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現代的男女同権ハーレム 列伝2  作者: 今谷とーしろー
12/31

御曹司と合コン

 神林希総は異母兄御堂春真をダブルデートに誘った。

「俺に何の相談があるんだ?」

 女性二人が到着する前に、春真が訊いた。

「兄さん、合コンって経験ありますか?」

「ん、俺が美紗緒と知り合ったのも広い意味では合コンだけど」

 と笑いつつ、

「美紗緒と知り合う前に一度だけあるよ。あれは二年の秋だったか」


「合コンに協力してくれないか?」

 春真は学友の碇大輔にこう持ち掛けられた。普段なら即決で断る所なのだが、相手はF女大のお嬢様だと言う。

「御堂の御曹司であるお前ならお嬢様が喜びそうな店を知っていると思って」

 詳細を訊くと、碇の幼馴染がF女大に進んで、そこで知り合った友人を紹介すると言うのだ。

「F女イコールお嬢様ではないけどねえ」

 と希総。

「俺もそう言ったんだが」

「それで?」

「お前も知っている、あの店を貸し切りで押さえた」

「うちのお客様の、料理が売りのライブハウスだね」

 前の経営者が高齢で閉めることにした所に、店を持ちたいと思っていたシェフが手を挙げた。通常営業時には入場時にワンドリンク三千円。料理については閉店後にバンドが行う打ち上げで提供される。ある意味で裏メニューである。

 ステージに立つバンドはメジャーデビュー前の新人でノーギャラ。これを送り込んでいるのが春真である。彼が管理を任されている劇場の地下ステージで一定の評価を得たバンドが、客の中に混ざっている業界関係者に自分たちの演奏をアピールする場として使われているのである。打ち上げではステージを見ていた業界人との契約交渉が行われて、成立すれば支払いは彼ら持ちになる。うわさを聞き付けた地方のアマチュアバンドが金を払うからステージに立たせてくれと言ってくる場合もあると言う。

「会費は男性陣が一万円で女性陣からは五千円を徴収した」

「まあ妥当な線だね」

 碇は女性から金を取ることに疑問を呈したが、

「本物のお嬢さまなら、金で落とすのは不可能だぞ。少なくともお前たちでは」

 と言ったら納得した。

 当日は予約した店の入り口に現地集合。料理はバイキング方式で、ドリンクは最初の一杯は無料、二杯目からは追加料金と説明して会費を徴収。女性陣は例の幼馴染が代表して事前に集めていて、それを封筒に入れて差し出してきた。

 店は階段を降りたところにあるライブハウス。ステージと客席が同じくらいの広さで、キャパは立ち見なら二十名ほどか。テーブルに並べられた料理は食べ放題だが、ステージの上にドリンクバーが用意されていて、まずは最初のワンドリンクをそこで受け取る。

 そこまでは良かったのだが、ステージの中央に立派なグランドピアノが置かれていた。

「そんなものが有ったんだね」

 と希総。

「あまり使っていなかったらしくて二年ほど調律して居なかったらしい」

 合コンだと聞いたマスターが気を利かせて奥から引っ張り出してきたらしい。

「その後の展開が読めてきたよ」

 まずは女性陣から自己紹介を受けたが、

「高城富希ですわ」

 とロングヘアーの美女。

「仲本このみです」

 メガネっ子。

「新居千穂」

 と不愛想な子。

「僕は加藤薫子だよ」

 ボーイッシュな子。この子が女性陣の幹事役を務めていた碇の幼馴染である。

「志村ケイト。母がフランス人です」

 金髪で縦ロール。

 一方の男性陣だが、碇が春真と同じ文系の政治経済学部で、後の三人は理系である。メガネを掛けた秋月が碇の高校の同級生で、残る二人は大学で知り合った。長髪で細身が雪村、恰幅が良いのが花澤と言う。全員百八十以上の長身で、見栄えも悪くない。普段はもっとラフな格好をしているが、今日は気合の入った服装をしている。

