プロローグ
※感想や意見をいただけると、すももは大変喜びます。
※R1.8.15 皆様からの御意見を踏まえて、内容を最初から大幅に修正しました。本当に参考になりました。ありがとうございます。
※小説のトップ画はお友達のユノさんに描いていただきました。本当に翡翠が可愛くてきゅんきゅんです。ありがとう。
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「ねぇ、私も1つ法律相談していい?」
翡翠先輩が解決できなくて、僕が解決できる相談など存在しないだろうと思いながらも、
「僕で解決できるような相談ならいくらでも受けますよ」
僕は並んで歩く翡翠先輩を横目で捉えながら、笑って答える。
「私ね……人を殺したの」
唐突すぎる言葉に、僕は自分の耳を疑った。
驚いて彼女の方に目を向けると、真っ直ぐと前を向いている翡翠先輩は、目に大粒の涙を浮かべていた。
この言葉、一度聞いたことがある。
彼女からこの言葉を聞くのは今日で2回目だ。
僕はそのときの情景を鮮明に覚えていた。
なぜならば、この言葉自体が衝撃的な言葉であることは置いておいて、あまりにも僕にとって身近な言葉だったからだ。
「翡翠先輩? また冗談なんか言って」
「冗談なんかじゃないよ」
「翡翠先輩に人は殺せないよ」
「私はただの偽善者なの。教えてよ。翔斗くん。私の罪は何罪なの。私はどうやって罪を償えばいいの」
翡翠先輩は立ち止まって顔を両手で覆うと、足から崩れるように泣き崩れた。
僕は翡翠先輩が地面に崩れ落ちる間一髪のところで彼女を抱き抱える。
僕が隣にいなければ、本当に翡翠先輩は地面に崩れ落ちていただろう。
それくらい僕の腕は翡翠先輩の頭の重さをずっしりと感じている。
彼女は僕の膝で泣いた。
それはもう人目を憚ることなく、子供のように。
その涙は、悲しく、切なく、そして、冷たかった。
僕はただ彼女の頭を撫でることしかできなかった。