表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第一章[子供の頃は……。]
7/39

007[人探し]

イデアは街に戻ると、松明と水瓶に近寄り、

衣装に飾られた気軽に手を貸してくれる風属性の「水晶」。

蛟の友人「風霊アナクシメネスに属する妖精」の力を借り。

街中の「松明の炎」と「水瓶の中の水」の全てに、

声無き声で語り掛け、イグニスから感じ取ったイメージを乗せ、

「知らないかな?」と、質問する。


「松明の炎」と「水瓶の中の水」が属している属性。

火と水は、自分達に属する愛し子「イデア」の意思を汲み取り、

「松明の炎」と「水瓶の中の水」に返事をさせる。


イデアは何時もの様に、

『ありがとう!』と力を貸してくれた精霊達に御礼を言い。

風属性の「水晶」の道案内で

「捜索対象は」直ぐに発見できたのだが…しかし……。


『あっれぇ~困ったぞ~っと、何て声を掛けたら良いんだろう?』

イデアの目の前には、

イグニスから感じ取ったイメージ通りの2人の大人の背中がある。

イデアは、軽く息を切らしながら、

5人程で固まって歩く厳つ霊の信者らしき人の背を追い、

少しばかり困惑していた。


強く思った事、念じた事を汲み取る「巫女」としての訓練の成果で、

イグニスから感じ取ったイメージ通りの人間は見付けたが、

イメージだけで探していた為、顔が分らず。

2人、どちらが本命の「イグニスの父親」かが分らない。


2人が並んで話していれば、両方の手か服を掴んで、

話し掛けても良かったのだが…世の中上手くいかない……。

そんな位置関係に、オジサン達2人はいない。


その間にその集団は、人気の少ない街の外へと向かって行く。

取敢えずイデアは、急いでその集団の真後ろまで行き、

大声で「イグニスのお父さん!」って叫んでみようか?等と、

密かに思っていたら、

集団の真ん中の方で歩いていた候補の一人が突然、振り返り、

続いて全員がイデアを囲う様に動いた。


突然の事でびっくりしたイデアだが……。

最初に振り返った人を中心に、相手の方が何故だか、とっても、

心底、驚いた様子だったのに注目する。

「何だか、人気の無い場所に誘い込まれちゃったみたいだけど…

誘い込みたい対象が、私ではなかったのかな?

何だか、オジサン達……。凄く困っている様に見えるのは、

私の気の所為ではないよね?」と、警戒心より、何となく、

イデアは申し訳なさを抱いてしまう。


因みにグロブスは、この時……。

多分きっと、グロブスの部下達も全員、同じ様に、

「失敗した!」と本気で後悔していた。


目の前には、行商団の団長グロブスの所の5歳の娘と同年代の幼女。

一見、不安そうな顔をしたイデアが、キョロキョロしながら、

自らを取り囲む大人達の顔色を見ている様子が見て取れる。


実際の所、イデアは・・・

「松明の炎」と「水瓶の中の水」が教えてくれ、

風属性の「水晶」が示した「イグニスの父親」かもしれない。

その候補のもう一人を捜していただけなのだが……。

グロブス達は、そんな事、全く知らない。


グロブス以外の大人達は、

「ヤバッ…何時もの癖で、脅す様に取り囲んじまった!

コイツ、団長の息子さんのお気に入りじゃねぇ~か!

確認してから取り囲めば良かった……。」等と、

それぞれが知る5歳児が、

「今の状況に置かれたらどうなるか?」を連想し、

「怖がって泣き出したら……。」という不安の中、たじろぐ。


グロブスも、娘のシナーピを思い浮かべ、

内心、動揺したのだが……。イデアの様子を細かく観察し、

「あれ?コイツ、ちっとも怖がってねぇ~でやんの…

意外と肝の据わったガキなんだな……。って、そう言えば、

最初に見た、このガキの舞台デビューの時にですら、

俺らん所の馬鹿なゴロツキに襲われてたよな?

髪色だけでも、値打ちの高いガキだし、

頻繁にそう言う目に遭ってる可能性があるよな、

それで、トラウマを通り越して慣れてたりする可能性が……。

無きにしも非ず、なのか?」と思考を巡らしてから、

グロブスは最初の見立ての間違いに気付いて、脱力し、

大きく溜息を吐き……。


遠征の度に顔を忘れられて、父親であるグロブスを見て泣く、

自分の娘「シナーピ」を再び思い出してしまい。

グロブスは、軽く深呼吸してから、気を取り直す。

これまでの経験で、グロブスは・・・

娘のシナーピが自分に慣れた風に見え、嬉しくなって抱き上げ、

何度、大泣きされた事だろう。


グロブスは自分の見立てより、経験を考慮する事にする。

そして、細心の注意を払い、

部下に少し下がっている様に密かに支持を出してから、

「ここで油断したら負けだ!野生動物を相手にしていると思え!

今まで、何度も、シナーピに泣かれてきた事を思い出すのだ!」と、

自分に念じ、言い聞かせ、「急に近付き過ぎない事」を始め、

「適切な距離」と「自然な笑顔」を心掛け、

イデアに目線を合わせる為、警戒されない様にゆっくり踞んでから、

怖がらせない様な声色で、『お譲ちゃん、俺等に何か用事か?』と、

イデアに話し掛けた。


イデアの方はと言うと、相手の気持ち、我、関せず。

話し掛けて来た人の顔とその声とが何となく、

イグニスを連想させるモノだったので、一人、内心喜んで、

「取敢えず……。

初対面の人には、笑顔で挨拶と自己紹介だったよね?」と、

両親からの言い付けを思い出し、営業スマイルで、

『こんばんは!御存知かもしれませんが、

ワタクシ、蛟様の巫女をしている「イデア」と、申します。』と、

両親仕込みの短い挨拶をする。


グロブスの方は、想定外な丁寧な応対に冷や汗を掻き、

『あ…え?…うん…あぁ~…はい!こんばんは……。』と、

焦りながら、返事を返す事しかできなかった。


イデアは、相手からの挨拶の返しを認識すると、

『お譲ちゃん、俺等に何か用事か?』と、

自分に話し掛けて来たオジサンに対して歩み寄り、

その顔を軽く覗き込み、親の言い付け通り、話す相手の目を見て、

『間違ってたらごめんなさい!オジサンってもしかして、

イグニスお兄ちゃんのお父さんでは、ありませんか?』と、

笑顔を崩さず質問する。


朱色の混ざるワインレッドの瞳に見詰められたグロブスは、

水霊系の魔物が持つ魅了の力を思い出しつつ、

イデアが身に付けているアクセサリーの飾り石、

水属性の浄化の力を持つ「ラリマー」と、

火属性の退魔の力を持つ「ルビー」を確認してから、

『それで間違いない』と答えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