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まぁ出逢いはそんなもんです

初回の今回いきなり15Rです。すみませんm(_ _)m

3作目です。良ければ読んでやってくださいませ。


ガツン*

「へへへ、こりゃぁ上玉だな。あの方もさぞ喜ぶだろうなぁ」

一際醜悪な顔のその男は、大きな口から伸びた舌で唇を舐めながらその女性を値踏みする。




ピチャ……ピチャ……(冷たい…何?水?)

襟元に掛かる冷たい水の滴りで目が醒める


「うっ、うぅん ここは、何処?暗くて何も見えない……頭が痛い」

触って見ると手がヌルリと湿り僅かに血の匂いが鼻孔に臭う


(私の頭から血が出てるの?どうして?そうよ急に誰かに後ろから殴られた)

記憶を遡り思い出してみようとするが頭痛がそれをさせてくれない。

その内にまた意識が遠のいて行く………


「おい、まだ目が覚めねぇか?」

牢の中を覗き込む醜悪な男と、その傍で己の剣を磨いている男


「あぁ、まだ寝てる」


「まさか、死んでるんじゃねえよな?」


「さっきから息はしてる音は聞こえるから、死んじゃあいないだろ」


「なら良いがよ、死なれたらあの方に何されっかわかんねぇ」


「俺だって馬鹿じゃないそれ位わかるさ」



再び目が覚めここの暗さに慣れて来ると、どうやら周りは鉄格子で私は牢の中に居るみたいだ。

何とも言えぬカビ臭さと、長年湿り続けた石の滑り


「なんで、こんな所に?」


そう、確か祖母の墓参りに……… 線香を立てお祈りして……それから?

そこで記憶が無い。

右足には錆びた鎖が巻き付いていて重く、動くたびにジャラジャラと不気味な音を響かせる。

なんで今こんな状態に成っているのだろう?


(服は着てる脱がされた形跡はない……よね。セーター、キュロットスカート。うん、大丈夫)


もう一度周りを見渡してみる 石造りの壁に鉄格子むせる様な湿気と異臭

(攫われたの?でも、どうして?ここはどこなの?)


「へへへ、気が付いたみたいだぞ。生きてたな」


「生きてないと困るだろあの方にどやされる」


「違いねぇ。でもよ、あの方はまだ来ないんだろ?俺がちっとばかし遊んでも良いよな?」


「は?馬鹿言うなこれ以上傷物にしたとわかったらこっちの首が飛ぶぞ、止めとけ」


「最初から傷物だったと言えば良いだろう?」


「殺されたいなら止めはしないさ」


「チッ」


(あの人達何言ってるの?言葉がわからない何処の国の言葉?)

「あの、ここはどこですか?お願い私を出して!助けて!」


「おい、こいつの言葉がわからねぇな 何言ってんだ?」


「さぁな、この国の奴じゃ無いんだろ?俺には関係ない金さえ貰えりゃいい」


「全くツマラねぇ奴だなお前はよぉ……そうだ!こいつにあの化け物の世話させようぜ、俺はもうあいつの世話はしたくねぇ気味悪りぃ」


「それはお前にしては名案かもしれないな俺も賛成だ」


「よし、決まりだな!おい、女出てこい」

(手招きしてる。出て良いのかな?)


私は恐る恐る外に出てみた 。

右足に巻かれた鎖が重い薄暗い石畳の道を両脇を取られ引きずられるように歩かされるその先に鉄の扉が見えてくる。


「おい、今日からお前はこの中に居る化け物の世話をしろ!いいな」


「何?何言ってるのかわからないのよ」


そう言ったそばから突き飛ばされ牢の中に入れられた。

そして、桶と布を渡され男の人は壁を指差して何やら呟き出て行った。


「何なの?これで何をしろと言うの?何を言ってるのかわからないのよ」

私は男の人が指差した方を見るとそこには人影が


「ひっ!……誰か居るの?」


「……………ヴッ」


怖い、誰か居るのはわかるけど暗くてよく見えない。恐怖で直視する事が出来ない


「§∂∋∝〻」


「な、何?わかんない!何言ってるの?嫌ぁここどこ?私を出して帰してお願い」


私はドアを叩きながら叫んだ 「 怖い 怖い 怖い 誰か助けて!」


「§∂∋∝〻」


「だから私言葉がわからないのよ!止めて怖い」私は耳を抑えながらしゃがみこむ


「⊇£≒§∂∋∝〻」


壁際に何かが居る気配がするけれど、この部屋の夜の暗さに慣れない目はまだ何も見えなくて、余計に恐怖を掻き立てている。

しばらくして落ち着いてきた私はドアの前で座り込むと、足を抱え声のする方を観察する事にした。


何かを話し掛けて居るのだろうけれど私には彼の発する言葉が理解出来なかった。

少しずつ暗闇に慣れ始めた目線の先を上に持って行くと、どうやら彼の手は天井から吊らされた鎖で繋がれて居るらしいという事がわかった。


(さっきからするこれって血の匂い?私の?それとも彼の?)


