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春夏祭

今日は2週間前から準備した春夏祭当日の朝

「う〜う〜〜」


「どうした?」


「心配で胃が痛いの。お客さん来てくれるかなぁ。皆んな上手く出来るかなぁって考えるともう、胃がキリキリしてしまってさっきからズキズキするの」


「絵里子、大丈夫だ。あんなに一生懸命皆んなで頑張ったんだそれだけでも凄い事だぞ」


「アーデーン!」 ヒシッ


「ヨシヨシ」 ギュッ ナデナデ


[お前達朝から何してんだよ、さっさと用意して行くんだろ?ったくよ]


「お前は……せっかく絵里子から抱きついてくれたと言うのに……」


[胃が痛いならアーデンに抱き着くよりリッチ薬でも飲んだ方が確実だ]


「クッ、お前は黙ってろ。ほら、絵里子リッチ薬だ苦いぞ」


「ありがとうアーデン」


「良いんだ、絵里子。ハァ〜朝から幸せだ」


[ケッ、アホらしい]


「この2週間俺はまともに絵里子に抱き着けなかったんだぞ、どれだけ絵里子不足だった事か」


[あぁ、ハイハイ……もう時間だろ行こうぜ]


(この会話に入り込めなかった……恥ずかしい)



《シャルルク西地区》


後2時間後には祭りが始まる。

「どうかな?ちょっと皆んなの処見回ってくるね」


「エリー、落ち着きなさいってば。大丈夫よちゃんと手分けして準備もしてるし、それに絶対成功するって!それにもしも失敗に終わったとしてもまた来年頑張れば良いだけだよ」


「そうなんだけど……」


「お祭りの時だけは各国から沢山人が来るから治安の方が大変かもね」


「そんなに凄いの?春夏祭って」


「う〜ん、他の国のお祭りに行った事無いから比べようも無いけどこの国は恵まれてるから祭りの入国審査が緩い時に来てそのまま居座る人や悪さする人も多いのよね」


「祭りも良し悪しなんだ」


「兄さんの彼氏(アスベル)は1週間も前から睡眠時間2、3時間らしいわよ」


「あ〜そう言えばこの前アスベルさんとすれ違った時目の下に凄い隈だった」


「この時期の犯罪率は一年で1番多いからね、エリーも気をつけてよね」


「ジェシカもね。わたし、一回りして皆さんの様子見てくる、やっぱり気になるし」


「エリーは苦労性ね。ま、良いわ気をつけて行って来てね」


「うん、行ってきます」


ジェシカと別れてそれぞれの店に顔を見せると皆んな始めての料理始めての準備でとても忙しそうなのだけど、生き生きしてて楽しそうで良かった。

思ったよりアクシデントも無くて怖いぐらい順調に進んでる。


顔を見せるたびに笑顔を返してもらえるようになったのが嬉しい。

一番大変そうな、溶き粉を手伝い出来上がった溶粉を、アーデンが各店に届けてくれたりして気が付けば後10分で祭りが始まる。


ドキドキする ! せめて何事もなく終わって欲しい。

お城から鐘の音が響き渡り祭りの開始!


北、南門が同時に開けられ外から沢山の人が我先にと雪崩れ込んでくるその壮絶な光景たるや圧巻です。

毎年沢山の人が来る事は聞いたけど………こんなにとは聞いてない。

街に宿屋は三軒しかない為殆どの人は街の外でキャンプを張る事になるそうで


(全ての人を街に入れてしまうと収拾がつかなくなる為街の中では休めないらしく、二日間の祭り共終わる度に門の外に出て貰うらしい。あくまでも、街に住んでる人重視で治安第一の為)

それでも、毎年沢山の人が祭りに来る。

この頃は他の国でもシャルルクを見習って祭りをし始めたそうです。


西門と東門は祭り開始と共に閉められ、北と南からしか出入り出来なくなる。

その方が警備しやすいんですって。毎年の事だから北と南にキャンプは集中する。


「ジェシカ!凄い人ね、捌ききれるかな?」


「うん、凄いどの出店舗も人手が足りなくて!こんなの初めてかも知れない」


「1番大変そうな処手伝って来るね」


「ごめんねエリー、本当ならエリーは見る側なのに」


「気にしないで、最後まで手伝うよ」


「ありがとう、気をつけてね」


「うん、大丈夫」

そう言う訳で初日私とアーデンは祭りの見物どころでは無くなってしまった。

午後になると客足はもっと増え出し裏方は惨憺たる状況に成っていた。



祭り1日目終了の合図の鐘が鳴る頃にはもうどの店の人達もゲッソリしていたけど、私はこの時の為にと認可されたばかりの新薬を作って来ていたのでそれを渡して行く。

実はこの薬失敗作から出来た疲労回復薬なのです。ちゃんと植物園の監査も通って認められた薬だよ。


つい5日前、いつものようにリッチ薬を作っていた時に残っていたエドナ薬を混ぜて(捨てに行く時に一遍に済ませようと横着した)置いたのをオーディンが食べる餌に零してしまったの。

慌てて捨てようとカゴを取りに行った間に運悪く?いやいや、運良くオーディンが食べてしまった。


その途端[エリー!エリー!凄いよオーディン疲れ取れた!元気成った!]って


まさかと思いつつ少し口にしてみたら もうね、元気元気!疲れ何それって感じで。

その後も、実験体として(ごめんね、アーデン、スペラ)飲ませたら1人と1羽も元気元気!

