迷惑な世界
「楓って誰だよ」
「……は?」
思わず声が出た。すると雷も、
「楓って誰?火珠也の知り合い?」
「いや待って待って、ちょっとまって。」
2人の会話を止める。
「は?いや、え?お前ら楓の事覚えてないの…?」
そうは言ったがここは違う世界なのだから覚えてなくても不思議ではない…のか?
「いや覚えてるも何もあった事すらないよ。なに、そいつも魔道士なの?」
「火珠也が俺たち以外の友達作るって珍しくない?どんな人なの?」
俺は普段一緒にいる2人に対し、少し気持ち悪さを感じた。
「あー、うん、なんでもない。」
「あ、そう?お前今なにしてんの。」
「うん散歩だよ。散歩」
上の空でそんな話をしていると、向こうの方に楓が見えた。
「どうしたんだ?向こうの方見て。」
和泉の言葉に対して俺は、
「ちょっとごめん用事思い出したから、またね。」
「あ、おい!」
火珠也が去った後、和泉が一言。
「楓って、うちの学校にいた気が…いや気のせいか…?」
「俺楓ってやつどっかで聞いたぞ。」
向こうに楓が見えた気がする。いや、あれは確実に楓だった。街中を走っていくと、
「いた…」
道をノロノロと歩いている楓がいた。
思い返せばおかしかった。この世界で初めてあった時、あいつは何故か敬語だった。もしかしたらあいつは和泉や雷、なんだったら俺のことも知らないのかもしれない。
「あの!」
楓に声をかけてみた。すると楓はこっちに気がつく。
「あ、さっきの…」
どうやらさっき俺の顔は覚えてたようだ。
「さっき、大丈夫だったか?」
普段のくせでタメ語で話してしまった。やっちまった、そう思ってたら、
「あ、え、っと大丈夫です!それより助けて貰ったのに何も言えなくてすみませんでした。」
謝罪してきた。間違いない。こいつ俺のことも知らないようだ。
「あ、いえいえ。こっちも馴れ馴れしくてすみませんでした。初対面なのに…」
「あ、いえ!急に名前を呼ばれてびっくりしただけです。」
何となく、この後の質問が予想出来た。嫌な予感がする。
「なんで僕の名前知ってたんですか?」
あ、ほら、どうしよう。どうやって言い訳しよう。
そんなことを考えてる時だった。
「いやがった!さっきの術師!」
聞き覚えのある声が…そう、さっきの楓に絡んでた不良たちだった。