよ」
「なるほど、喜べ絵里子、好きな色で良いらしい」
「そうねーよかったねー」
「絵里子?嬉しくは無いのか?」
「うれしいよーとってもー」
「そうか、良かった」
(嬉しく無い訳では無いけれど、何故こうもアーデンのテンションが高いのだろうか?)
と、言うわけで今私の左手の中指にはトパーズの石がはまった指輪がある。
そしてアーデンの左手中指にはオニキスの石がはまった指輪が。石については私がそう思った名前で呼んでるだけ。
石自体に名前がないそうなので。
バラバラに置いてある石の中から選ぶ感じだから取り立てて名前は無いらしい色々な色がある事が大事なんですって。採れやすければ安くなって逆に取れない程高くなる。ただそれだけ
(まぁ、アーデンが幸せそうならそれで良いや。このまま幸せの中に居て欲しい)
寝顔はまるで少年のよう ぐっすり眠れている様で良かった。
あれ?ところで私アーデンの事殆ど知らないで結婚しちゃった?
知ってる事と言えばこの世界で一人きりの魔法使いって事ともう、彼の知り合いは叔父さんだけ。しかもその叔父さんに追われる立場で。
アーデンの年も幼い頃の事も知らないじゃない。
勢いで結婚したけど、良いのよね?ん?そもそも結婚証明書とか無いのかな?
指輪さえしていれば夫婦と思われるのかな?まぁ良いかと思ってしまう私も結構いい加減よね。
アーデンが居ないと私は生きて行けないのは事実なんだもの。
こうなったらアーデンに捨てられない様に良い奥さんになる!なる?
朝起きるとアーデンが私を覗き込んでいた。
「わぁ!びっくりした。寝顔見ないでアーデン!恥ずかしいから」
「すまない、ただ、気持ちよさそうに寝てるなと思っただけで他意はない」
(昨日私も彼の寝顔見たんだしお相子なんだった)
「ところで絵里子、朝起きたら夫婦は頬におはようのキスをするものなのでは無いのか?」
「それも、ジジ様の入れ知恵なの?」
「そうだ、ジジ様からそう聞いた」
(何を教えてるんだろジジ様とやらは)
「わかりました、します、しますから目を閉じててね」
「わかった」
(こう言うところは素直なんだよね。ちゃんと目を閉じて正座して待ってるし)
チュッ♪
「絵里子、夫婦とは良いものなのだな」
「そうだね、仲良くしようねアーデン」
「わかった」
「ところでアーデンって何歳なの?」
「俺か?さて?何歳だったのだろう?」 「!?」
「ジジ様が居なくなった時確か13だったのだから、うむ、お!29歳だ」
「は?え?29歳?」
「そうだ」
「見えない!見えないよ!同じ18歳か少し上位かと思ってた!」
「そうなのか?絵里子は歳下か。この星では結婚に歳は関係無いはず。決まりはない」
「あ、まぁ良いんだけど……一緒に歩いていたら私の方が上に見えそうなだけで」
「まさか絵里子、俺が嫌になったのか?もう、俺を捨てるのか?」
「いや、捨てないよ!この頃アーデンが年下なのかそれとも上なのか分からなく成っちゃってたから。」
「俺は自分に誓ったこれから先どんな事があっても絵里子を守り抜くと……なのに、もう捨てられるのか……」
「え〜〜」アーデンまさかのorz
「ジジ様何が悪かったのだ?俺は何を間違えてしまったのだ?何故絵里子に捨てられるのだ。教えてくれジジ様」
「いやアーデン、捨てないからっ、てかね捨てられるとしたら私の方がだと思うのよなんせ、アーデンから見たらなんの役にも立たないお荷物なんだから」
「何故だ?何故俺が絵里子を捨てねばいけないのだ?」
「いやだって、私アーデンがこうして魔法を分けてくれるから居られるけどまだ、何も役に立ててないのよ?!」
「だから、何だと言うのだ?」
「まだこれからアーデンは素敵な女の人と出会う事が出来るかもしれないのにそれをこんな……こんな役立たず……うゔ辛い」
「絵里子?忘れていないか?俺は醜いと言われるのだぞ絵里子以外の誰が俺を夫に欲しがるのだ?」
「そんな事無い……と、取り敢えずシャルルク目指して出かける準備だよね」
「………そうだな」
歳がわかった途端、逆に幼く見え始めてしまうのはどうしてなんだろう?昨日まではあんなに頼れる大人の男の人に見えたのに不思議。
でもこれで1つ謎が解けた。アーデンは純粋培養じゃなくて本当に純粋だったんだ。
とても素直で汚れが無く人を疑うこともない世界で育てられたから私の考えとのギャップを感じたんだ。
アーデンの着替える姿を見ていると、とても29歳には見えない程綺麗なシックスパックに長い足、背筋もしっかり付いてるし大き過ぎない逆三角形の肩。
今までそんなに良く見なかったけれど日本の29歳とは全然違う気がする。毎日生死が付きまとう世界の住人だからなのかな?
きっと言われなければ30近いとは思えなかったし下手したら私よりも年下かと思える程幼い考えに、顔を持っているのにはビックリ。
それにしても綺麗な髪。あのプラチナブロンドの髪は格別だったけど、茶色でもこんなに綺麗だなんて。
「ねぇアーデン、お願いが有るんだけど」
「なんだ?」
「私にアーデンの髪を結わせて貰えないかな?」
「そんな事か。この髪も身体も絵里子のものだ好きにすれば良い」
「ハゥ……鼻血出てないよね?」
「大丈夫だ出てはいない」
私はアーデンの髪を後ろで緩く三つ編みにした。
良いのかな?こんな素敵な旦那様貰っちゃったけど。
仕方ないせめて捨てられない様について行こう!うんうん。
アーデンの仮面は鼻から上を隠すタイプで口元は出ているのだけどその口元だけでもやたらと私から見るとセクシーでドキドキしてしまう。
食事中に舌舐めずりなんてされた日には………
これで29歳………こんなの毎日見せられたら私毎日鼻血出てしまいそう。
アーデンは自覚ないから困る。この星ではモテなくて良かった。じゃないと嫉妬でどうにかなっちゃうわよ 違うそのせいでアーデンは辛い思いしてたじゃないの酷いな私の考え…………。
それにしても私やばいよねエロオバさん真っしぐらじゃないの。
森の中ではこんなじゃ無かったのに、駄目だわ 緊張感が足りないせいよね。早く町を出ないと緊張感出さないと持たないわ!
「絵里子?どうした?」
「え?なに?何か言った?」
「荷物持つと言ったのだが、大丈夫か?」
「え?あ!うん、大丈夫。大丈夫よ」
「そうか」
あ、いつものアーデンに戻ってる。
こうして見ると男らしいよね不思議、外と町の中では全然違う人みたい。
「絵里子、朝の話だが絵里子は歳を気にしてたようだが。絵里子が俺を必要としてくれた事が俺にとって1番大事な事だ。それだけは忘れないで欲しい。夫婦に成ると言ってくれた事は本当に嬉しかった」
「ずるいよね、こう言う時はアーデンの方がしっかりして見えるんだから。」
「そうか」
「そうよ、わたしも、アーデンにそう言ってもらえるの嬉しいわよ」
「そうか」(ニコリ)
ギャップ激しすぎでしょ、心臓保たないわよ。
でもこれって(仮)なのよね?なんだか良く分からなくなって来ちゃったんだけど良いのかな?
そんな事考えていたらアーデンが私の手を握って来た。
「夫婦は手を繋いで歩くものだと」
「はいはい、またジジ様ね」
「そうだ」
アーデンのジジ様、感謝します。