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悲しみの再会

今どの辺りを走っているのだろうか?


「マーカスさん、今何処らへんですか?」


「もうすぐシエナナの町が見えてくる頃だと思われますが」


(そうですか……なんだろう、物凄く嫌な感じがする。アーデンに何かが起こってるそんな気が……)


何気なく見上げた空は雨が上がったばかりでどんよりとして暗い……

その空を一筋の線がゼイグロアに向かって流れていく。

その線の先には何かが凄いスピードで雲を切り裂いていた


あれは………アーデン?私にはそれが何故だかアーデンだと思えた。

愛しい人を見間違うだろうか?いえ、彼ならきっと全てを失う事になっても私を探しに行くだろう


「マーカスさん!戻って!今すぐ戻って!ゼイグロアに」

私はしがみついていたマーカスさんの服を引っ張りながら叫んでいた


「は?ですが、戻れば捕まってしまいますよ!」

何故かは分からないが私には確証が有ったあれは間違いなくアーデンだ。

姿形は変わっていたけれど間違いなく私の愛する人、その人だと


「お願い!お願いします、戻って!」


「申し訳ありませんが承知しかねます。御身の安全を第一にお考え下さい」


「そんな……ならば、ならば命令です!シャルナーク王の叔母として命じます、今すぐにゼイグロアに引き返して下さい!」


「ッ!か、畏まりました。仰せのままに………ハァッ!」馬の首の向きを変えて馬の腹を蹴り鞭を振るう

早く早くゼイグロアへ嫌な予感が消えない拭えない。

このままだと、永遠に愛する人を失ってしまうかも知れないと……





《ゼイグロア城》


「ロットバルドォォォォォォ!何処にいる!」俺は思いのまま城に突っ込んでいた。もう抑えきれない怒りで身体が千切れそうだ


「 絵里子!絵里子!どこだぁぁぁ」


ドゴォォォン ズガァァン ガラガラガラ


(何処に隠した!俺から奪って何処にやった!ロットバルドォ!駄目だ意識が俺の身体と離れて行く……絵里子)


グワッシャン バラバラバラ


城の塔と言う塔を破壊していく逃げ惑う者ら、刃向かう者ら全て引き裂いてでも絵里子を取り戻す………

当たり構わず俺は【気】を飛ばし破壊していく、愛する者の影を求めて

破壊された瓦礫が剥き出しになった廊下を歩く……それでも怒りが治る事はない。

壁を壊し部屋を壊して絵里子を探す 何処だ!絵里子!何処に!


「グワァァァァ!絵里子を返せぇぇぇぇロットバルドォォォ」





《ゼイグロア王謁見の間》


「ふん、醜い甥が暴れているか。クククククッ早く来いここへ……」


煌びやかに飾られた玉座に座り肘掛けに肘を乗せ拳に顎を乗せる

仮面の下の顔はさも愉快そうに口端を上げ笑う、長く伸びた足を組み楽しくて仕方ないとでも言うように。


「我が王よ、ここは危険ですすぐお逃げを……私が何とかあの者を引き止めておきますゆえ」


「ふん、この時を待っていたのにか?あれが怒り狂いその異形の身体を晒し全てを俺の前に出した時こそ我が願いは叶うと言うのに…ククク。愉快で仕方ない。もう少しだ!もう少しで我が宿願が果たされる………さぁ来いアーデン、俺はここに居るぞ」



ズドドドドッ ガシャーン バァァンドアを破壊して中に入ると玉座で俺を見下げる奴がいる


「ロットバルド……絵里子は何処だ……何処に居る」


「ふっふふはっ、無様な格好だな闇の王よ。お前のその姿、絵里子が見たらさぞや驚くだろうな…ククク」


「絵里子と馴れ馴れしく呼ぶな……呼んでいいのは俺のみだ」


「クククッ、もうすぐ来る。まぁ慌てるな醜き闇の王。だがな、来た所でお前のものには成らんぞ………あれは我のものだ」


「汚れた心を持つお前などに絵里子は渡さない!」


「ほぅ、その姿のお前がそれを言うか。今のお前の姿こそまごう事無く妖精王の闇の心なのだがな。アイスバルトが光の部分、俺が闇の部分、お前はそう思っていたのだろう?だがな、闇の部分も元々アイスバルドが持っていたのだよ。そしてそれをお前が継いだ………そうだよ、お前こそが真の闇の王なのさ、アーデン俺は何も妖精王から受け継いではいない、この醜い姿形以外はな!」


「嘘だ!そんな馬鹿な事誰が信じるか!」


「ならば何故俺に魔力は無い?妖精と話せないから?いや違うそれは元々嘘だ。ジジがお前に言った虚偽だ!ククク」


「そ、そんな……違う!俺はもう騙されない!」

何が真実、何が本当、惑わされるな奴は俺を騙しているだけ!


