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彼との距離

この回まではシリアスで重いと思います。


どの位の日数が経ったのだろうか?

生い茂る大きな樹々の為に朝なのか昼なのか、それとも夜なのかそれすら分からずただひたすら起きたら狩をし食べ、眠くなったら寝るを繰り返しながら歩いている。


アーデンには分かるらしく朝だと感じると起こされ夜だと言われれば寝るそんな日々。


そしてどんな時でもアーデンは私に気を使ってくれているのがわかる。

私が躓き転びそうに成ると後ろから抱えてくれたりすのだけれど、決まってその後に済まなそうな顔をする


まるで触れてしまった事を詫びるかのようで、私は居た堪れない気持ちに成ってしまう


郷の中で彼の立場は微妙だったらしく、魔法の力は郷の誰よりも強く歴代の長さえも超えているだろうと言われてたそうだ。

けれどもその容姿の所為なのか例え次代の子が産まれたとしても長として認められる事は無かっただろうと彼は言う。


それでも郷ではまだ皆が居た事が救いだったが、日が経つにつれて1人また1人と亡くなった者達を送るうちに長も消え、彼1人郷に残されていた。

どんどん寂れて行く郷の中で彼は何を思いながら生きていたのだろうか


そんな彼の心に入り込む様に叔父が山を登ってやって来た。

嬉しくない筈は無いだろうに………

久し振りに人と話す事に心は沸き立ち叔父の勧めるままに始めての酒を口にした彼が気付いた時には牢の中で。


2日目に彼が目覚めた時、険しい山を登ってまで会いに来てくれたと喜んだ肉親に騙されたと知り、魔封じの鎖に繋がれていたのだから………

全てを諦め ただ死にたいと切望したとしても何の不思議も無い


私はこの出逢いが必然で有ると思いたかった

この世界で独りきりになった彼と同じく 地球でも、この星でも独りきりの私。

支え合いたいと思うのに時間など要らなかった。


私の中では偽善でも、固執でも無く確かに愛情と言えるものが芽生え始めていたから。


優しく強くそして何よりも姿も心も美しい人が彼で有り、その彼が望んでくれる事を願わずには居られなくなり始めていた。


(浅ましい感情かな?彼の優しさに漬け込んで取り入ろうとしてるだけなのかな?誰も彼を愛さないなら私が愛したら駄目なのかな?)


そんな事を思いながら彼とする逃避行の旅にこの世界が私の居た世界で無くても構わない、この星が違う星でもどうでも良い彼と離れたく無いそう思いだしても不思議な事ではないだろう。



「絵里子、疲れてないか?少し休もう」


「まだ、歩けそうだけど そうだね、少しだけ休憩しましょう」


「何か食べられそうな物を探してくる、ここに居てくれ」


「アーデンも疲れているでしょ?私は大丈夫だから、休んで」


「俺は……そうだな」


(この頃こうして一緒に休憩しても顔を合わせる事が少ない。わたし何かしてしまったの?)心がどんよりと沈んで行く

彼は横を向き遠くを見つめている、何かを考えているのかそれともただ、私と顔を合わせたく無いのか


それ程疲れていないと思っていたのに身体は相当疲れていたのかいつのまにか眠ってしまっていた。


(絵里子、俺は町に着き君がこの世界の事を知るのが怖い。町には素敵な男達も沢山居るのだろう。そうしたら君は俺を捨て去るのだろうか……。君を俺に繋ぎ止めておける何かが欲しい………何て傲慢で酷い男だろう。絵里子……絵里子……君の名を呼べるのが俺だけなら良いのに)

そっと眠る絵里子の頬を撫で唇に触れてみる

柔らかいそれに重なる己の唇を想像し自分の唇にその指を当ててみる

(絵里子、離したくない)


まだ数日、もう数日、一体どっちなのだろう?


