表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第三章[アオスブルフの双剣]
31/39

031[最悪の予兆]

イデアがアオスブルフに来て、数カ月が経過し、

その地の暮らしに完全に慣れた頃。

敵陣の後方に居る巫女姿の者が、2人から3人になり…、

「戦場のエキスパートが、敵の本陣として参戦する可能性」

それをイデアが、更に強く危惧し始める。


イデアは、もしもの時の対抗策として、

自分と自分の兄のメロウだけが使えた能力。

「水霊と火霊の亜種としての力」の使い方をモーントとフェーブスに、

レクチャーし始めた。そんな、ある日……。


2か所ある主な敵の進軍経路の見張り台にて、

イデアの緩くカーブを描くセミロングの髪に手を伸ばし、

モーントが、「母親の形見」なのだと言う「鼈甲の櫛」を出して来て、

『今日も、僕に任せて貰ってもいいかな?』と、

ピンク掛かった薄い色合いのストロベリーブロンドを梳かし出す。


イデアが事後承諾気味ながらに『お好きにどうぞ』と言うと、

モーントは、イデアの髪に自分の髪を指を絡めて、

『本当に綺麗な色だね、僕のとは大違いだよ』と言いながら、

自分の濃い赤の赤毛な前髪を弄り、

『僕の髪もこんな色だったら、良かったのにな』と、

見張り台の部屋に飾られたモーントとフェーブスの母親の絵、

蛟の子孫にありがちな色彩を持つ、朱色の瞳、白い女性の肖像画と…、

この国の守護竜であるカルフェンの肖像画…、

モーントとフェーブスの父親のシュピーゲルの肖像画を次々に見て、

儚げに笑っていた……。


イデアは、自分の兄、死んでしまったメロウを微かに連想させる。

目鼻立ちが綺麗で、睫毛も長いモーントの美人顔を鏡越しに見て、

『男なのに、これ以上、美人さんになってどうするんです?

モーント様ってば、一体、何処を目指しているんですか?』と返す。


その話を近くで聞いていたグラシュタンは、

『イデアは、視野が狭いなぁ~…、色々あるでしょ?

僕がもっと美人になれたら、その時は、その美貌を利用して、

ハーレムを作るよ』と無邪気に笑い出す。


フェーブスはそれを耳にし、微妙な顔をしながら、

『それって、どう言うハーレムだよ?』と言い。

一瞬、男色的なハーレムを思い浮かべ、

「あ…、こいつはそっち系じゃないか……。」と思い直し、

それでも「俺は、そう言うの、受け付けないな」と思っているのが、

密かにイデアには伝わって来てしまっていた。


そんなのが最近の日常。

イデアは、最近、特にモーント、フェーブス、グラシュタン。

この3人と、常時、一緒に行動する事になって来ていた。


その理由は簡単。

最近、「雷の魔法を使う巫女達の投入」の人数が増えて居る事。

モーントとフェーブスは、雷を防げる程には、水を操れていない事。

モーントとフェーブスが、フルグル国との戦争の対応担当である事。

敵側の密偵が、国内に入り込んでいる事があった事。

その密偵の中に、これから、

「雷の魔法を使う巫女が混じっていない」と言う、そんな保証は、

何処にも無いから…とか、

そもそも、モーントとフェーブスは、直系の王族だから、

しっかり護っておかねば不味いだろうし、

フルグル国のトリタ神軍が進軍して来ていない待機時も、

念の為、万が一の時の為に、

城の外では、一緒に居る事をイデアは国王から要望されてて、

近頃、『城から、敵陣が攻めて来た現地に行くの面倒だ!』と、

フェーブスが我儘言って、見張り台に居る事が増えた。とか、

そんな諸々の原因が積み重なった結果だったりする。


因みに、モーントとフェーブスは、

双子ならではの連携攻撃の御蔭で、戦場で2人だけ取り残されても、

何者にも引けを取らないレベルの戦士として、活躍できる実力がある。

だから最近、イデアは一緒に鍛錬していて、一緒に行動してて、

「巫女達を一掃したら、私、要らないんじゃないかな?」と、

勝手に一人で思っていたりしてから…、不意に気付いた……。


「最近…、高年齢層な巫女を見た様な気がする……。」

そう、老女が、雷の魔法を使ったのを昨日、イデアは戦場にて、

見た気がするのだ。

「ダエーワの巫女って、定年退職の年齢って18歳だよね?

御婆さんもだけど…、何で、シナーピは……。

他の巫女達と一緒に巫女装束を着て、戦場に居るんだろう?」と、

疑問符を浮かべ、

イデアは、自分とイグニスが結婚する予定だった日が、

疾の昔に過ぎていた事を思い出し、服の下の指輪を握り締める。


でも、それは、今は、どうでも良い事・・・


『モーント様、フェーブス様…今、私、思ったんですけど……。

ダエーワの巫女って、湯水の如く使い捨てても、大丈夫な程、

無駄に人数が沢山、存在するんでしたっけ?』

『いやぁ~、そんなには、いなかった筈だぞ、

って、言うか…、多分だけど、今、あっち側の陣営、

巫女を使った総力戦に出てきてるんじゃないのか?

旱魃も続いてて、水不足でヤバイ事なってるって話だし!』と、

イデアの質問にフェーブスが答える。


『そう言えば、確か、フルグル国の水源が枯れたとかも聞きますね。

その上、蛟の街の湖の水を枯らす為に、上流を塞き止めた所為で、

湖から流れ出る川も枯れて…、

その川の下流にあった街が壊滅状態になったとか。

それをどうにかしようとして、上流の水流を戻そうとしたらしいけど、

塞き止めた壁を崩しても、川の水が土に吸い込まれるだけで、

水流は戻らなかった。とか言うのも聞きましたよ』と、

グラシュタンが娼館で耳にした事を追加情報として教えてくれる。


そんな中で、モーントが、

『そんな大変な時にまで、戦争仕掛けて来なくても良いのにね』と、

率直な感想を述べ。

『苦しい時だからこそ、

アイツ等は、八つ当たりしたくて戦争してんじゃねぇ~のか?』と、

フェーブスが言い。

『そんな理由で、戦争仕掛けられてるんだったら、

ホント、洒落になりませんね…、仕掛けて来てる奴等が全員、

滅びれば良いのにね……。』と言ったモーントの素直な答えと表情が、

今日は、ちょっと怖かった。


そして今日も、フルグル国に潜り込ませた複数の密偵から、

フルグル国のトリタ神軍の動き、進軍予定の情報が齎される。

今回の経路は、嘗て、蛟の街の主戦力が誘き出され、殺され、穢され、

イデアの兄メロウが命を落とした場所。

イデアとグラシュタンが出会った場所でもある岩砂漠から、

進軍して来ようとしているらしい。


イデアの表情が曇り、

グラシュタンが心配そうに『大丈夫?』と、イデアを気遣う。

その理由をグラシュタンから聞き出し、

知っているモーントとフェーブスも眉間に皺を寄せた。


そして、何時もフェーブスより温和で優しい筈のモーントが、

『面倒だから…

岩山崩して、敵軍全部、生き埋めにしてしまおうよ』と言い出す。


双子の方割れであるフェーブスは勿論、イデアとグラシュタンが

「「何だかさっきから、

雰囲気的にモーントの発言が怖いのは、気の所為だろうか?」」と、

一斉にモーントの顔を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