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禁じられた絵本の謎

⌘昔々寂しい男が居ました⌘



一人ぼっちで寂しい彼は沢山の物を作っては寂しくなるその繰り返しが嫌で嫌で、とうとう何も作れなくなりました。

毎日涙を流しては自分にも愛する者が欲しいと願うようになりました。


ある日彼は思いついたのです。愛するものを作れないのだから誰かに分けてもらおうと。

彼は毎日毎日お祈りしました。「どうか、愛するものを僕にください」と

しかし、神様は願いを聞いてはくれません。

男はその内に神様も恨むようになってしまったのです………


「一人ぼっちにした神様の言う事はもう聞かない、僕だけを愛してくれる人を探してここへ連れてこよう」

男は神様に禁じられている魔法を使い他の世界に飛んでいきました

「僕を愛してくれる人はどこにいるの?」男は探しました。

毎日毎日探して歩きました。

いつまで探し回っても、いつまで歩き回っても彼には愛する人が見つかりません

とうとう彼は自分の身体がもうこの世界では長く持たない事を知り絶望してしまうのです。


そんなある日のこと1人の女の人が男に声をかけました。

「大丈夫?お腹が空いたの?歩ける?」その優しい問いかけに男は思いました。

その女の人の手に触れた時とても暖かく幸せな気持ちになった彼は思います

このひとこそ、僕をきっと愛してくれる人なんだと。


しかし、その人にはもう愛する人がいました。

彼は嘆きましたもうここにも僕を愛してくれる人は居ないのだと。

あまりの寂しさに耐え切れなくなった男は優しくしてくれた女の人を無理矢理連れ去ろうとしてしまいます。


女の人も女の愛する人も泣きながら男に言います「お願いです、愛する人をどうか奪わないで下さい。もし、奪われてしまったら生きていられません」としかし彼は狂ったように叫びます、嫌だ嫌だもう寂しいのは嫌だと。


そして彼は女の人と男の人に言います

「それならばお前たちの間に産まれた子を俺にくれ、大事に愛して大切にするから」と

女の人と相手の男の人は答えます。約束しますだからどうか奪わないでくださいと。


男は待ちました、生まれてくる愛しいものを何年も何年もしかし、男の体は崩れて始めてしまったのです。

汚れた世界で男の体は少しずつ壊れ始めて居ました。


彼は言いました

「この世界では僕は長くは生きられない元の世界に戻らなければいけない。お前たちも連れて行く」と

でもその時に女の人の身体には新しい命が宿っていたのです。それを知った彼は大層喜びました。このまま連れて行っては愛しい子に何か有ってはいけないと彼は悩み2人をこの世界に残したまま自分だけ帰る事にしました。


約束を守って欲しいと言い残し自分の世界に戻った男は待ちました。愛しい人の誕生を毎日毎日毎日待ちました。


そんなある日男の心がブルブルと震えるほどの喜びが包みました。

「あぁ、僕の愛しい人が産まれた……産まれたんだ」

男は喜んで迎えに行きました。


愛しい者の側にあの日の女と男がおりました。

2人は頼みますどうかどうか奪わないでくださいと。

でも、男は首を振って答えます「約束だ僕はどんなに楽しみにして待っていたか」と

ではせめて、もう少し大きくなるまで待って欲しいと頼みます。

このまま連れて行かれたらまだ小さなこの子は死んでしまうと。


彼は考えました、そして言います「では、お前達を連れて行く。そして大きくなったその子と引き換えにお前達をここへ連れて帰って来よう」

女と男はこれ以上は無理だろうと諦め小さな愛し子を父と母に預け彼と共にこちらの世界にやって来る事を受け入れました。


彼は女の父と母に言いました。愛し子が大きくなった時にこの本を開かせるようにとそれを合図に迎えに来ると伝えると、彼は2人を連れて男の世界に戻りました。

けれども、女も男も余りにも綺麗すぎるこの世界では苦しくて生きて行けません。彼は仕方なく人達が暮らす世界に2人を放しました。


彼は待ちました。いつか愛し子が絵本を開いてくれるその日をずっと待ちました。

でも、長い間汚れた世界に居た彼の身体はポロポロと少しづつ崩れ始めていきました。それでも彼は待ち続けますいつかきっと愛し子が本を開いてくれるその日が来る事を楽しみに