「ロングヘアーは母の実家と取引のある宝石商の娘、メガネ娘は我が家と競合するスポーツ系衣料品メーカーのご令嬢。この二人とはパーティーで遭遇したことがあった。不愛想な子は与党代議士の孫娘で、金髪の父親はうちの大学の仏文科教授。こちらの二人は直接会うのは初めてだったな」

「僕も高城宝飾の御嬢さんは知っている。あと新居元代議士のお孫さんとは面識があるよ」

 総一郎が女性たちに贈った宝石を購入したのが高城宝飾だった。

「新居のじいさんは、今回の選挙には出ずに引退したんだっけ?」

「機を見るに敏。ではなくて、元々次の選挙には出ないと明言していたからね」

 後継候補には息子、つまりは千穂嬢の父親では無くて長年仕えていた秘書が出たが、青年党系の候補に惜敗した。

「新居先生のご実家って確か関西系の」

「うん。美紗緒の実家とも遠い縁戚関係だね」

 新居代議士が政界引退を決意したのは、春真と美紗緒の婚姻が切っ掛けなのだろう。

「高城のお嬢様と教授の娘さんは付属上がりだけれど、別グループで知り合ったのは大学らしい。このみは中学受験で落ちて都立の中高一貫女子高から」

「むしろその方が学力レベルは高いよね」

「もっと上の大学も行けたはずだけれど、家が資産家だから学歴に拘りが無いらしい」

 お嬢様に取って大学選びで重要な点は学歴よりも人脈になる。春真の母真冬や、その一級上の神林希代乃が学生時代に築いた人脈はその後の仕事にも十二分に生かされている。

「五人は同じテニスサークルで」

 サークルとは言うが、F女大のテニス部は結構な強豪である。碇は都立のテニス強豪校出身で、その幼馴染は補欠ながらもインハイに出場した実力者だったので、自然に五人組を纏める存在になったらしい。

