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人はそれを魔族と言う

ここはどこだろう、私はあの男……そう、初めてこの世界に来た時出会ったあの牢番だった男に鳩尾を殴られた。


今私の口には叫べない様に口輪がされ、手を後ろで縛られて麻袋の様なものに入れられている……

きっと行き着く先はあの牢屋なのだろう………目が覚めてからずっと愚かな自分に腹を立てている。

(アーデンごめんね、あれだけ注意しろと言われていたのに私は自分が追われる立場なのだという事をこの何ヶ月かの優しい時間の中に置いてきていたみたい)


きっとアーデンは危険だと分かってても来てしまう……そう言う人だから

私の行動が結局彼を危険に晒すことになると気付くべきだった。


どうすればいい?どうしたら彼を守れる?無い知恵を底から引き出し考える。

手は?駄目だ痛い程強く結ばれていて取れそうも無い、それどころか血が止まるってば!

狭い麻袋の中で身動きが取れないよ。このままゼイグロアに連れて行かれたらもう逃げ出せないかも知れない………






ガタン ドスン 「ギャー」 「お前裏切る気か!」


「はっ!元々お前らの仲間じゃ無いだけさ」


(何が起きてるの?仲間割れ?キャァ……私は誰かに担がれているの?)

私を担いでいるその人は一体誰?どこへ行くの?


しばらくするとどうやら馬に乗っているらしい。私に負担がかからないように横抱きにして抱えてくれているのはわかる。


一体どれ程馬の背に揺られていたのだろう。

馬の(いなな)きが聞こえたかと思ったら急に止まり


ヒヒ〜ン、ブルルルル

その人は私ごと馬から降りそっと下ろしてくれて、麻袋の閉じられた紐を解く

急に明るい日差しが眩しくて目を細めているとその人が私に(かしず)き頭を下げている………。

口輪が外されると、大きく息を吐き出して私は聞いた。


「ここはどこ?」


「数々のご無礼お許しください絵里子様、これよりは貴女様の護衛を務める事をどうかお許し願いたい」

その人はそう言いながらゆっくりと顔を上げてくる………貴方は


やっと慣れてきた目でその人を見ると彼は間違いなく私を攫った張本人じゃないの…………。


「え?どう言う事?貴方が私を攫ったわよね?」


「はい、申し訳ございません私はシャルルク暗部隊所属マーカスと申します。我が王の命を受けゼイグロアに潜伏しておりました。そこで黒髪の貴女様を見かけ何とかお助け出来ないかと模索している時にアーデン殿と逃げ延びられたと分かり探しておりました。ただ、探す命を下したのはロットバルド王も同じで御座います。

やっと仲間と連絡が取れ貴女様が我が王の国にいる事が分かったのですが、それと同じ頃ロットバルド王もその事を知り私に攫ってくるよう命じました。それ故に仕方なくこの様なご無礼をした事どうぞお許しください。」


「つまり、諜報部員!」

彼はまた頭を下げて話の続きをする


「私が貴女様を攫わなければ他の者がしたでしょう。それ故にこのような小芝居を……時間が無かったとは言え不愉快な思いをさせた事深くお詫び申し上げます。他の者は始末致しましたので少し遠回りにはなりますがシャルルクにお連れ致します」


