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夢で逢いましょう!!!  作者: おっさん
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第二十五話

44

これまでの事件の元凶ともいえる内藤さおりとその母、ゆかりは宏と由香に自分たちの心に巣食う夢魔の存在を見破られたことに驚きを隠さなかった。


「あの子たちが気付くなんてね……私たち闇に」


だが、そう言った母のゆかりには余裕があった。


「でも手は打ってあるわ、あの子たちが何を言おうとも、つぶせるようにね」


 ゆかりは宏と由香、そしてその父親をつぶすべく工作をすでに開始していた。教育委員会、地元警察、政財界などコネのあるところはすべておさえていた。


「現状であの親子を信じる勢力はないわ。つぶれるのは時間の問題よ」


ゆかりがそう言うとさおりはシレッとした表情を見せた。


「ママがやりすぎたんだから、自分で始末を付けるのは当たり前でしょ。伊藤って刑事を使って遺書を盗ませたりするんだから……」


さおりがそう言うとゆかりは目を細めた。


「あら、わざとフルートを落とすように中島絵里にけしかけたのは誰だっけ、副島先生と口裏をあわせして『虐め』を隠ぺいしようとしたのは?」


母のゆかりは続けた。


「優等生のあなたが虐めの主犯だって誰もきづかなかったでしょうね……見えない所から糸を引いてたんだから。」


母のゆかりは実に悪魔的な微笑みを見せた。だが、それに対してさおりは何食わぬ顔で切り返した。


「何言ってんの、ママが悪いんでしょ。もとはママの癇癪から始まったんだから。」


さおりがそう言うとゆかりは不愉快な顔を浮かべた。


「しょうがないでしょ、あの女が悪いんだから、有名なフルート奏者とか言ってたけど、私に挨拶もないし、敬意も払わないし…」


ゆかりはそう言うと額に青筋を立てた


「『地方の名士くらいで気取るんじゃない』って感じで接してくるあの女の態度、許せないのよね!」


 さおりの母、ゆかりには異様な高慢さがあり、自分に対する他人の態度には異常なこだわりを見せた。そこには地方小都市を統べる支配者としての歪んだ精神性が如実に表れていた。そしてその異常性は有名交響楽団のフルート奏者である中島美紀の母に異常な敵愾心を持たせていた。


「笛しかふけないくせに、生意気なのよ、あの女。でも子供が死んでちょっとはわかったんじゃないかしら」


 子供を失って苦しむ中島美紀の母親に思いをはせた内藤ゆかりは口角をあげて嗤った。そこには人としての倫理観など微塵もなかった。


「あんただって、同じでしょ。『進学したい』って言ってた音大付属の高校を中島美紀が推薦でとったからいけなくなったって……つらそうな顔をして私に泣きついてきたじゃない」