「この後、高城嬢にピアノの演奏をせがまれて」

 調律に納得できなくて、財団から自分の道具を持って来させて軽く調律を始めた春真。

「それでやらかしたんですね」

 いつものルーティーンで指慣らしのためにリストの超絶技巧練習曲の一つを弾き始めた。

「流石にやばいと思って、円舞曲を引いてダンスパーティへ持ち込んだのだけれど」

 ピアノだけでは間が持たなくて、

「ピアノを高城嬢に任せて俺は用意していたバイオリンに切り替えた」

「それだと、ピアノが無くても結果は一緒でしたね」

 行きつくところは御堂春真の個人リサイタルだ。

「結局どうなったんですか?」

 と希総。

「碇は、結局幼馴染と付き合う事に成った」

 薫子の実家は自営業で、かなり広い意味でお嬢様と言えなくもない。

「碇はお嬢様と言うものに偏ったイメージを持っていたらしいが、本物をみて妄想から解放されたらしい」

「その幼馴染も、それが狙いだったのかもね」

 と希総に言われ、

「その視点は無かったな」

 残りの他の参加者はグループリングを作って、グループ交際から始めたが、その後どうなったかは判らない。

「それで、お前の話と言うのは?」

「それは二人が来てからにしましょう」

「なんだ。二人が居ては話しにくいのかと思ったのに」

「それなら初めから兄さんだけを誘いますよ」

「それもそうだな」

「でも、兄さんの体験談は参考になりました」

 希総の婚約者片桐掟と春真の妻美紗緒が合流して、予約していた料亭の個室に移動した。

「それで、バレー部で何かあったの?」

 と掟が切り出す。

「え、なんでわかったんですか?」

「私だけでも、春真君だけでもなく、両方を呼んだからよ」

「怖いなあ」

 と春真がぽつり。

「実はうちの部の若い部員数名が女子大生との合コンに参加したらしい」

「それって、駄目なの?」

 と美紗緒が首を傾げる。

「そうねえ。希総君が入部する際に、合コン禁止の申し合わせはしたけど」

 と掟。

「合コンそれ自体を悪いとは言いませんけど。問題なのは、彼らがT大バレー部であることを自慢げに吹聴していた事です」

 二年前なら自慢話にはならなかった。この二年間に先輩が築き上げた実績があってこその話である。

「当時の部員は強くなることを目的としていたけれど、強くなった後に入った下の学年にはそれが手段になったのね」

「別に強くなることがモテるための手段であっても良いけれど、彼らはまだ部の戦力に成れていない」

 こうして実際に言葉にすることで、希総は自分が何に対して憤っていたかが整理できた。

「これは近親憎悪だな」

 彼らは自分の実績ではなく先輩の打ち立てた実績を借りてモテようとした。それは神林の御曹司としての看板を背負いつつ、まだ何の実績も無い希総自身にも通じる。まだ学生なのだからそこまで気負わなくてもと周囲は言うだろうが、母の希代乃は高校生の事から株式で利益を上げ、結果として手に入れた破綻企業をいくつも再生させた実績を持っていた。

「まあ潮時じゃないのか」

 と春真。

「どうせお前はもう公式戦には出ないんだろう」

 希総の祖父が協会の会長に成ったので、妙な忖度が働かないように公式戦からは身を引くつもりだった。

「そうですね」

「お話が終わったのなら、食べましょう」

 と美紗緒。


 翌日、練習の冒頭で、

「合コンは楽しかったかい?」

 希総は整列する部員たちを前にそう切り出した。ほとんどの部員はキョトンとしているが、一部の身に覚えがある部員は下を向いた。

「心配しなくても、僕に部員を辞めさせる権限はない。僕に出来るのは自分の身を処するだけ」

 希総はそう言って主将に退部届を差し出すと、軽く会釈して悠然と立ち去った。退部を事前に聞いていた主将はこれを黙って受け取るしかなかった。

 希総はその足でかつて袂を分かったバレー同好会へ参加した。分離後も定期的に交流があったので、特に抵抗もなく、むしろ歓迎を受けた。同好会の活動は週一だが、管理業務の方が多かった希総としてはむしろ練習時間が増えたくらいだ。

「どうして同好会に来たんですか?」

 と訊かれて、

「勝つためのバレーはやり尽くしたから、今度は君たちの楽しむためのバレーを体験しておこうと思ってね」

 と答える希総。

「逆に訊くけれど、君達にとって楽しいバレーとはどんなものだい?」

 様々な意見が出たが、

「僕の答えは極めてシンプルで、楽しいバレーは勝てるバレーだ」

「勝つためのバレーと勝てるバレーとはどこが違うんですか?」

「良い質問だ。勝つためのバレーと言うのは突き詰めると楽しくないんだ」

 と答える。

「勝つためには上手い選手がコートに立つべきで、つまり下手な選手は楽しむ以前の話。楽しむためには最低限の技術が必要。これが僕の言う所の勝てるバレーだ」

「勝つためのバレーと勝てるバレーとはどこが違うんですか?」

「良い質問だ。勝つためのバレーと言うのは突き詰めると楽しくないんだ」

 と答える。

「勝つためには上手い選手がコートに立つべきで、つまり下手な選手は楽しむ以前の話。楽しむためには最低限の技術が必要。これが僕の言う所の勝てるバレーだ」

 その第一段階はサーブレシーブ。これが決まらないと試合に成らない。と言う事で希総の打つサーブをレシーブする練習が始まった。

 いつものジャンプサーブでは触ることも容易でないので、まずは籠手調べに普通のサーブを打ち込む。ジャンプせずとも矩総の無回転サーブは手許で微妙に変化を起こすので取り難い。球速が無いからこそ却って受け手に心理的なダメージを与える事が出来る。案の定、綺麗に返せたのは半分にも満たない。いつもなら徐々に強度を上げていくところだが、今日は逆に手加減を加えて出来る感覚を体験してもらう事にした。

