全てを知る為に
「な、何言ってるんだ?……ロットバルドの何だって?……違うだろ?絵里子は俺の、俺の妻だろ?そうだろ?なぁ………絵里子!」
アーデンは私の両肩を掴むと揺さぶりながら叫ぶ
「アーデン……そうだよ、私はアーデンの奥さんだよ、そうよ、誰が何と言っても私はアーデンのものなのぉ!いやぁぁぁぁ」
「絵里子!絵里子!大丈夫だ、俺が誰にも渡さない!それが叔父なら尚更だ!奪わせない!」
私はアーデンにしがみつき、アーデンは私を抱き締める
[2人とも落ち着いたか?あれは記憶の世界だ、現実では無いんだぜ。お前達2人の現状とあの世界は違うんだよ……そこを履き違えるんじゃねぇよ]
「ス、スペラなの?」
わたしの枕元に座っている少年は真っ白な髪に真っ白な肌で真紅の瞳をしている
[あぁ、俺っちだぜ。力を使い過ぎたからなあの姿を保てないだけだ、気にするな]
「いや、気にするでしょ……何か羽織ってよ!目の前にそれは無いわぁ」
[全く普段からこんな格好だろ?今更じゃねぇかよ]
「違うでしょ!いつもは羽で隠れてる所が丸見えなんだよ!恥ずかしいって思ってよ!」
「スペラ!絵里子の前で見せて良いのは俺だけだ!」
「イヤイヤ、アーデン!そこも違うからね!2人とも変だからね!」
どうして私達家族はいつもこうなの?まぁ、お陰で冷静にはなれたけれどね。
あれから落ち着いた私達はテーブルに着きお茶を飲みながらアーデンに思い出した事を説明してる。
「それじゃあ、絵里子はロットバルドがこの世界に連れて来たのか?」
「多分そう、でも途中ではぐれたんだと思う。あの牢にいた人達が私を捕まえたんだよ」
「で、絵里子はその……絵本のお兄さんの嫁になりたいのか?」
「ブッ……アーデン何言ってるの?私はアーデンの嫁でしょう?今更じゃない。それにねあれは絵本なの!絵本よね……あれ?違う……あの表紙…あれはアーデン、そうよ!あの表紙はアーデン、貴方だったわ!間違いない!」
「は?俺の絵本が有ったのか?絵里子の世界にか?」
「俄には信じ難いけど間違いなくアーデンだった。私がお嫁さんになりたいと願ったお兄さんは……アーデン貴方だったんだ……お婆ちゃんは絵本を開くなと言っていた見たらダメだと。何故なんだろう?それに表紙のアーデン。まだ何か有る様な気がする……それにあの時の絵本はどこに行ったんだろう思い出せない……他に何か隠れてた気も」
[まぁよ、どっちにしてももう一度記憶を見るためには俺っちの魔力が戻らないと出来ねぇし、しばらくはエリが倒れる事も無いだろうよ。ただなぁ、そのロットバルドって奴がエリをこっちに連れて来たって言うんなら気をつけた方が良いだろうな……しつこそうな男みたいだしな。誰かさんを見てると血は争えねぇと思うぜ]
「スペラ、何故そう言いながら俺を見る!」
[ケケケ、分かってる癖によ!エリが絡むとよぉ]
「な……ま、まぁとにかく訳がわかって良かったんだよな?叔父は諦めないだろうから今以上に気をつけた方が良いな」
「うん……叔父さんって魔法が使えないんだよね?だから山を追放されたんだよね?なのにどうやって私をここに連れて来れたんだろう?」
「確かに叔父は魔法は使えない、だから俺を捕まえにも来た……だが、どうやって郷に来れた?今迄考えもしなかったが確かに変だ。あの山の郷にはおいそれと来れない筈なのに」
[考えられる事は一つだな、誰かアーデンとジジ様の他にこちら側で魔法を使える奴が居るという事だ]
「「!!」」
「そんな、そんな話は聞いた事もない。ジジ様はもうこの世に2人きりに成ったとそう言った」
「ジジ様も知らない誰かが居るって事?」
[それしか考えられねぇだろ?迎えに行って連れて帰って来る魔法なんて聞いた事も無いけれどな]
[ねぇねぇ、オーディンも話していい?]
それまで大人しく私達の話を聞いていたオーディンが急に
「ん?どうしたの?オーディン」
[あのね、オーディンのいた所にね魔法使える人居たよ。女の人とか、男の人とかいっぱい居たよ]
「「[は?]」」
「え?オーディンの居たのってこの森じゃなかったの?」
[う〜ん、この森の奥、ずっと奥なの]
「オーディン、この森の奥まで俺は見て回ったぞ?どういう事だ?」
[えっと、アーデン聞かなかったから教えなかったよオーディンは良い子だから良いって言われないと話さないの]
「ハ、ハハ、オーディン……今度からは教えてね……良い子だから」
[うん!わかったの、オーディン良い子だから覚えたの]
「オーディン、その場所はどんな所なの?教えてくれる?」
[あのね、魔法を使える人が一杯居たのそれでね、オーディンはその人達に育てて貰ったんだけど、その村から1人の男の人が居なくなって帰って来て大騒ぎ成ってまた出て行ってえっとんっと……うっうぐっグスッオーディンヘタ言うのヘタごめんなさいぃ]
急に泣き出したオーディン、きっとちゃんと話さないと行けないと言う思いが一杯一杯で堰を切ってしまったのだろう
「アァァァ、オーディン良いの泣かないで!大丈夫よ、あ〜もう良い子いい子だからね」
[オーディン、お前は妖精の村出身だったのかよ!何てこった!]
「スペラ知ってるの?妖精の村って何?」
[あ、あぁ……こいつは俺が話すよりも1度村に行った方が良いかもしんねぇな、全てはそこで分かる気がするぜ]
「スペラ、おいそれと俺達が行ける場所なのか?」
[馬っちが居れば行けるだろうが、それにお前達は森の長に許された者達だしな]
「アーデン、行こう。モヤモヤしたままだと気持ち悪いしはっきりさせたい」
「そうだな、全てを知ってそれからアイツとの対策を考えた方が良さそうだ」
「オーディン、妖精の村までの案内してくれるかな?」
[グスッグス、うん、するの、オーディンはアーデンもエリもスペラオジさんも好きなの、だから案内するの]
「オーディン……私達もオーディンの事大好きよ。ね、もう泣かないでね」
[おい、馬っち泣くんじゃねぇよ。まぁなんだ俺も好きだぞ!だがな、オジサン言うな!まだお兄さんだ!]
そう恥ずかしそうにしながらも胸を張る幼児がいる
「え?その体系でお兄さんは無いわぁ……どう見ても幼児よ」
[う、うるセェ。]
「152歳の幼児………無いわぁ」
私達はオーディンが落ち着くのを待って支度を始める
次から次へと余りにも色々起こり正直疲れてしまったけれど、スペラの言う通りその妖精の村に行けば全ての謎が一つに繋がりそうな気がしてならない。
絵本の事、私を見つめていた人、私を迎えに来たロットバルドさん
それこそ妖精の村何て有る事自体が絵本の様な気がするけれど私が居るこの世界は本物でちゃんと痛みも分かるし、涙が流れる感触も、彼の手の温もりも全てちゃんと分かる
知りたい、ちゃんと全てを知って納得したい、怖いけど、逃げちゃ駄目だと分かってる
隣に居るこの人達を失う以外なら全て受け容れる覚悟は出来たから。
私達は森の奥を目指して歩き出す、まだ見た事もない妖精の村を目指して。
きっとそこには全ての元凶が有るはず




