私達の店
皆んなは私をエリーと呼んでくれる。
絵里子と呼ぶのはジジ様とアーデンだけ。アーデンはジジ様が絵里子と呼ぶのも気に入らないみたいだけど…………。
なので街に行くと皆んなはエリーと親しみを込めて呼んでくれるようになった。
そんな私の店が今目の前に有る!
普通の何処にでも有る店構えなのだけど、外装や内装は自分達でどの様に変えても良いと言ってもらえたからアーデンと話し合って自分達の好みに変えていこうと思ってる。
家は二階建てで日本で言うところの14畳位かな?一階は商品棚とカウンター、エチケットルーム、二階は在庫商品を置いたりちょっとした休憩スペースにするつもり。
外装に関しては色を塗り替えたりする程度にして、内装はアーデンが魔法で色付けなどしてくれる。(外を魔法でする訳にはいかないから自力でしますよ)今の所商品と言ってもリッチ、エドナ、エリクサだけだし、そこまで急いで変えて行かなくても良いねと言う事に成った。
外装は入り口の両側にレンガで花壇を作って花を植えようと思う四季折々の花で飾れたら素敵だろうな。
ゆっくりお店も私達も成長して行きましょう。
今私は、エリクサの一件があった事も有るけれど新商品開拓に気合を入れて取り組んでいます。
どうしても性急に欲しいのがシャンプー!この星で頭を洗うのは石鹸なのだけど、私の周りの人たちの髪の傷みが凄いのが気になり出したらもう駄目でした。
私自身も傷み始めた事も有るけどアーデンは魔法で乾かしたりしてるし、本来傷みにくいのか本当にサラサラで綺麗。
私も乾かして貰っているのに何故か毛先が………ゴワゴワ感も拭えない。
そこで考えたのが石鹸水にエドナ草の汁を混ぜたらどうなるか?
石鹸をどの様にして石鹸水にするかとか、エドナとの配分とか色々スペラに聞きながら試してるところ。
「スペラこの世界の石鹸は何から出来ているの?」
[実だな、ムクロンジン草と言う実が有ってな、その実をすり潰し布でコシて布に残った方を固めて石鹸にすんだ]
「成る程ねだから何だか分からないつぶつぶが時々髪に着くんだね……と言う事はその時絞って本来捨てる方の水にも石鹸の効果は有るのかな?」
[試せば良いだろ?]
「石鹸の実ってそんなに何処にでも生えてる物なの?」
「絵里子、俺が取ってこよう。どれ位必要だ?」
「アーデンが?大変じゃ無いの?」
「大丈夫だ、俺は魔法使いだからな精霊に聞けばその場所まで飛べるだろう」
「それじゃあ頼もうかな。そんなに一杯じゃなくて良いの、お願い出来る?」
「任せろ、お礼は貰うが」
「お礼……えっと、何が欲しいのかな?」
「絵里子からのキスが良い」
(多分そんな所じゃ無いかな〜?とは思っていたけどね)
「改めて言われると恥ずかしいよね………」
アーデンがそれで気持ち良く働いてくれるなら私も嬉しいし恥ずかしいけど喜んでさせてもらうよ。
「アーデン屈んでくれる?」
「!こうか?」
(する私より言い出したアーデンの方が真っ赤って…大人可愛い……)
私は屈んだアーデンの両頬を手で挟み真っ赤な顔のその唇にキスをする。
「絵里子!幸せだ……本当に幸せなんだ」
私を抱き締めながら何回も何回も繰り返し幸せだと言う彼
「うん、私も幸せだよ」
(アーデンの幸せは寂しさと孤独の裏返しだから些細なことが彼にとって掛け替えのない物になって行く。だから私はもっと彼に幸せだと思って欲しい。その為なら恥ずかしい何て言ってられないの)
「絵里子行ってくる」
「うん、お願いします。気を付けてね」
彼はスーッと目の前で消えてしまう。いつも思うけどこの瞬間には慣れそうも無く急に怖くなる。
目の前から消えると言う事に不安が有る私は頭の中で有り得ない事と認識されているからだと思う。
少しして家の裏から「絵里子!絵里子!」とアーデンの声が。
「は?え?何故裏からアーデンの声」
私は慌てて家の裏に回ってみるとアーデンはそこに居た。
「え?アーデン?何でここに?もう取って来てくれたの?」
「あ、いや、精霊に聞いて連れて来られた場所がここだ」
「は?ここって」私は周りを見回してみると