ずっと、ずっと、ずっと長い間ずっと………




あの本は私の家族と妖精王の話だったんだ………

あんなにお婆ちゃんが開くなと怒ったのはそのせいだったんだ………



「すまぬ、始祖を止める事が出来なかった我らにも罪がある……すまぬ……だが、始祖はもう居ないのだ……始祖の身体はこちらに戻りしばらくして崩れてしまった……。」


「あぁ……でも、それじゃあ私の父と母は?こっちに連れてこられて2人は?今どこに居るの?教えて!会いたい、会いたいの」


「すまぬ………エリ殿の居た世界とこちらの世界では時間の進み方が違う……きっとエリ殿の家族はもう………」


「居ないの?………居ないと言うの?勝手にしでかして人の人生壊しといてそれをあなた方は言うの?ただ、居ないと言うの!」


「絵里子!」


「酷い!酷い!酷いよ!うわぁぁぁ酷いよ〜〜〜〜!」


「すまぬ………」




しばらく泣き続けた私を抱き締め頭を撫でていてくれるアーデン。

確かに始祖のした事は許せない……けれど、そのお陰で今こうしてアーデンと出会えた事を思い出すと少しづつだけれど落ち着いてきた。

今私の事を心配してくれるこの手の温もりが嬉しいと思う程 恨みも悲しみも薄らいで行く自分がいた。

逆にお父さんお母さんもこの世界に居たんだ………そう思うと何故か心が温かくなっても来た

そして私はもう1つの疑問を聞く


「師殿……」


「エリ殿、すまぬ……謝っても許せる事では無いだろうが」


「父と母に会いたかった気持ちは消せないけど、こうしてアーデンと出会えた事も消せませんし、消したく無いです。だからもう、謝ってもらわなくていいです」


「ありがとう、エリ殿」


「でも、私を迎えに来たのはロットバルドさんだった。何故?」


「それは多分なのだが、ここに居るアイスバルドも、ロットバルドも始祖の子孫である事、そして始祖は最後には欲に支配されてしまっていた、ロットバルドも同じく欲に支配されておるそれが繋がってしまったのでは無いかと思う。それに、世界を渡るのは魔法では無いのだよ、妖精の血を引く者なら誰でも出来る。ただ、決してしてはいけない事なのだよ」


「でも、絵本の表紙はアーデンでした」


「あぁ、私もロットバルトも始祖に近い姿形だが髪の色は少し違うくすんだ金だが、始祖は今のアーデンとまるで生き写しなのだよ」


「それじゃあ、絵本の表紙の人物は始祖様なんですか?」


「そうだ、彼の作り出した欲望を書いた本だからね」


「たとえ始祖で有ろうが絵本とやらの表紙は俺だ……こんなにも絵里子が愛しく思えるこの気持ちはきっとそうなのだと教えてくれている」


「そうなのかも知れぬな。アーデンは本当に始祖殿に似ておられる……桁外れの魔力といい容姿といい本当に生まれ変わりのように」


「父と母は……どこに行ったのか分からないんですか?」


「エリ殿と良く似ておられた……この星では珍しい黒い髪、黒い目を辿ればどこに居るのかわかるやも知れぬ」


「あ、そうよ……あの、この星に黒い髪の人は私の他にそんなに居ないんですよね?」


「あぁ、始祖が黒い髪を持つものを作った所を見たことは無い、それに聞いた事もない。始祖が連れてきた御二方が初めての黒髪だったと記憶している」


「アーデン……」


「あぁ、絵里子の言いたい事はわかった。シャルナークが血縁で間違いないだろうな………」


「うん……」











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