思いはすれ違い
昨日レオナルドさん達と話し3日後に一緒に北東の薬屋に行く事にしたのだけど、今日はなんとなく朝からアーデンの様子がおかしくて、夕刻になるこの時間になって急に
「絵里子少し出掛けてくる」
「え?今から?もう夕方になっちゃうよ?」
と、私が言う頃にはもう走り出してたアーデン(急用?何処に行くとも言わないで行くなんて)
何も言ってくれない事がもどかしくてモヤモヤしていた。
「スペラ何か聞いてない?」
[何かってアーデンからか?]
「うん、そう 何か聞いてる?」
[さぁな……な、何もシラねぇ]
「おかしい……スペラも何か隠してるでしょ」
[お、俺っちは何も知らねーよ!何も聞いてねぇ]そう言って飛んで行ってしまった。
「何よ!1人と1羽で隠し事酷い!オーディン、オーディンは良い子だもの教えてくれるわよね?」
[んとね、内緒なのアーデンが内緒って言ってたの]
「オーディンも私を除け者にするのね……シクシク」
[あ!駄目なのエリ泣いちゃ駄目なの僕も悲しく成るから駄目駄目!]
「じ、じゃあ教えてくれる?エリも仲間に入れてくれる?」(オーディンには悪いけど嘘泣き通じて良かった)
[えっと、エリ教えたら泣かない?]
「うん、教えてくれたら泣かないよ」
[わかったの、んとねアーデンわからない事有るけどスペラ教えなくてそれで、アーデンはライナスに聞くって言ってたの]
「ん?それのどこが内緒になるんだろう?オーディン、他には聞いてない?」
[うん、アーデン、オーディンにも内緒言ったから]
「そうなんだ……オーディンお願い私を街まで乗せて行ってくれる?」
[うんうん、乗ってお散歩!]
「ふふ、そうねえお散歩しましょ」
そうして私とオーディンは街に向かう事にした。
[やばいぜ、チキショウ!アーデンの奴どこに居るんだ?絶対エリは街に来るぜ]
キョロキョロ
[ンガー見つからねぇ!俺はもう知らねーぞ!ちゃんとエリと話さないアーデンが悪りぃんだからな!]
[エリ、もうすぐ着くよーお散歩終わりー]
「オーディン速くなったよね、凄い凄い」
[エヘヘ、エリに褒められた!嬉しい]
この時まではまさかあんな事に成るなんて思わなかった。
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俺はおかしい……この頃絵里子が側に来ると胸がざわざわして絵里子を押し倒したくなる。
もっと絵里子に触れたくなる……滅茶苦茶にしたくて自分が抑えきれなくなりそうで怖い
このままだときっといつか絵里子を傷付けて泣かせてしまう事に成る。
まだ、自分を抑えられるうちに絵里子から離れるべきなのかも知れないが、そんな事出来ない 出来ないんだ。
どうすれば良い?誰か教えてくれ!俺を止めてくれ!絵里子を傷つ けて泣かせてしまう前に
《森への道、酒場》
酒場のドアを開け中に入り目当ての男に声をかける
「ライナス」
「あら、アーデンいらっしゃい。夜に来るなんて珍しいわね」
「ライナス助けてくれ!俺はおかしい、どうしたら良いのか解らないんだ」
「ん?どうしたの?まぁいいわ座りなさいよ、何か飲む?」
「すまない、俺は酒は苦手なんだ。それより教えて欲しい」
「何が有ったか解らないけど、私でわかる事かしら?」
「ライナスには恋人がいるだろう?ライナスはその……その恋人を押し倒したいとか触れたいとか、滅茶苦茶にしたいとか悩んだ事は無いのか?」
「え?まさかそんな事アーデンから聞かれると思わなかったけど……私の場合は逆で……されたい方ね、貴方達結婚してるのよね?で、今更それ私に聞くの?」
「俺は女と付き合った事が今迄一度として無い。絵里子が初めてなんだ」
「あらま、だからどうして良いか解らないってこと?今まで良く我慢出来てたわね」
「そうだ、絵里子を傷付けるのも泣かせるのも嫌だ、まして嫌われたらもう生きていけない………1人絵里子のいない世界に残されるくらいなら死んだ方がましだ!」
「アーデン重いわそれ、でもね相手を愛すると触れたく成るとか押し倒したく成るとかそんな事は当たり前なのよ。逆に言えばね、嫌いな人にそんな気持ちになる?なれないでしょ?」
「…………」
「エリーちゃんだってもっとアーデンと触れ合いたい、キスしたいとか思っていると思うわよ?それが愛し合ってる者同士なら当たり前の気持ちなんだからね」
「だ、だが、俺は絵里子に愛してると言われた事は無いそれでも良いのか?」
「はぁ?貴方達結婚してるのよね?その指輪はおしゃれで、じゃないのよね?なのにお互いそんな事も言い合わないの?有り得ないわよ!キスは?キスはしてるのよね?」
「した、2回だけだが、でも毎朝頬にキスはしてくれる。後絵里子から額にもしてくれた事は有る」
「いやいや、有り得ないでしょ?それだけなの?それで良く夫婦で要られたと逆に感心するわよ。まだ新婚でしょう?」
「新婚とは何だ?」
「は?アーデン?貴方………まさか未だ童貞?」
「それは何だ?それだと結婚してはいけなかったのか?」
(どうする?!俺は知らなかったとは言え童貞とやらで絵里子と結婚してしまった……絵里子に知られたら……どうする?どうすれば良い?)