そこには辺り一面小さな可愛い丸い実がたわわに実っていた。
[うはっ、ここに生えてるじゃねぇかムクロンジン草!俺っちも気がつかなかったぜ]
「え?これが石鹸の元に成る実なの?」
「精霊が言うにはそうらしい。何でも日光が苦手で湿った場所が好きなのだと言っている」
「成る程ね……だから家の裏に生えてたの。しかも群生してるし」
[ムクロンジン草は動物も食わねぇしな、落ちて土の肥やし程度だしよ]
「肥やしに成るなら取らない方が良いのかな?」
「いや、代わりはいくらでも有るからな構わんだろう」
「そっかぁ、それじゃあすみませんが貰いますね」
私はムクロンジン草に断りを入れて用意した袋に詰めていく。
子供の頃良く理科の実験でビーカーやフラスコなんかを使ったけどこの世界にそんなものは無くコップや水差しなどを応用して試すけどこの先の事を考えたらビーカーや秤も欲しいな。作れる職人さん居ないかしら。
頼めばまだまだこの世界は便利になりそうな気がする
どこまで関わって良いのか分からないけれどもう、帰れない ううん、アーデンと一緒に成った時に帰らないと決めたのだから私の知りうる限りの事を伝えて行ったらいけないのかな?とこの頃考えてる。
どの道どんなに頑張っても出来ない事は有るのだしね。
有ったら良いなと思う物は沢山有るのだけど、食に関しては難しい物が多い。
アーデンは好き嫌いが今の所無いみたいで作って出すとどれも美味しいと言ってくれるので嬉しい。
ある程度自炊をしていたアーデンだからやろうと思えば出来るらしいけれどキッチンは私の大事な戦場だから譲らないよ。
畑には色んな野菜や、ハーブ類、果実の木も植えてみたり
周りに居る長の樹の子供達に色々教わりながら植える場所も指定して貰った。
ハーブの生命力は桁違いに強いので植える時に気を付けろとかね。
配合関係は難しくエリクサの時の様にこんなもんかな?程度では出来そうもなく試行錯誤しながらゆっくり進めるしか無いかもしれない。
シャンプーが出来たら次に作りたいのが化粧水とか、保湿クリームやリップ。
私が欲しい物ばかりで済まないとは思うけれど、早急に欲しいです。
夏に仮面を着けてると蒸れるとアーデンが言うから仮面に関しても改良したい。
家では仮面を外しているアーデンのキラキラ素顔を見ては、この幸せは私だけが感じられるものだと思う。たとえ他の人が何と思おうと私に取っては最高に素敵なんだもの!
シャルルクの街には今まで薬屋は一軒だけで北東側にある。
今回私達が南西側に作った事で二軒目となったのだけどその際植物研究所から価格を今の薬屋より下げてくれないかと言われた。
『何故ですか?』と聞いた所今有る薬屋が競合店が無い為なのか、かなり高めで売っているのでは無いかと考えているそうで、何回かもう少し庶民も簡単に買える値段に出来ないか?と言っていたそうなのだけど、無視されていたらしい。
『流通の関係で難しかったのでは無いですか?』と聞くとそうでは無いと言う。
エドナも、リッチも流石に自国で足りなければ大変だと言う事で研究所で育てて卸しているし、栽培が難しい種類では無いので薬屋自体でも栽培するように伝えてはいるのだけどそこも無視してるらしく、流石に研究所も御立腹なのだ。
どんな人が主人なのかは判らないけれど、出来る事なら揉め事は避けたい。
けれども店を出す以上避けて通れないのかも知れない。
市場調査も兼ねて覗きに行ったけど確かに高いと思う。あれでは一般人では中々手が出せないかも……でも、何故??
エドナで一本5000アルク、リッチで一本8000アルク…………高すぎる。
原価率と原価を考えると私なら エドナで1000アルク、リッチで1500アルクで元が充分取れるのだけど、何故そこまで高く設定してるのだろう?
何か理由がある様な気がするのだけど…………。
店の改装も何とか目処が立って来たし物凄くドキドキしてる。
店のオーナーは勿論アーデンになって貰う。私はあくまでも従業員
その方が何かあった時良いだろうとアーデンが言ってくれたから。
お客さん来てくれると嬉しいな。