鎖で繋がれている安心感から私は彼のそばにゆっくりと中腰に成りながらも近寄り確かめてみる事にする。

その時、鉄格子のはまった窓から雲を割って月の光が差し込み彼を照らし出したのだ。


(な、何……)私は彼のその余りの美しさに見惚れてしまった。


「何でこんな所で鎖に繋がれているの?」


引き寄せられるように彼に近付くと、そっとその顔にかかったプラチナブロンドの髪を手に取り横にずらすと彼のその美しい顔をじっと見つめた……。


(なんて綺麗な人、月の光で髪の毛がキラキラ光り輝いてる……人だよね?目開けないかな?どんな瞳をしているんだろう?)


そう考えていた次の瞬間 閉じられていたその目が急に開いたと思ったら……


彼は私にキスをした☆


「な、何するの!」(嘘!ファーストキスなのに血の味だなんて勘弁してよ)


「これで、俺の言葉がわかるか?」


「え?」


「すまない、水をくれ」


「み、水?……飲み水どこですか?」


「その、桶」


「え?これ?こんなの飲めないでしょ?他に無いの?」


「それしか無い、それで良い」


「わ、わかった」私は掌で水をすくい彼の口元に運んで飲ませる。

彼の薄い綺麗な口が私の指先に触れるとドキドキと鳴る鼓動が耳にまで聞こえそうなほど高鳴った。


(本当になんて美しい人なの?そもそも人なの?こんなに綺麗な人この世に居るんだ)


「すまない、ありがとう助かった。気持ち悪かっただろう?」


「え?別に気持ち悪くは無いですけど……」


「俺が気持ち悪く無いのか?すまない目が………悪かったのか?」


「えぇ?どうしてそうなるの?」


「俺は………醜いだろ?」


「え?美しいとは思うけど…そんな醜いだなんて思わないわよ。それに私目は良い方よ」


「そうか」


「それより、どうして急に言葉がわかるようになったのかな?」


「それは俺が口移しで言葉を教えたからだ」


「な、え?それってさっきのやつ?」


「そうだ」


「そ、そうなんだ。ん?待ってそんな簡単に言葉って覚えられる物なの?違うわよね?って言うかここがどこかもわからないし、そもそも私どうして牢に居るんだろう?」


「お前はこの国の人間では無いのか?」


「多分違うと思う。私の国にこんな場所は無いと思うけど、外に出てみないとわからないわ」


「お前は不思議だな、俺が怖くないのか?ここがどこかもわからないのに落ち着いている」


「落ち着いてなんていないわ、ただまだ何もわからなくて戸惑って居るだけ。それに、何故貴方が怖いとか、醜いとか思われるのか私にはわからないだけ」


「この国も、他の国でも俺の様な顔は醜いらしい。二重の切れ上がった眼に薄い唇、高い鼻どれを取っても気味が悪い。確かに水に映る俺の顔は醜い……ここの牢番の方がよっぽど美しい男だったろう?」


「何言ってるのそれって自慢?どう見たって貴方の方が……さっきの二人は普通とそれ以下?」


「お前の感性は可笑しいのか?俺を醜いと言わなかったのはお前くらいだ」


「失礼ね、私の感性は普通よ……多分?それにさっきからお前お前って。私にはちゃんと相田絵里子って名前があるのよ今自己紹介したばかりだけど」


「フッ、そうか相田絵里子か 俺の名はアーデンハルトだ。下の名は言えないが……そうだなアーデンで良い」


「アーデンハルト、アーデンねわかった。私は絵里子で、ところでどうして鎖で繋がれてるの?何か悪さでもしたの?」


「いや、俺が魔族だからだ」


「え?魔族ってあの漫画とかアニメとかで見る魔物の?」


「それが何かは分からないが、俺は魔物では無い。魔族とは魔法を使える種族の事だ」


「魔法?はぁ?魔法ですって!そんな馬鹿な」


「そうだな、魔族は滅んだ事になって居る」


「ちょ、ちょっと待って何?アーデンは魔法使いって事なの?」


「そうだ」


「そんな馬鹿な!この世に魔法使いがいる訳無いでしょ?嘘つかないで」


「嘘では無い。現に絵里子はこの国の言葉を話せるように成ったではないか」


「そ、それはそうだけど。でも待って御免なさいまだ信じられないの」


「それは当たり前だ魔族はもうこの世に2人しか存在しないのだから」

そう呟いた彼は窓の外の月を見つめている。


そして私はこの時この世界がわたしの知っている世界では無いと言う事をまだ知らなかったのです。




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