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夢で逢いましょう!!!  作者: おっさん
21/28

第二十話

38

病院の入り口に立ったときである、宏は不愉快な感覚に襲われた。


『これ、夢の中で感じた時と同じだ……でもここは現実で……実在する場所なのに』


宏がそう思った時である、隣に可憐な少女が立っていた。


『宏、ここはもう侵食されてる。夢と現実の境がなくなってる……由香の残り香もあるな』


少女が乾いた口調でそう言うとしゃがれた声が続いた。


『夢魔に侵された少女たちが共鳴したんだろうな……よくあることだ』


しゃがれた声が淡々と言うといつの間にか現れた少女がダブルバレルショットガンに弾を込めた。


『ここで待っていろ』


少女はそう言うと悪魔の微笑を見せて病院内に入って行った。


宏はその背中を眺めた瞬間、一つの核心が生まれた。



『この勝負……勝ちだ』



何の根拠もなかったが宏はそう確信した。


                                    *


 ショットガンの爆裂音が立てつづけに病院内に木霊する。時折、閃光が宏の眼に飛び込んできた。

宏には炸裂する光弾が花火のように見えた。不謹慎ながらも夢魔が少女により殺戮されている様は美しいとさえ思えた。


『あの娘……一体、誰なんだろ……』


宏がそう思った瞬間である、あたりの雰囲気が変わり病院内の空気がピンと張りつめた。


そして……一際、甲高い銃声が宏の耳に飛び込んできた。


宏は瞬間、思った。



『終わったんだ……』



 宏は夢魔により侵食された空間が夢世界と現実とに分かれていくのを感じた。空間が歪み、時にひしゃげ、日常の色彩が戻り出す。時計の針が時を刻み、空気の色が変わっていく。


