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漆黒の王

この前通った時は気にも止めなかった白亜の建物ではあるけれど、

こうして見上げると威厳も圧迫感も相当なものだし、門兵さん2人とも巨人族の人だからか見下げられてる感が半端ない。


「勢いつけて来たのは良いけれど、会えるかわからないよね。でも、聞くだけ聞いてみようね」


「そうだな」


私は門兵さんにレオナルドさんに会いたいと告げてみた


「レオナルド殿は確かシャルナーク王との謁見中だと思いますが、いつ終わるかはわかりかねます。」


「そうですか……困ったなどうしよう」


「絵里子、待つか?」

アーデンが私の名を呼ぶと2人の門兵さん達は顔を見合わせていた


「いつ終わるとも分からないのに待つのは……」


「申し訳有りませんが、もしやアーデン殿と絵里子殿でしょうか?」


「え?あ、はいそうです」


「おぉ、しばしお待ち下さい」

そう言って門兵さんは何やら小さな紙に書き込み鳩を飛ばした


しばらくして鳩が戻ってくるとその足には小さな紙が付いた筒が有る

門兵さんはその紙を読みもう1人の門兵さんと話すと

「アーデン殿、絵里子殿、シャルナーク王がお会いしたいと申しております。今こちらに迎えの者が参りますからその者と一緒に王の元へどうぞ」


私とアーデンは顔を見合わせて

「何故王様が私達なんかと?そんなに簡単に会える方では無いでしょう?」


「分からんが、会いたいと言うなら会うべきだろう。レオナルドもその場に居るだろうしな」



しばらくするとこちらに向かって走って来る男の人が見えてきた。彼がきっと案内人なのだろうが

「アーデン!あれってレオナルドさん?」


「そうだなレオナルドだ」


「いや〜お待たせ致しました、案内しますよ」


「レオナルドさんどうして?」


「何がですか?」


「いえ、何故レオナルドさんが王様への案内人の役を?と思ったもので」


「あぁ、王と私は幼馴染なので普段から親しくしてるんですよ」


「は、はは、ははは、レオナルドさん!今まで失礼しました!」

腰を90度に折り今迄の失礼を詫びた


「嫌だな〜今更そんな、いつも通りでいいですよ。王もとても気さくな方ですしそれにね、お会いしたらきっと絵里子さんはビックリすると思うんですよねー」


「え?何?脅しですか?辞めてくださいよ人が悪い」


「レオナルド、絵里子を困らせるな」


「やだな〜アーデンさんもそんな怖い声で脅さないで下さい……顔が見えないから余計に怖いんですよ」

そんな事を話しながら城の中に入るとそこは煌びやかな世界とは無縁の質素でモノトーンに彩られた世界が広がっていた。

床は白と黒の四角いタイルで彩られ壁は白に統一され蔦の葉が浮き出る形で彫られている

(この国の王様のセンスは好感が持てるな)


両開きのドアの前でレオナルドさんは立ち止まり中に居るで有ろう人に声を掛ける。

「シャルナーク様、アーデン殿とエリー殿をお連れしましたよ」


「おう、入れ」

ドアが開き中に招き入れられるそして机の後ろに座っているその人物を見た時私は言葉を失った。

まだ年若く22、3に見える彼は漆黒の髪と眼を持ち、その顔立ちはどこか懐かしい日本人独特の面持ちだったから。


「御二方共どうぞこちらにお座りください」

そう言ってレオナルドさんはソファーに座るよう勧める


「レオナルドに何か用が有った様だが丁度私も貴方達に会いたいと思っていたものでね」


「シャル、その前に紹介をしないとだろ?」


「おぉ、そうだったな!俺の名はシャルナークだ、一応この国の王なんぞしてるがそんな大した者でもないからな、気を使わないでくれ」


「シャル、それ余り外で言ってくれるなよ?国には象徴という者が必要なんだからね」


「ふん、そのせいで好き勝手も出来ない役をさせられてる、堪らんな」


「アーデンさん、エリーさん、まぁこんな感じの人なので……あ!でも、外ではこの事は内密にね」


「はぁ、わかりましたけど……あの……」


「絵里子殿」そうシャルナーク王が私を呼ぶと


「すまないが!絵里子と呼んで良いのは俺だけだ。エリーと」


「これはこれは、レオの言っていた通りだな、失礼したエリー殿」(ニヤリ)


「い、いえ……なんか…すみません」


「仲が良いのは素晴らしい事だ、で、話を戻すがエリー殿が聞きたいのはこの髪の事だろう?」


「は…い」


「そうだよな、この色はこの世界では無いからな。そして絵里子と言う響きの名前もな」


「!!」


「君は違う世界から来たのだろう?俺の祖父母と同じようにな」


「な!あ!やっぱりここは異世界なんですか?」


「何から話せば良いのだろうな、俺の祖父母は日本という国に居たそうだ。この世界に来た彼等は文明が遅れ争いが絶えないこの世界が嫌で仕方なかった……そしてある日争いを嫌う者達を集めこの地に国を開いた彼等は争いを好む他の国との貿易を諦めこの国を独立国家とし、己の知恵をこの国に注いだんだよ。エリー、この国に来て何か感じなかったか?」