「フッまぁいい、どうやら時間が来たようだ。お前が会いたがってたものが」

1人の兵士が王の耳元で何かを囁きそれを聞いた王はニヤリと笑むと立ち上がる


「さあアーデンよお前の会いたがっていた絵里子が来たぞ……ククク」


ドサリと言う無機質な音がすると血塗れの女が王の足元に転がされる

姿形そのどれを見ても 絵里子 女の背には剣が突き刺さりピクリとも動かないその様を見ながら王は言う


「会いたかったであろう?会わせてやったぞ。まぁ、息はしておらんがな」


「う、嘘だ………ちが…違う…絵里子じゃない…違う!違う!ちがうぅぅ!」

(違う嘘だ、そんなはずは無い……騙されるな…絵里子……あ、あぁ、あぁぁ)

足元から崩れ落ち自分を支えられない、頭では否定しているのに目の前の現実がどんどん侵食していく 絵里子の訳がない 今朝笑っていたいつものように朝頬にキスをくれ「おはようアーデン」そう言ってくれたんだ

絵里子が居ないのに俺が生きてる筈は……ないんだ。


床にへたり込みもう力が出ない考えたくない……考えたくない…考えたくない


王はアーデンに近寄ると彼の美しい金色の髪をむんずと掴み俯いているその顔を上げ笑いながら言う


「アーデンよ人を愛するなど愚かな事を知ったこれが報いだ。人は弱くすぐに己の保身の為に裏切り、嘘をつく。絵里子もお前など愛しては居なかった、保身の為に俺を愛すると言ったぞ。人は愚かで醜い 生き物だな」

そう王は告げるとルネテリアに顎で合図を送る

その合図を見てルネテリアは動かないその女に再び剣を刺す


「辞めろォォォォォォ 絵里子ぉぉぉぉぉ」


「このような物に執着し、己が穢れていくのも分からずに朽ちた妖精王はなんと愚かだった事か。兄で有るアイスバルドもしかり。まぁ良いお前の力は私が貰い受けよう。愚かな者どもを駆逐する為にな、さぁアーデンお前は静かに眠るが良い」


王は腰に輝く剣の切先をアーデンの胸元に当て埋めて行く  ズズズズズッ


「グワァァァァ、あ、あぁ、え、えり、こ」

アーデンの身体から溢れ出す どす黒い血が傍に立つロッドバルド王に纏付き王を飲み込んでいく

それと同時に崩れ倒れるアーデンの身体はピクピクと痙攣を繰り返しやがてその動きが静かに止まっていった。


「フッ、フフフッ、クッハハハハッこれだ!これこそが魔族の王の力!我こそがこの地の支配者魔王なり!ククククク ルネテリアよ、我は醜いか?」


「いいえ、我が王よ。御身は何よりも美しゅう御座います!あぁ我が君」


「ふん、世辞には飽きた。兵共を進軍させる、この地の者どもを魔王の膝下に平伏させてやるわ!まずはカンサロナへ!」


「はっ!」

謁見の間に静寂が訪れ骸が2つ残るのみ  







ズィィィィィン  ドサッ


「これ、早よどいてくれ!潰れるわい!」


「あ、ご、御免なさい…………ここは?どこ?」

見渡してみれば豪華な広間の中央に降り立ったらしい。

絵里子とジジ様がいた。

王の玉座の側に女性が倒れていて   その階段の下には紛れもなく愛する夫アーデンが倒れている


「うそ………でしょ?アー………デン……アーデン!アーーーーーーーデーーーーーン!!」


駆け寄り抱き起す絵里子の問いかけに答える事もなくまだ、暖かい身体が冷たくなって行くのをただ抱き締めていた。












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