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これは逃避行

今回もR15残酷なシーン有ります。苦手な方はそっ閉じをお願いします!

私は取り敢えず彼の顔や身体に付いている血を濡らした布で拭き取っていった。時々傷が痛むのかアーデンは顔を歪める


「アーデン痛む?御免なさい」


「大丈夫だ、気にするな」そう彼は言うけれど辛そうな事に変わりはなく

(せめて座らせてあげたい。立ったまま鎖で繋がれてるなんて辛いよね)


しばらくすると

「おい、飯だ。そいつにも食わせてやれ」そう言って男は手に持ってきた所々ヘコみ薄汚れた食器に入ったそれらを置いて去って行った


「何これ………これが食べ物?ドロドロのパン?」


「お腹空いてるだろ、俺の分も食べて良い」


「アーデンだってお腹空いてるでしょ?ちゃんと食べて。嫌かもしれないけど私が食べさせるから」そう言って私はそのドロドロの食べ物をスプーンでアーデンの口元に運んだ


でも、彼は顔を背け俯いたまま

「絵里子が食べろ俺は大丈夫だ。それにもうこれ以上………」


「な、何言ってるの?止めてよそんな言い方」


「俺はこのままだと戦争の道具として使われてしまう。人を殺すことは断じて出来ない。ならば死ぬしか無い」

鎖で繋がれた手を白くなる程握り締めながら絞り出す言葉は悲しい。


「戦争の道具?どういう事なの?それに死ぬなんて簡単に言わないでよ」


「王は俺を使い隣の国カンサロナに侵攻するつもりだ」


「つまりこの国とカンサロナって国が戦争になるって事?そしてアーデンを魔法で闘わせるって事?」


「少し違うがその様なものだ」


「待って、わたしどっちの国も知らないんだけど。この地球にそんな名前の国有ったかしら?だいたい魔法って……映画じゃ有るまいし」


「絵里子の言う地球が何かはわからない、だが魔法は有る」


「地球がわからないですって?」


「絵里子、お前の容姿もこの辺りでは余り見かけないが、どの国から来た?」


「どの国って日本よ、知らない?」


「聞いたことは無い。どこら辺に有るんだ?」


「日本は周りを海に囲まれた島国よ」


「そうか、小さな島なら知られて居ないのかも知れない」


「この国ってどの辺りに有るの?」


「そうだな、ボートラス大陸の右端の方だな」


「??聞いた事がない大陸名それに、魔法?戦争?ねぇアーデンこの星の名前は何?」


「星?星とは?」


「あのほら、外で輝いているあれが星だけど、この大地も星の一つでしょ?」


「絵里子、この大地は星なのか?」


「アーデンもしかして…まさか…でも…私この星の人間じゃないのかも知れない」


「どういう事だ?」


「わからない、わからないけど、今迄の話を聞いていてそう思ったの」


「絵里子?泣いているのか?なぜ泣く?」


「私、アーデンと同じかも知れない……」(あれ?私泣いてるの?)


「なにがだ?」


「アーデンもここでひとりぼっち、私もこの星でひとりぼっちなの きっとそう……」


「絵里子、泣くな……泣かないでくれ」


「アーデン……」


私は何故かアーデンにしがみつくようにして泣いたどうしてこんな事に……どうして……

そんな事ばかりが頭の中でグルグルと回り涙が出て止まらない


しばらくして落ち着いてくると彼に抱きついて居た事を思い出して恥ずかしくなり彼の背から手を離し後ずさる。


「ごめんねアーデン」


「構わない。もう大丈夫か?」


「うん、落ち着いた。アーデン、私はここが何処なのかどうなってるのかわからない。 でも、死にたくないしアーデンにも死んで欲しくない……お願い私と一緒に逃げましょう?」


「絵里子と?」


「えぇ私と一緒に」


「絵里子と一緒に……この俺と一緒に居ると言うのか?」


「アーデンさえ良ければだけど。でも、私は貴方を一人置いて逃げるなんてそんな事出来ない。逃げる時は一緒に」


「絵里子は俺が居ても嫌では無いのか?」


「なぜ?私はアーデンの事を気持ち悪いとも醜いとも思わない。私の居た国ではアーデンはきっととても美しいと思われた筈。あ、でも男の人に美しいは失礼なのかな?」


「絵里子は変わってる フッハハ」


「アーデンが笑った……」(凄い……いつまでも見ていたい)