 全員が希総のフローターサーブに慣れ始めた頃、新たな変化を加えた。下から高く打ち上げる、天井サーブである。幸いにもこの体育館は天井が高いので無回転で落ちてくる天井サーブは十分に効果を発揮した。

「アンダーで取り難ければオーバーでも良いですよ」

 と助言する。

「このサーブは習得が容易なのでサーブが苦手な人にはお勧めです。公式戦ではあまり使われませんけど、そこそこ使えます。ここみたいに天井が高いところでは特に」

 全員がサーブに対応できるようになった頃、

「最後に全力で行きますので、自身のある人だけ参加してください」

 そう言って一度全員をコートから出して肩慣らしを始める。ジャンプサーブで右隅と左隅を交互に狙う。先程までとは威力がまるで違うが、希総としてはまだまだ全力では無い。

「本来ならネット前に籠を置いてそこに入ったら合格なんですが、今日の所はコートの内側へ落とせたら終了としましょう」

 コートには後衛の位置に三名が入る。

 一発目は右翼と中央の間を狙う。二人は全く反応出来ず、ラインぎりぎりに落ちる。

「まずは手を出してください」

 と希総。

「その場合に片手ではなく、両手を使う事が重要です」

 片手だけでは、たとえ当たっても後方へ飛ぶ確率が高い。手を組んだ状態で両手を差し出せば少なくとも前へ飛ぶ。サーブレシーブで後ろへ飛ばしたら誰もフォロー出来ないが、前方へ飛べばフォローしてもらえる可能性が残る。

「手が当たる様になったら、次に足を一歩踏み出して体の正面で受ける」

 そこまで出来れば部でもベンチ入り出来るレベルだが。今日の段階では軌道に向かって手が動かせるところまで。


「お騒がせしました」

 学食でランチを摂っていた希総に声を掛けてきたのは後輩の鹿角であった。

「退部者は出さずに済みそうです」

「ご苦労様」

 希総としては穏便に済ませるために犯人(合コン参加者)の名前は伏せた。鹿角には二年生が数名とだけ伝えて事態の収拾を託した。

「君はいつも僕の宿題に想定以上の結果を出してくれる」

 高校時代、新チームの主将に指名した時も、初の全国制覇を成し遂げた。セッターとして試合に出る事よりも、チームの勝利を優先させた結果だ。

「柳原は、先輩の代から正セッターだったのだから、自分はそれを踏襲しただけです」

 と控え目である。

「で、今回の結末は?」

「合コンの企画者が、本人がそう言っているだけですが、自首してきました」

 辞めると言うので止めた。希総が部を去った時点で例の約束は無効だと。

「自分が事件を起こしたのは約束が生きている間だ」

 と法学部の学制らしい主張をしたので、

「それを言うなら、元々罰則規定は無かった筈だ」

 希総は犯人の名前を知った上でそれを明かさなかったのは、辞めさせるなと言うメッセージだ。

「それに、一人のミスを全員でカバーするのがバレーボールだ」

 そう言って納得させた。

「二年生全員を集めて、この件に関する追及をしないように厳命しました」

 合コンに参加した人間を責めるなら、知っていて黙っていた人間も同罪だ。しかしそれをここで言っても仕方がない。

「先輩方の約束は、部を強くするためのモノであって、それが部を弱くしては本末転倒だ」

 希総は拍手して、

「完璧だ」


 六月の東日本インカレが終わると、四年生は引退して新チームへ移行する。主将に就任した梅谷が挨拶に来た。本人は後輩の鹿角へ繋ぐ中継ぎだと謙遜するが、彼のブロッカーとしての評価は高く、大学の有名な門にちなんで”レッドゲートキーパー”と呼ばれる。

「同好会と交流試合をやりたいのですが」

「うちとでは勝負にならないだろう」

「こちらは一二年だけを使いますから」

 一二年生だけと言っても、二年の鹿角は新チームの正セッターの有力候補であり、一年にはやはり南高出身の長身ブロッカー八橋がいる。梅谷よりは若干低いが、腕が長く、細身故に最高到達点ではほぼ互角と言う文字通りの大型新人。バレーは高校からで、つまりは三年のキャリアがある。