言われたさおりは黙った。


「虐めた末にあの子が事故で死んだときは手をたたいて喜んでたのは誰だっけ?」


 母のゆかりがそう言うとさおりは口をとがらせた。その顔には母の言葉を否定するような表情が浮かんでいる……だがその眼は嗤っていた……


「まあ、いいわ……とにかくあの二人を潰してしまいましょう。邪魔なものは排除しないとね」


母のゆかりが朗らかに言うとさおりも同意する姿勢を見せた。


                                    *


そんな時である、さおりの持っていたスマホにメールが着信した。


『なんだろ……』


さおりがそう思い中身を確認した時である、彼女の顔色が変わった。


「何これ……」


その画面には添付された一枚の写真が写っていた。母のゆかりはそれを見ると目くじらを立てた。


「燃やしたはずよ……あるはずない……」


ゆかりは声を震わせた。



45

宏と由香は連絡をまった。


『必ず来る!』


宏の中には確信があった。


『奴らは自分たちの悪行を分かっているはずだ……そしてそれが露見した時のリスクも』


宏はしゃがれた声の言葉を思い出した



≪奴らの心を揺さぶれ、そうすれば隙間ができる。隙間ができれば俺たちの出番だ≫



宏は内藤母娘の精神を揺さぶるために賭けに出ていた。


『かけて来い……』


宏がそう思った時である、宏のスマホに着信があった、画面上には内藤ゆかりと記されている……


宏は大きく息を吐いた。そして由香の見守る中、勝負に出た。


                                   *


『あなた、こんな脅し通用すると思ってるの?』


『脅し……真実を暴露するだけの事です』


宏がそう言うと内藤ゆかりは『その手には乗らない』と言う口調で切り返した。


『あなたが副島先生の遺書を写真で取ったなんて、信じられるわけないでしょ』


『僕は副島先生の自宅に言って、夢魔に苦しめられている姿を見ています。そしてその時、彼女は自殺を仄めかしました。そして先生は死ぬ前に僕に遺書を見せて、それを記録するように言ったんです。何かあった時の『保険』だって言ってました。』


『嘘よ!!』


内藤ゆかりが間髪入れず答えると宏はそれに全く動じない姿勢を見せた。


『副島先生は本当のことを言いたかったんだと思います。あなたたちの事を……』


宏はそう言うと安倍に言われたことを口にした。


『40年前の家事の事、覚えていますか……一人の赤ん坊が生き残った事故のことです。当時はDNA鑑定がない時代で、生き残った赤ん坊の事は科学的には調べられていないはずです。あの赤ちゃんは本当に火事でなくなった内藤さんの血を引いているんでしょうか?』


宏はわざとらしい声を出した。


『確か、当時、内藤家に出入りしていた女中にも赤ちゃんがいたって……僕、あなたたちのDNAに興味があるんです!』


宏がそう言うとゆかりは一瞬の間を置いた。



『何を……言ってるの、あなた……』



宏はさらに畳み掛けた。


『あなたたち親子は背のりなんでしょ、本当の内藤さんの赤ちゃんはとっくに死んでいて』


宏が続けようとすると内藤ゆかりが激高した。



『いいかげんなこと言わないでよ!!!!』



宏はその声色の中にあきらかな『揺らぎ』を読み取った。



『……効いてるんだ……』



宏がそう思った瞬間である、隣で会話を聞いていた由香がうなずいた。そして宏はある行動に出た。



なんと電話をぶち切ったのである。



相手の感情がMAXを迎えた所で一方的に通話を切る……相手にとってはこれほど許しがたい暴挙はないだろう。



「これでいい、これで……」



宏がそう言うと正面にいた由香が頷いた。


                                    *


2人が考えた作戦は『遺書のねつ造』であった。実際、副島洋子のマンションで宏は遺書を見ていないし、その写真など取っていない……だが宏はそこに光明を見出していた。


 そして、もう一つ、安倍の言った『背のり』の話である。彼らの触れられたくない過去を展開することで内藤母娘の精神にプレッシャーををかけたのである。他人の不幸を嘲笑うことはできても自分たちに関わる秘密を知られることは、内藤母娘にとって打撃になると宏は考えたのだ。



『まともな手段をとる必要はない……』



 一種の賭けといっていい作戦だが相手の精神を揺さぶるためには正攻法を取る必要はないと宏と由香は判断していた……

 

                                    *


そして、しばし……宏のもとに再び着信があった。



――だが、宏はそれに出なかった――



長いコールの後、電話は切れたが宏はそれに目もくれなかった。目をつぶったまま微動だにしない…



そしてふたたび着信、



――だが、宏はそれにも出なかった――



『さあ、かけてこい、もっとだ!』


宏が心の中でそう思った時である、再び着信があった。


――だが宏はスマホに手も延ばさなかった――


『これでいい……これで』


 相手への揺さぶり、それは『沈黙』である。コンタクトできないことで相手の精神を追い詰める……それこそがこの戦術の核であった。


そしてこのやり取りが30分ほど続いた時である、宏のもとに可憐な少女が現れた。



『よくやった、宏!』



少女はそう言うと宏に笑いかけた。だがその笑みの中にある闇を宏は見逃さなかった。



『これから、始まるんだ……最後の戦いが……』



宏と由香は確信した。




逆転の発想により、追い詰められた宏と由香は反撃を試みます。


夢魔の根となる内藤さおりとゆかりに対して『遺書のねつ造』と『40年前の火事』を持ち出して、彼ら心を揺さぶったのです。


さて、次回はどうなるのでしょうか?(クライマックスになります)

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