「笑って………そうか……絵里子ここを脱け出そうお前を連れて行く」


「うん、一緒に逃げましょう」


「あぁ」


それから私とアーデンは鎖をどうにか断ち切る方法を探した

アーデンが言うには鎖には魔封じがされて居てアーデンは今小さな魔法しか使えない状態だから、鎖さえ外せればここから出る事は簡単だと言う。


けれども頑丈な鎖は何の道具もなく断ち切る事など到底出来そうも無かった。 どうしよう………


あれこれ考えているうちに窓の外が明るくなり始め朝が来てしまった。

外では呑気そうに小鳥たちが朝のさえずりをしている

「何も出来ないまま朝になっちゃった」


「絵里子、少し休め」


「でも、アーデンは立ったままで辛いのに」


「俺はもうずっとこうしてる慣れた」


「嘘、慣れるはずない!手首も擦り切れて血が出てるし、そんな筈ない何でそんな風に自分を…」


「絵里子、お前は疲れてる。気が高ぶるのはそのせいだ良いから休め」


彼の目を見つめていると何故か「でも……で……も……」


「すまない絵里子、こんな事で魔法を使うのは本意では無いが今は休め」


わたしの身体から力が抜けて、ズルズルとアーデンにしがみ付きながらも崩れる様に倒れて行く


(情けない、この程度の魔法しか使えないのか……お前を護る力を取り戻したい。誰にも汚させたくない)


牢番の男が扉の覗き穴から絵里子に声を掛けるが返事は無く

「おい、おい、チッ寝てやがるのか」ガチャッ キィー


「しかし良い女だ、勿体ねぇな少しくらい味わった処で誰にもわからねぇだろうし………まぁ、暴れたから嬲ったって事で へへへ。ヤベェなぁすべすべだゼ へへへ」


「絵里子に触るな!」


「はぁ?お前喋れたのか?化けもんの癖に生意気な奴だぜ」


「死にたいか?」地の底から響く様な声


「!だ、誰だ?……お、お前か?お前が喋ったのか?急に声が変わるから誰かと思ったぜ」


「今一度聞く、死にたいか?」


「フヘヘ、化けもんが黙って見てろ」


「彼女に触れる事は許さない。死をもって償うか?」


「おりゃぁ知ってるんだぜ、お前はその鎖で繋がれてると魔法は使えないんだろう?時間がねぇんだ黙って見てろうるせえな」


「そうか……ではその身で償え」


「グッぐぎゃングググンガ」男の身体がまるで飴細工の様に捻れ曲がっていく……


「彼女を血で汚す事は許さない。消えよねじれの海に」


そう言って彼は、死んだ男の懐から鍵をおびき寄せ鎖を外し数度手首を撫でると跡形も無く傷痕は消えて行った。

そして死んだ男は飲まれるように渦の中に………沈んで行く


彼はその爪で傷つけぬ様に愛しげに彼女の頬を撫で、その足に絡みつく鎖を断ち切るとすぐさま抱き上げ牢の壁に向かって手をかざす。

瞬く間に壁はズルリと紅く溶けだし穴が広がっていく……

彼女を抱いたままの彼は外に飛び出し駆け抜ける眩しく光る日差しの道を……



「よく寝た気がする…ん〜〜ん………ん?え?ここはどこ?」見渡すと辺り一面緑の草原だった


「アーデン?アーデン?どこ?」


「目が覚めたか?」


「アーデンここどこ?どうして私達外にいるの?」


「そうだな、魔法が使えたからだろう?良く覚えてはいないが」


「え?アーデン魔法使えたの?」


「あぁ絵里子が寝ている間に腕を動かしていたら鎖が緩んだ」

(記憶が無い。男に怒りを覚えたまでは覚えているが気がつくと此処に……だがそれを話せば彼女は怖がり俺を置いて行くかもしれない)


「そうなの?良かった!もう大丈夫なのね?」


「大丈夫だがここはまだ危険だ。もう少し先に進もう」


「うん、わかった。行きましょうアーデン」私は彼の手を取り歩き出す

彼の顔が驚きと嬉しさに変わる様を見ることも無く


「少し待ってくれ」


「何?どうしたの?」


「絵里子の髪も、俺の髪や容姿も目立ち過ぎるそれに頭を怪我してるのか?」


「あ、そうよね……覚えてないんだけど、多分殴られたんだと思う。でも大丈夫よもう血も止まってるし痛くないし。それよりどうしよう。染めたり出来れば良いんだけど」


「染めるとは?」


「えっと、色を変えるって事」


「なるほど、何色が良いんだ?」


「この国では何色の人が多いの?」


「そうだな、茶色か?」


「なら、それが良いよね。染める為の草とか探そうか何だと染められるか知ってる?」


「いや、これでどうだ?」そう言うとアーデンは軽く指を振り何かを呟くと

「な!アーデンこれって魔法なの?え?頭の傷も治してくれたの?」


「そうだ」


彼の金色の髪も眼も、私の黒い髪も眼も、茶色に変わっていた

人は髪や目の色が変わっただけでこんなにも印象が変わるものなのね?


「アーデン、凄いね……」


「気持ち悪いか?」


「まさか!凄いなぁと感心しただけよ」


「そうか」


「顔は変えられないのね?」


「見たことが無い限り俺が知っている者にしか変われない。」


「そっかぁ、でも知らない人に成るのはやっぱり嫌だしこのままでも良いよね?髪の色が変わっただけでもだいぶ違うもの」


「そうだな」


彼の顔に笑顔が少しだけ増えたのかも知れ無い








ブックマーク、ポイント有難うございました。感謝感激でございます!

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