「あの二人、入部当時の神林と梅谷のコンビを彷彿とさせるな」

 と会長。

「二人だけで、当時の先輩方を撃破していたっけ」

「そんなこともありましたねえ」

 同好会には引退と言うシステムは無く、四年生は既に卒業後の進路も決まっているので普通に参加している。

「張り切り過ぎて怪我をしないように注意してくださいね」

 第一セットは希総はベンチで様子を見ていたが、予想通り歯が立たない。特に鹿角と八橋だけで半分の点を叩き出された。

「鹿角の実力は想定の範囲内だけれど、八橋は思った以上に成長しているな」

 高校入学当時、全くの素人だった八橋を合同トライアウトで指名したのが希総としては感慨も一入であるが、

「これは、希総君が出ないと試合に成らないわね」

「何故ここにいるんですか、滝川さん」

「先生のお供で来たのだけど、体育館で面白そうなことをしていると聞きつけて」

 滝川千種。在学中は希総のサポートをしていたので、部の三四年には顔を知られているが、一二年は初見だ。その当時世話に成った上級生たちは直立不動で出迎えている。今は希総の異母兄瀬尾矩総の政策秘書をしており、先生とはもちろん矩総の事である。

「兄さんは何をしに大学へ?」

「昔の恩師に直談判を」

 憲法改正の素案が出来つつあり、憲法学の権威であった法学部の教授に協力を要請しているらしい。

「上手く行きそうですか?」

「五分五分でしょうね」

 憲法学者が挙って抵抗しても、国会での発議は時間の問題なので、協力要請と言うよりは降伏勧告と言うのが正しいだろう。

「それよりも、コートに出るならベンチの方は引き受けるけれど」

「お願いします」

 希総は操作していたノートパソコンを千種に渡した。そこには敵味方のデータが入っているのだが、更に四方に設置したカメラによる分析データもリアルタイムで収集されて更新されていく。同好会にはこれを読み解いて活用できる人材が居ない。

 ベンチワークとデータ分析を千種に任せてコートに立った希総。そのサーブから第二セットが開始する。

 希総が全力で打てば、取れる選手はほとんどいない。勝つためならそれで良いのだが、それでは味方が楽しめない。よってぎりぎり拾える程度に出力を調整して放った。サーブレシーブが乱れた時、セッターがそれをどう捌くか。技術は十分だが、実戦経験の足りない鹿角への試練である。

 セッターとしての能力だけなら希総と鹿角はほぼ互角。だが第二セットを取ったのは同好会だった。違いはサーブの威力、だけではない。鹿角は拙い味方のサーブレシーブを巧みにカバーしていたが、希総は後衛では敵のサーブを自ら拾う。そして対角に居る二人目のセッターを使って攻撃させた。リベロ並のレシーブ力に加えて、後衛ではバックアタックも見せる。まさに獅子奮迅の活躍である。

 そして第三セットは双方が申し合わせたように、今まで出ていなかった選手を投入した。これは是が非でも勝たなければいけない試合ではなく、あくまでも交流戦なのだから。

「私はそろそろ戻るわね」

 言ってノートパソコンを返して千種は帰っていった。

「あの美女は何者なんですか?」

 と質問が殺到する。

「居る間に訊けばいいのに」

 と苦笑する希総。

「と言うか、ここに座っていたんだから話しかければよかったのに」

「そんな雰囲気では無かったから」

 普段の千種は割とほんわかした癒し系なのだが、仕事モードだときりっとしている。

「彼女は僕が一年の頃に電脳研から出向していた人で、今は兄の政策秘書をしている」

「兄と言うと、あの瀬尾議員?」

「ああ総理の息子の」

 それを言ったら希総も総理の息子なのだが。

「だから官僚コースの先輩方はいずれ仕事で出会うかもね」







元々別だった短い話を繋いだものです。

結果として前半(春真の話)を削って、後半(希総の話)が増えました。

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