「初めてこの国に来た時違和感は有りました。アーデンから聞いていた他の国と違うから。マンホールのような物があったり、舗装され放射線状に配置された道、病院、銀行、警察、消防署そのどれもが私の国と余りにも似てたから」


「そうだろうな、俺もレオから君のことを聞いた時この世界の住人では無いだろうと思ってはいたが確証が持てなかった。ただな、この前の春夏祭の時の事を聞いた時それが確信に変わったよ」


「そうだったんですね、だから私に会いたいと仰って下さったんですね」


「子供の頃な祖父母から祭に綿あめと言う物が有って口の中で溶ける美味い菓子が有ると聞いててな、子供の俺はそれが信じられず食べてみたいとずっと思っていたがどうすれば作れるのか分からなくてな、諦めていたんだ。だが、この前レオが土産だと綿あめを買って来てくれてな。感動したよこれが祖父母の言っていた口の中で消える菓子なのだとな」


王様は目を閉じ懐かしむように思い出していたのだろう幼い頃の祖父母との思い出を


「だが、解せないのはエリーの髪の色は黒では無いな」


「あの、これは染めて居るんです。黒だと目立ってしまうので」


「成る程な、確かに黒だと俺と血の繋がりが有ると言いふらして居る様なものだな」


「あ、そうですよね。すみません黒にはもうしませんから」


「あぁ、嫌違うんだ。もし血の繋がりが有るとなると何かと制限が掛かってしまうからなそれは嫌だろう?窮屈だぞ ハハハ」


「そうですね、それは嫌です。アーデンと気ままに暮らす方が良いです」


「だろうな、俺も出来るならそうしたいからな 。さて、それでエリーはレオに用だったのだろう?」


「あ!そうなんです。お願いが有って」


「私にですか?何でしょう?」

私は今日の出来事そして融資について話して見ることにした。


「融資ですか……」


「成功する確証は有りませんでも、あの方は仕方なく高額で薬を売っていたんです私の考えが上手く行けば薬屋を減らさずに済むかも知れません。駄目でしょうか?」


「正直言って何故エリーさんがそこまであの店に?と思うのですが」


「そうですよね、私の事をもう知ってるので話しやすいですね。実は私がこの世界に来た時……」

私はアーデンの事は伏せて出逢いからこの国に入った時の事までをシャルナーク王とレオナルドさんに話した。


「成る程な、ゼイグロアとカンサロナがそんな事に成っていたか」

シャルナーク王は自らの顎に手を当て撫でながら何かを考えていたが


「しかしそれと薬屋がどう言う関係だ?」


「もし、火種がこの国にと思った時対角線上に薬屋がある方がいいとおもったのと疫病が出た時もその方がと。その為には無くなって欲しく無いんです。」


「ふむ、だが今現在かなり窮困しているのだろう?打開策はあるのか?こちらも、おいそれと助ける事は出来ないのだよ。それをしたら他にもしなければいけなくなるからな」


「私の国にドラッグストアと言う物が在ります。それは薬は勿論それ以外の物も売る事で益を出すものなんです。丁度あの場所は飲み物一つ買うにも西まで行かなければならず不便でした。だから」


「そう言うわけですか!薬と飲み物などを一緒に売る事で何とかしようと」


「はい!そうです。腐りにくい物や本などを中心に飲み物、菓子、お弁当を売ったらどうかと」


「成る程な、確かにそうすればあの辺りで仕事をして居る奴らは助かるか」


「どうでしょうか?融資御願い出来ませんか?」


「どうだ?レオ」


「そうですね、わかりました。」


「あの……それで勝手では有りますけど出来れば利子は少な目でお願いします」


「何を言い出すかと思えば、ハハハ。利子など取りませんよこの国に関わる事でも有るのですから。後は頑張って返してくれればそれで良いんです」


トントン拍子に話が進んだ事が信じられない。

シャルナーク王に挨拶をして執務室をレオさんと後にする



⌘⌘⌘⌘⌘ ⌘⌘⌘⌘⌘


「おい、聞いてたな?」


「ハッ」何処からともなく返ってくる返事に王は


「すぐに二カ国を調べろ」


「仰せのままに」


「さて、アーデンと絵里子とやらの事 もう少し調べる必要が有りそうだな……」

彼の癖なのだろうか顎に手を当て撫でながら唇の端が上がる









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― 新着の感想 ―
[気になる点] 細かいことですが、ドラックストア ではなく、ドラッグストア(drug=薬)ではないでしょうか?
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