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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第一章[子供の頃は……。]
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004[思惑と結果]

厳つ霊の崇拝者達にとって、蛟の街は・・・

蛟が女神である事から、男を喜ばす風俗店が存在しない地域。

元よりそう言うモノを求める輩は寄り付き辛く、

どちらかと言うと・・・

急ぎの用での買い物、行商の行き帰りの余分な荷物整理での行商、

風俗嬢の姿を気にせず恋人を連れて行ったり、新婚旅行で訪れたり、

女房や子供と一緒に遊びに行く様な街だったのだが、

蛟の街の「1000年目の祭り」以降。

厳つ霊を崇拝者達の中で、とあるルールが決められた。


蛟の街は、トリタ神軍遠征部隊行商団「団長グロブス」が、

「特別に保護、監視する地域」なので、

勝手に「獲物に手を出したら」団長の命により、「八つ裂き決定」。


厳つ霊を崇拝者の中で、

「朱色の瞳を持つ子供等」と接点を持った子供達は、優先的に、

蛟の街で月に1度の開かれる大きな臨時市場に、保護者同伴の元、

友達を連れて遊びに行く事が許されるが、

蛟の街で体験した事を作文にして提出するのが宿題と言う。

そう言う事になった。


御蔭で、8歳になったイグニス少年は、

本来、6歳から強制される行商の仕事を……。

蛟の街で月に1度の開かれる大きな臨時市場に行く時のみ、

グロブスに、父親としてではなく、団長として免除して貰い。


仕事をサボッてばかりいた蛟の街の1000年目の祭りの当時から、

イグニス自身は、嘘の様に、打って変わって・・・

言葉と文字や、数字と計算を覚える事を拒否する事は無く。

悪人を見分ける為の知識を得る為に、行商の勉強にも余念が無く。

トリタ神軍遠征部隊の実践訓練にも喜んで参加し、

誰に言われる事無く、体もしっかりと鍛えている。


イグニスの親族は、イグニスの作文を読み、流石に愕然とし……。

頑張る理由が理由なだけに、少し複雑そうな顔をしながらも、

それでも、イグニスの成長を喜んだ。


イグニスはイグニスで、色々頑張った結果。

月に1度の蛟の街での昼間の時間に、自ら頑張った成果を実感する。

朱色の瞳を持つ子供等と一緒に、

「正義の味方ゴッコ」と言う「蛟の街の治安維持」で遊ぶ中、

朱色の瞳の子供等に尊敬され、その朱色の瞳で見詰められ、

尊敬する父親に褒められるよりも、他の者達に称えられるよりも、

もっと、ずっと、嬉しい気持ちになれる時間を得たのだ。


月に1度の蛟の街での昼間は、

イグニスにとって、掛替えの無い時間になっていた。


だが、その時間より、イグニスが大切にしていたのは、

月に一度の、その1日の終わりに「癒しの時間」と称し観に行く、

大きな臨時市場の開かれた黄昏時に行われる「蛟への奉納の舞台」、

その観覧の時間。


イグニスは、気が強く生意気な可愛い妹の代わりに、

舞台の端に見え隠れする兄妹仲の良いメロウとイデアを眺め、

心底、羨ましく思い。


イグニスが普段から目にしている舞い。

「厳つ霊の軍神、雷霆ダエーワ」の巫女が神に奉納している舞。

直線と直角、鋭角を描く刺々しい奉納の舞とは違う。


弧を描き、滑らかな曲線が尾を引く、蛟への奉納の舞を眺め、

水晶が光を反射し輝く衣装を着た朱色の瞳の友人達に拍手を送り。

水属性の浄化の力を持つ「ラリマー」と、

火属性の退魔の力を持つ「ルビー」が飾られた真剣を振るう、

イデアの奉納の舞を観て興奮し、頬を染めながらイデアを愛で、

『目が合った!』『俺に向かって微笑み掛けて来た!』と言って、

父親や親戚のおじさん達に主張し、自慢して、

『そうか…良かったな……。』と、疲れた表情で、

父親や親戚のおじさん達に苦笑い混じりの返事をさせながら、

幸せな気持ちで家路に就くのが、月に1度の日課になっていた。


何時の間にか、最初に「蛟への奉納の舞い」を観てから、

2年程経過していた「そんな1日の終わり」。

イグニスが何時もの様に、奉納の舞台を観終わった後の事。


「今日は、何時もよりもずっと、

イデアちゃんと目が合ったような気がするなぁ~」と浮かれ、

御褒美を貰った様な気分でイグニスが帰ろうとすると、

イグニスの背後から『待って!行かないで!』と、

ちょっと必死な、イグニスと同年代くらいの子供の声がする。


イグニス的に、自分に向けてのモノかどうか判断しかねたのだが、

気になったイグニスは立ち止り、振り返ると…

至近距離の視界いっぱいに、

朱色の瞳を持つ綺麗な顔とストロベリーブロンドが映る……。


イグニスは、思いもしなかった事態に混乱し、

「このままではぶつかる!」と振り返りざま、避けようとしたが、

イグニスの足は絡まり、相手も勢いが付き過ぎて止まれず。

そのまま2人、絡まる様に転倒する事しかできなかった。


砂が重さを受けて擦れる音を出す。続いて鈍い音がした。

口の中に血の味が広がり…唇を通して感じる互いの呻き……。

2人は同時に驚きながら目を見開き、一瞬、2人共々硬直し、

最初に動いたのは…朱色の瞳を持つ方……。

イグニスにぶつかって来た相手は、飛退き、唇を何度も拭い。

顔を真っ赤に染めて『行き成り振り返るな!馬鹿!』と叫んだ。


思考が追い付かなかったイグニスの方も、我に返り起き上がる。

痛みと血の味が広がる唇を拭いながら、

舞台から飛び降り、駆け寄って来るイデアの姿を発見してしまい。

「俺のファーストキス……。相手は兄の方?」と、愕然とした。


のだが…この「兄の方」……。イデアの方に気を取られて、

今まで、イグニスは気付いていなかったが、

妹より目鼻立ちがはっきりしていて、睫毛も長く、美人である……。


「最初に男って先入観がなかったら、ヤバかったかもしれない」

イグニスは不意に過った自らの不穏な感情を振り払ってから、

ゆっくり、転倒して付着した服の汚れを落としながら立ち上がり、

何事も無かったかの様に、イデアの兄メロウに向けて、

『行き成り馬鹿とは何様だ?』と呟く様に悪態を吐き、

必死で引っ張り出した平常心で、格好付け、溜息を吐く演技をして、

『それより、お前……。俺に何か、用事でもあったのか?』と、

話し掛けた。

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