これは!って事になって色々試してみたりした結果、疲労回復薬として行けるんじゃ無い?と。


次の日に植物園に持ち込み検査して貰ったら副作用も認められなく、2日後には販売して良いよの許可を貰えました。

そして私が考えた(横着しただけなんだけどね)と言う事で名前を付けて販売してくれと言う事に成り………


ネーミングセンス無い私に付けろと言うのはどうよと思いながら『エリクサ』としました。(絵里草デス………すみません限界ですネーミング。私のいた世界でのゲームから語呂合わせで考えました)

そして出来立てホヤホヤのエリクサを皆んなに配った処もう、皆んな元気元気!明日も頑張るぞーって!良かったって話です。


この世界では疲労回復薬は無かったそうで、お城で働く方や騎士様達にも喜ばれました(単純に傷、一部の病を治す薬2種類のみだったんだよ今迄は)

この事を切っ掛けに少し考えてみる事にした。もっと何か出来ないだろうか?とね。

私には心強い博士と樹々達や動物達も居るのだから、出来そうな気もする。

後はやる気だけ。


そして祭りも2日目最終日!

今日も開門と同時に西地区に殺到する人達で大賑わい、大きなアクシデントも無く順調に最終審査まで来た。


前もって大目に準備して置いたのが良かったんだけど正直言って私は

「え?そんなに準備して大丈夫なの?売れ残ったらどうするの?」

と、不安で仕方なかった。朝から胃がキリキリする程にはね量が半端なかったから……


ジェシカと地区長さんは大丈夫だ心配無い絶対行けると言ってたけれど、もしダメだった時なんと言って謝れば良いのかとその事ばかり考えていたから祭を楽しむ気分じゃ無かったよ。


だから3日前から毎日エリクサを作り続け気を紛らせる日々だった。

てかね、作り続けたのにはもう一つ訳があって、お城から注文が殺到して毎日エリクサを飲みながら作り続け睡眠時間も勿体無いとばかりにひたすら作ってましたよ。


アーデンには「絵里子が足りない」とブツブツ耳元で囁かれ不眠不休のブラック企業も真っ青でした………


もう、祭りは楽しむ物では無く 苦しむ物と成っていた今日この頃

やっと解放される………勿論西地区が優勝しました。

何だろうね、嬉しさよりもただ寝たいだけだなんてね………。


西地区の皆んなが喜んでくれただけ良かったしあの後綿飴も、お好み焼きもたこ焼きも縁日で出した商品はそのまま商店街で売られる事に成ったし

売り上げの貢献も出来て何より。




そして、祭りも終わり1ヶ月が経った頃のある日

「こんにちは、お呼びだと鳩が来たんですけど何かあったんですか?」

私とアーデンは『森への道』からの呼び出し状で街にやって来ました。


「エリー、待ってたのよ」


「私何かやらかしましたか?」


「え?何でそう成るのよ」


「だってわざわざ鳩が来たんだよ?何かあるとしか思えないじゃ無い」


「まぁ、そうか。でもね用は私じゃ無くて地区長さんだよ」


「え!また何かやるの?」


「そう嫌な顔されるのも困ったもんですがねぇ」

と言いながら地区長さんが頭を掻き掻きやって来た。


「うっ、すみません……」


「いえね、祭りでの褒賞を王様に頼む事になった時何を頼もうか?ってみんなで話し合ったんですがこれが良いだろうと言う事に成りましてね。受け取って頂けますかね?」と手渡されたのは一つの鍵。


「これは?何の鍵ですか?」


「これはですね、アーデンさんと絵里子さんのお店の鍵ですよ」


「「!?」」


「気に入って頂けると嬉しいのですがね。まぁ若干私的意味も入って居るんですが」


「私的!すまないが絵里子は俺の妻だ誰にも渡さない」


「あ!イヤイヤその私的では決して有りませんよ!この地区でお店を出してもらいたいと言う意味の私的ですから!」と汗だくで答える地区長さん。

アーデン!目が怖いから。脅しちゃ駄目!


思いもしなかった形で念願の店を 持てるように成り嬉しくて有り難くて

恥ずかしいけどアーデンに抱き付いても涙が止まらなかったよ。








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