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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第四章[妄執の果て]
39/39

039[最初で最後へと続く話]

残された襲われた後の野営地では・・・

戻ってきた者達の現場検証と、イデアが切り捨てて行った男達の存在、

奇襲を受けた野営地で、生き残ったダエーワ側の者達の御蔭で、

ダエーワ側へ、奇襲を仕掛けた者達の正体が、

イデアである事が割り出される。


遠征部隊の隊長であるグロブスは、妻の遺体を確認し、

眉間に皺を寄せ蹲り、イグニスは母親の死と被害状況に愕然とする。

父親と兄と一緒に行動していたシナーピは、イデアに対して怒り、

先に自分がイデアの家族を殺し街を奪っておきながら、

その場に居ないイデアの事を言葉で詰り、『許さない!』と、

大声で喚き散らしていた。


イデアは、その激しい感情を遠くから微かに感じ取り。

朝日と小鳥の囀りが窓から入り込む薄暗い部屋の中、薄く笑い。

『シナーピ、私だって君を許すつもりはないよ』と呟き、

温い湯船に身を鎮める。

色素の薄いストロベリーブロンドの髪が、湯船に暫くの間…浮き……。

汚れを落とす香りの良い水溶液を吸ってゆっくりと沈んで行く。


イデアが頭まで完全に、そのバスタブの湯船の中に沈み込むと、

湯船が運び込まれている部屋の扉が開き、

慌てた様子でカルフェンがイデアを湯船から引き上げた。


イデアは一瞬驚き、自分を湯船から引き上げた相手を見て、

『私は、水霊に近いから、水の中で死んだりはしないよ』と言って、

無邪気に笑う。

カルフェンは、抱き上げて引き上げたイデアを湯船に戻し、

『それで死ななくても、死んだかと思うじゃない!

悪趣味だわ!もう、二度としないで頂戴!』と声を荒げた。


「お風呂くらい、好きに入らせてくれても良いのに」

イデアはカルフェンの細かい心情を理解する事無く。

『了解!もうしないよ…多分……。』と適当に返事をし、

守る気の無い約束の下、愛想笑いを浮かべ、

『何か、私に用事があったのでは?』と問い掛ける。

カルフェンは、何時もの憂鬱そうな表情を浮かべ、

『次期国王陛下が御怒りよ…、

何故、アナタは一部の兵士達を置き去りにして帰って来たの?』と、

イデアに直接、訊ねた。


イデアは一瞬、感情の無い表情を見せ溜息を吐き、薄く笑みを湛える。

『雷を操る女達を殺しに行ったのに、

欲に負けて殺さず任務を放棄していたからだよ』と答えて、

『任務遂行に問題無い状況での任務の途中放棄は、処罰対象でしょ?

(ある意味)再起不能にして、捨てて来るに値する案件ですよね?

何の問題があるのですか?』と言ってから、

『実際の所、遊んでた為に怪我した輩を庇いながら連れ帰るのが、

面倒臭かっただけなんだけどね』等と付加えて、

カルフェンに溜息を溜息を吐かせるに陥った。


『困った子ね。』

カルフェンは何かを察したかの御様子で、

イデアの髪を魔法で乾かしてからアップにして纏め、

『出来るだけ近日中に、

次期国王シュピーゲルが納得する戦果を挙げなさい。』と、

部屋を出て行く。

イデアは、その姿を無言で見送り、

『面倒臭いな…、

もうそろそろ、総てを終わりにしようかな……。』と小さく呟いた。


そう思い立ったが吉日で、イデアは行動を開始する。


その夜イデアは、

山崩れを起こさせて敵兵を殲滅する作戦をアオスブルフの王に提案し、

決戦の地を自分の都合の良い場所に設定した。

カルフェンはイデアの案と本当の願いを受け入れ、約束する。

フルグルの王は、表面上、巫女を生贄にして、

水の加護を得る事を承諾し…、

シナーピの父親グロブスは、王命に対し眉間に皺を寄せながら、

『御意』とだけ答えた。


その時、フルグル側の野営地では、

その日に死んだ者達の簡易的な葬儀が、しめやかに執り行われていた。

鎮魂の舞は厳かに、それに反して、

ダエーワの巫女達の炎の魔法は、激しく火の粉を上げ舞い踊る。

巫女と共の舞う炎は、螺旋を描き闇夜に咲く光の花の様だった。


そして翌朝、トリタ神軍の遠征部隊の団長であるグロブスの指揮に寄り、

ダエーワの巫女達を引き連れたフルグル側の軍が、

指定された戦いの場に導かれる。


イデアは、人知れずカルフェンの加護に守られながらも、、

騙されて連れて来られたイデアに対する人質である子供等と共に、

その場所へとやって来た。

イデアが一般兵士に化けたカルフェンに視線を向けると、

『大丈夫よ、子供達の事は任せて』とカルフェンが声無き声で答えた。

『ありがとう。ごめんなさい。感謝しています。』

イデアもカルフェンに声無き声で言葉を残してから、

満足げに微笑み『行ってきます。』と皆に告げ、戦場へと舞い降りた。


此処は個々の策略の入り混じる最終決戦の地。

そこは本来、人間が立ち入るべきではない場所。

他の何処よりも標高が高く、草木も育たぬ山岳地帯。

生き物の存在を拒絶した「土霊クセノパネス」の大地。



Prologue[物語の始まりは、終わり]に話しは続く…end……。

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