「うん、わかった。でも、何故私にそこまで(へりくだ)るの?」


「貴女様は我が王のご親族で間違いありません。ロットバルド王の元でその様に聞きました。」


「そっか……うん、多分シャルナーク王は私の甥っ子だと思うんだよね」


「やはりそうでしたか、ならば尚更無事に我が王の元へお届けせねば」


「もう1人の牢番さんも仲間?あの人はどうしたの?」


「いえ、彼は仲間などでは有りません。あの日急に姿を消してしまいましたので行方はわかりかねますが」


「そうなんだ、でもありがとう。すぐに帰りましょう。アーデンが心配。何も起こらなければ良いけど」


そうして私とマーカスさんはまた馬に跨り来たであろう小雨の降る道を逆走するのでした。




※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※


南の森が急に騒がしくなり長の子達が騒めきだした。


「何が起きている?」と聞くと長の子は『見慣れぬ男達が森に入って来た』と言う。

『子等は悪しき感情を持った者達故追い出して欲しい』と俺に頼んで来た。


絵里子の事が気にはなるが側にオーディンも居る長の子も居る何か有ればきっと知らせてくれるだろうと………甘かった。

まさか絵里子本人がこの場を離れて出掛けるとは思わなかった。


結局男達を魔法で脅し森の外に放り出して帰って来て見れば絵里子の姿が何処にも無い


「絵里子?ただいま……絵里子何処に居る?」


『アーデン、絵里子は外に出かけた。町へ行くと出掛けた、オーディンと出掛けた』


「なっ!なぜ止めてくれなかった!俺達は追われているんだぞ!」俺は子等に言い寄ったがそこにオーディンが帰って来た。


[アーデンお帰り、絵里子を町まで届けて来たよ。アーデンと『森への道』で待ち合わせって言ってた。今すぐいく?]


「オーディン!あぁ、疲れているところ済まないが直ぐに行こう」


[うん、わかった乗って]


嫌な予感がする、絵里子に何もなければ良いが……

「悪いがオーディン急いでくれないか?」


[うん、捕まっててね。]


オーディンは物凄い速度で走り出す。(たてがみ)が後ろになびき顔を下げ態勢は低く、こいつはいつの間にかこんなにも速く走るように成っていたんだな。

景色がどんどん過ぎて行き顔に当たる雨風は痛い程だ、だがそれすらも物ともせず俺の頼みの為に駆ける


門に着くと絵里子の姿は無く俺はオーディンを馬屋に預け待ち合わせの場である『森への道』に急いだ





《森への道》


「すまない!絵里子は来てるか?」


「あら、アーデン。絵里子?いいえ、まだ来てないわよ。喧嘩でもしたの?」


「いや、そうじゃ無いんだが……」

俺はオーディンから聞いた事を伝えるとジェシカの顔色が急に変わる


「アーデン、有り得ない。門で待ち合わせなんて普通しないわ、だって雨が……雨が降ってるのよ?例え降る前だとしてもあの天気で外で待ち合わせだなんて可笑しいわ」


矢張りだ……俺の嫌な予感はどうやら当たってしまったらしい。


俺の腹の奥底から得体の知れない何かがせり上がってくるのを感じた

駄目だ!抑えろ!奴を出してはいけないともう1人の俺が言う

これはあの時と同じ感情だ……(絵里子のそばに誰か知らない奴が居て俺の絵里子を連れ去った、俺から奪った、俺から……)

「ヴッ……」


(駄目だ押さえ込め、奴を放ってはいけない……絵里子が……絵里子が哀しむ)


「ハァ、ハァ、ハァ、落ち着け、落ち着くんだ」俺は右手親指の付け根を噛み落ち着こうと必死だった


「アーデン?大丈夫?取り敢えず心当たりを当たってみましょう!兄さんを起こしてくるから待ってて」


「あぁ、済まない…たの…む」

クソッ、奴が来る。俺は店を飛び出し町を走り抜け門の外へと飛び出した


町から離れなければ……少しでも遠く離れなければ………


「ぐあぁぁぁぁっぁ」怒りが押し寄せてくるどうしようもない怒りが腹から沸き上がってくる


「んんガッ、ぐがぁぁぁぁ絵・里・子ぉぉぉぉぉ」


指の先を破り伸びる爪、額を突き破る2つの螺旋状の角、口から飛び出す鋭い牙 これを魔族と呼ばずに何を呼ぶのか………


怒りが金色の目を紅く染め背中を突き破る蝙蝠の様な羽が俺を狂わせる

俺から絵里子を奪う物を切り裂く引き千切る覚えて置け



「ロットバルドォォォォォォ絵里子を奪ったお前を引き裂く!」










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