目が覚め気が付くとそこにアーデンの姿は無く、その事が私の中で決定打となった。

ほんの数十分彼が居ない事が不安と恐怖を掻き立て私は過呼吸に成り息が出来なくなってしまった

(く、苦しい……どう、どうしよう)


樹の下で苦しくて転げ回る私はさぞかし無様に見えるだろう

涎、鼻水、涙、それらが顔を覆っているのだから

それでも、そんな私の視界の端で駆け寄ってくるアーデンが見えるとこんなにも安心する

「絵里子!絵里子!大丈夫か?絵里子!」


「ア…アーデ、く、苦し」


「どうすれば良い?絵里子?どうすれば」


私はアーデンにしがみ付きその胸に顔を押し付け(こ、これは過呼吸だ、から、二…酸化…炭素)

アーデンは私を膝に乗せ抱き締める。

しばらく彼の懐に顔を押し付けゆっくり呼吸する事で落ち着いて来た


「アーデンどこ、行って………たの?」


「済まない、済まない絵里子、君が寝ていたからその間に何か食べる物をと思って…済まない」

彼は私を強く抱き締めるそれはとても苦しい程に


「アーデン、く、苦しい」


「済まない、大丈夫か?」


「アーデンさっきから…ずっと謝っ…てばかり。私が勝手にパニックになった…だけなのに」


「俺は……又独りになる…成るのかと。絵里子良かった」

そう言って彼が私の髪に顔を埋めた。


私達はきっと2人して依存し合っているのかも知れないけれど、それでも良いやっぱり彼を失いたくない。

そこには確かに愛情も有ると分かってしまったのだから。


その出来事が有った日から私も彼もお互いに顔を見て話す事、言葉にして伝え合う事、そこから始める事にした。

それこそが今の2人の距離

そしてそうする事でお互いが安心する距離になった。


何日も掛けて歩き続ける、この森はとても広い

あの事が有ってからの私達はよく話す様になって行った。

時には笑い、時には怒りそんな事が出来る程には2人の関係が近付いたのだろう


「ねぇアーデンもし、もしもよ、町に着いたら少しだけ時間もらっても良い?」


「何故だ?」


「う〜ん、女には事情が有ってえっと、この星ではどうなってるのか聞かないと分からないし……女の人に聞きたい事が有るの。女の人にじゃないとわからない事で……えっと言わないと駄目?」


「女と話したいって言う事か?」


「うん、話して聞きたい事が有るのそれによっては揃えないといけない物も有るかもで……その時はお金下さい……。」


「そうか、女か……わかった金は何とかなる気にするな」


「うん、ありがとう」

(ここ何日経ったのかはわからないけれど多分ショックで遅れてるものがそろそろ来そうな気がしてきた)


(俺は今何を思った?この胸の中で騒つく嫌悪感は何だったんだ?相手が女だとわかった途端消えて行くこのザワつきは何だったんだ?また一つジジ様に聞けば良かったと思う事が増えた)


あと何日で町に着くのかな?間に合えば良いけれど

アーデンに知られるのは辛いから、その前に何とか………

流石にいくら話せる仲に成っても知られたくない事は有るこれもその一つこの星が何処まで発展して居るのか分からないけど女性と話したいそれもまた今の悩み


アーデンの話だとこの星は美醜の感覚が違うのかな?それともアーデンだけがおかしいのかな?

だとしたらきっと町に着いたら女性達がアーデンを………


まだ居もしない女性達に嫉妬し始めてる。

アーデンは決して私の彼氏と言う訳では無いのに私ってこんな性格だったんだ。


悶々とし始めている自分の気持ちを持て余していると

「絵里子どうした?疲れたか?」


「ううん、少し自分が嫌になってしまって自己嫌悪してた」


「絵里子がそんなに悩む事が有ったか?俺は何かしたか?」


「へ?どうしてそうなるの?アーデンは何も悪くないよ。」(良い人すぎるから私が自己嫌悪になるだけ)


(浮かれ過ぎてたか?こんなに打ち解けてくれたのが嬉しくて。俺の周りには年寄りしか居なかったから人との関わり方を知らない。もう少しジジ様に色々教えて貰っておけば良かった。そうすれば絵里子の悩みも教えて貰えたのかもしれない。俺では駄目な事……何なのだろうか)


2人の気持ちの行き違いに気付くはずも無くこの先珍道中になって行く

これから大きく2人の関係が変わって行く事になろうとはこの時はまだ知らなかった。


ほぼ私が言い出した事でなのだけど。








次回から微コメディになって来ます!

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