『現実に戻り始めたんだ……』


宏がそう思った時である、しゃがれた声がいつもの口調で声をかけてきた。


『わかるようになったじゃねぇか、宏』


一仕事終えたあとの建設作業員が一服するような口調であった。


『そこそこ稼がせてもらった……』


しゃがれた声が満足そうに言うと宏は気になる質問をぶつけた。


「由香はどうなったんですか!」


宏が尋ねるとしゃがれた声が反応した。


『ここにはいないな……どこかに移動したんだろ……』


宏はさらに質問を続けた。


今回の一件は絵里って子を宿主にした夢魔が再び、引き起こしたんですか」


宏がそう言うとしゃがれた声は『違う』と即答した。そしていつのまにやら現れた少女がその質問に答えた。


『今回の核になった夢魔は絵里じゃない……その親だ』


宏はまさかの言葉に息をのんだ。


『今回は絵里の親に夢魔が触手を伸ばしたんだ』


「どういうことですか?」


宏が『訳が分からない……』という顔をするとしゃがれた声が呟いた


『直接聞けばいい、お前の妹のこともわかるかもしれんぞ』


言われた宏は絵里の両親の所に向かうことになった。


                                   *


 絵里の両親は病室の外で廃人のような顔つきで座り込んでいた。眼窩が落ち窪み人としての精気は抜けている。


『深い部分まで夢魔により侵食されていた……だが幸運なことに廃人まで至っていない。』


しゃがれた声がそう言うと宏は絵里の両親に近寄った。


「何があったんですか、おばさん……」


 宏がそう言うと絵里の母は唇をわなわな震わせ涙を流した。一言も口にすることはできなかったがその様は罪悪感と良心の呵責に苛まれているは一目瞭然だった。


『……無理か……話すのは……』


 宏は視線を移し今度は絵里の父親に目を向けた。失禁した父親は宏を見上げるとたどたどしい口調で話し始めた。


「俺が悪いんだ……全部……俺が悪いんだ」


宏はいまにも消えりそうな声で話す絵里の父親の言葉に耳を傾けた。


「会社がかたむいて……社員の給料が払えなくて……それで融通してもらったんだ…………それからだ……要求が始まったのは……」


父親は青白い顔で続けた。


「従うしかなかった……小さな町で助けてもらえば……それは犬になるってことなんだ……そして俺と女房だけじゃなく……いつしか絵里にも……同じことを」


宏は即座に疑問をぶつけた。


「一体何のことですか?」


それに対し父親は相変わらずの様子で続けた。


「あいつは、自分の思うままにすべてを操るんだ。決して自分は表に出ない……人を使って自分の目的を達成する……あいつは……気に喰わない者を排除するんだ!!」


父親がそう言うと今度は母親がかすれた声でうったえた。


「悪魔のなのよ、あいつ……自殺した先生も、私たち家族も、みんな、みんな……おもちゃに……」


 絵里の母親はそう言うと眼を白目に反転させて泡を吹きだした。そしてそれと同時に首をカクンと落とした。宏が目を移すと父親も同じ状態で気を失っていた。


『宏、これが夢魔の本領だ。奴らは夢の中から入りこみ、まともな人間の心を喰うんだよ。そして宿主の精神の均衡を崩して廃人へと導く。』


しゃがれた声のなかには達観した響きがあった。


『苦しむ人間は奴らの糧だ……甘露と言ってもいいだろ。この親子は搾り取られたんだよ』


何の感慨もなくしゃがれた声が言うとショットガンを手にした少女が静かに現れた。


『心の弱さは誰にでもある。だが、一線を越えればこうなるんだ。人としての矜持、それを失えばな!』


少女はその端正な顔で続けた。


『この親は自分たちの生活のために娘を使ったんだよ、そしてその娘は親以上に厳しい状態に陥った……』


言われた宏は思わず唾を飲んだ。


『これが夢魔の功罪だ』


しゃがれた声が淡々と言った時である、可憐な少女が舌なめずりした。


『次の夢魔が出た、お前の妹の息吹も感じるぞ』


「えっ?」


宏がすがるような表情を見せると少女はほくそ笑んだ。


『今日は、欠片が多く手に入りそうだ!』


少女がうれしそうな声でそう言うとしゃがれた声が快活に応えた。


『ああ、大量だ。』


しゃがれた声の持ち主は『ククッ…』と妙な笑いごえをあげた。



39

由香が気付くとそこは暗闇の中であった。両手足は縄により縛られている……


『ここ、どこ……』


恐怖と絶望が襲う中、由香は平静を保とうと必死になった。


『落ち着くの……とにかく落ち着くの……』


 由香は深呼吸して心拍数の上がった心臓をいさめようとした。何度か深呼吸して落ち着いてくると闇にも目が慣れてきて、暗いながらも状況がなんとなくわかってきた。


『地下室……倉庫……そんな感じかな……』


由香は見えない辺りに目を凝らした。


『色々、置いてある……よく見えない……』


由香はそう思うとズボンのポケットをまさぐった


『……駄目だ、スマホがない……』


由香は大きく息を吐くと再び状況を確認するべく今までの事を思い起こした。


『絵里ちゃんの所にさおりちゃんの家の車でいって……その帰り……送ってもらうときに……』


由香は車でのやり取りを思いだすと一つの疑惑が思い浮かんだ。


『……さおりちゃん……もしかして……』


 由香はさおりだけでなくもう一人の存在を思い起こした。それは鈴木絵里が指をさした方向……すなわちドアの向こう側にいた存在である……



『さおりの母親……ゆかり……あの人が……夢魔……』



由香は可憐な少女の言ったことを思い出した。


『近くにいるって……こんな近くに……』


灯台下暗しと言ったものだがまさにその通りであった。


『あたし……全部、話ちゃった……』


 由香はさおりを信じてしまい自分のことは当然ながら、絵里のことや、宏の事、そして可憐な少女の事を話していた。


『……私、また失敗しちゃった……』


由香は自分の言動が軽率であることを今更ながら気づいた。


『最低だよ、私……最低だよ……』


気付くと由香は暗闇の中で涙を流していた。


                                  *


 そんな時である、重々しい音が耳に聞こえてきた。それは金属の扉が開く音であった。由香がその音に耳をやると、急激に視界が明るくなった。暗闇に明かりが灯るとあまりのまぶしさに由香は目を強くつぶった。


「お前か……」


聞きおぼえのある声が由香に投げかけられた。


「今度は妹のほうか、兄弟そろって迷惑な連中だな」


 由香はまだ光に目が慣れていないため相手の顔が確認できなかったが、その声色から男が中年の刑事であることを看破した。


「何で、刑事さんが、こんなとこに!」


由香が震える声でそう言うと伊藤は嗤った。


「いろいろあるんだよ」


伊藤は含蓄のある物言いでそう言うと由香に近寄ってその顎をもった。


「意外と上玉だな……オジサンとニャンニャンするか」


伊藤は下卑た表情を浮かべると、由香のジーパンの中に手を入れようとした。


「おじさん、1人殺しちゃったから、もう怖いものがないんだよね」


伊藤はそう言うと声をあげようとする由香の口をふさいだ。


「君みたいな女の子、大好きなんだよ。若いと肌のハリが違うだろ。」


 伊藤は興奮した面持ちで由香の下半身をまさぐった。その顔は刑事というにはかけ離れた浅ましさがあった。


「生活安全課で素行の悪いガキは見ているけど、君みたいな子はいないからな……」


そう言った伊藤の眼をみた由香は直感的に悟った。


『この人も……夢魔に……』


伊藤の精神はすでにその均衡を崩しスーパーエゴとイドの調節ができなくなっていた。


『理性が飛んでるんだ……』


夢魔に侵食された経験を持つ由香は伊藤の自我が喪失、否、破壊されているとわかった。


人としての尊厳を失い獣道の先に進んだ伊藤は由香の首に手をかけると悦楽感で彩られた表情を見せた。


                      


夢魔の根となる存在がとうとうわかりましたが、由香はさおりの企みにはまり拉致されてしまいます。


さらには、そこに刑事の伊藤が現れます……


この後どうなるのでしょうか……

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