「何だか話が噛み合わないと思ったらアーデンはチェリーちゃんだったのね。結婚もしてるからもう当然やる事やってると思ってたわ」
(また知らない言葉が出てきたぞ、チェリーちゃんとは何だ?それだと結婚してはいけなかったのだろうか?)
「それはいけない事なのか?」
「いけなくはないけど……ねぇアーデンちゃんとエリーちゃんと話し合った方が良いと思うわよ。下手な事して逆にエリーちゃんを悲しませるような事にならない様にね」
そんな事をライナスと話していると隣に座っていた男が声を掛けて来た
「ようよう、兄ちゃん童貞だって?手っ取り早く童貞捨てたいなら紹介するぜあんたのその仮面の下の顔のせいで相手を見付けられなかったんなら俺がいい所に案内するけど、どうする?」
「本当か?それで絵里子を傷付けずに済むならお願いしたい」
「ちょっとアーデン辞めなさいよ、そんな事したら逆にエリーちゃんを泣かせる事になるわよ!あんたも変な事アーデンに言わないで頂戴よ」
「俺は人助けしてやるって言ってるだけじゃねえかよ!女紹介して何が悪い?」
「女?紹介?俺は絵里子以外必要ない。女が居ないと童貞とやらは捨てられないのか?」
「お?男が良いのか?どっちも紹介できるがよ、相手が居ないと童貞捨てる事は出来ねぇな」
「ライナス、童貞とやらを捨てた方が絵里子を傷付けなくて済むなら俺は捨てたい」
「ちょっと!違うわよ、そういう事じゃないのよ!エリーと話し合えって言ってるのよ」
「さぁ兄ちゃん善は急げだ行くぜ。あ、飲み代は後で払いに来るからよ」
男はアーデンの腕を掴み店から連れ出してしまった。
「ねぇ、ちょ、ちょっとアーデン!辞めなさい後で後悔する事に成るから!」
(やだ、どうしましょアーデンったら絶対後で揉めるわよ!困ったわ店このままじゃ行けないしどうしましょう)
しばらくしてアーデンと入れ違いに息を切らしながら絵里子が店にやって来た
カラン カラン
「今晩は、あのライナスさんアーデン来てますか?」
「エリー!丁度良い所に、急いでアーデン追いかけて!ごめんなさい私変な事口走ってしまって、アーデン男に連れられて多分だけど娼館に行っちゃった」
「はぁ?え?娼館?何でそんな所に?」
「アーデン悩んでてね、このままだとエリーちゃんを押し倒しそうで泣かせて傷付けてしまうって。そしたら側に居た男が娼館で童貞捨てれば良いって連れて行っちゃったの!掻い摘んで言えばそういう事だから急いでアーデン止めて」
「何でそんな事に……ライナスさん娼館は何処ですか?」
「この裏の道を左に真っ直ぐに行けばわかると思うわ、気を付けてねエリー一緒に行けなくて御免なさい!でも何か有ったらこれ使って」
そう言って渡されたのは <サイレン砲> 紐を抜くと大音響が響くからと
(馬鹿だアーデンも私も恥ずかしいからと後回しにした事でアーデンを苦しめて仕舞ってたなんて。わかってたのに彼は純粋な人なのだと。少しの事で本当はとても傷付きやすいんだって、何が私が幸せにするよ!出来てないじゃない。
もっとちゃんと言えば良かった、話せば良かったじゃない彼を失う事が怖いのは私も同じなのに……お願いアーデン他の人を抱かないで!私だけを愛して)
夜の裏町を絵里子は走る、愛する人の後ろ姿を求めて。