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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第一章[子供の頃は……。]
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003[最初の接点 2]

イデアの舞の終了後、何時もより多い観客から、何時もより凄い、

今日、一番の大きな歓声が上がる。


イデアが誇らし気に、蛟と観客に何度も頭を下げていると、

観客がざわめき出す。

厳つ霊の崇拝者である大人達が、自分勝手に舞台に上がり、

『この子供は幾らだ?買い取ってやろう』と言って、

イデアを捕まえようと手を伸ばしてきた。


咄嗟の事で出遅れ、蛟が湖から鎌首を擡げ、襲いかかる態勢に入り、

想定外な事に驚き、観客は静まり返る。

灯程度の火の制御を覚えたばかりのイデアが、

感情任せに火を使おうとしたのに気付き、兄のメロウが動き、

蛟が水の刃で攻撃を仕掛けようとした時、

朱色の瞳の者達に魅了された「厳つ霊の崇拝者の子供等」は一斉に、

同じ、厳つ霊の崇拝者である大人達に飛び蹴りをかまし、

全員で殴る蹴るの暴行を始める。


余りの出来事に、誰もが言葉を無くした。

会場に厳つ霊の崇拝者の子供等を連れ込んだ朱色の目の子供達は、

彼等の有志を褒め称えたが、所詮、集団でも子供の攻撃。

大人の男が本気を出せば、押さえ付けられてしまう。


簡単に形勢逆転した厳つ霊の崇拝者である大人達は、

自分達を襲ったのが、同じ厳つ霊の崇拝者である事に気付かず、

イデアを抱き締めるメロウを守る様に立つ蛟と、

駆け付けたメロウとイデアの両親、ゲムマとイデアルに向かって、

『舐めた真似をしてくれる』と足元の子供等に唾を吐き捨て、

『迷惑料として、俺等にその子供を差し出すのと、

トリタ神軍に街を根絶やしにされた後で奪われるの、どちらが良い?

選ばせてやろう』と偉そうに笑う。


厳つ霊の崇拝者で、

「トリタ神軍は正義の味方である」と信じていた子供達は驚き、

こんなに酷い事をする大人達が、

自分達と同じ厳つ霊の崇拝者である事、それ自体を疑う。


特にイグニスは、そのトリタ神軍、遠征部隊の行商団の団長の息子。

人一倍、「トリタ神軍」の名前を使われた事に怒りを覚え、

『神聖なトリタ神軍の名前を勝手に使うな!』と叫び、

それを皮切りにして、厳つ霊の崇拝者の子供等は一斉に、

自分達の崇拝する神と自分達の名誉の為に大暴れした。


そんな争いは、大人に刃物で子供等の数人が切り付けられ、

騒ぎを聞き付けたトリタ神軍遠征部隊行商団の団長と団員数名が、

子供等を捕獲するまで続いた。


トリタ神軍遠征部隊行商団の団長グロブスは、こんな事になっても、

子供等に手を貸さなかった蛟と蛟の街の大人の訳も聞かず断罪する。

それから「蛟の街を滅ぼす事」を宣言した後、

同じ厳つ霊の崇拝者だからと、

「奴隷の様に蛟の街の巫女を奪おうとした男達」を保護する。


『それは間違っている!』と断言した子供等は酷く叱られ、

同じ厳つ霊の崇拝者に切られ大怪我をした子供等も、

話を聴いて貰えず、黙らされた。


それでもイグニスだけは、納得がいかず、

自分の父親であるトリタ神軍遠征部隊行商団の団長グロブスに、

『そんなの正義じゃない!』と何度も訴え、

一度、黙らされた同じ気持ちを抱えた子供等と共に、

保護された男達が、

「神に仕える巫女を奴隷の様に買い叩こうとした事」。

「断られ、トリタ神軍の名前を出し、

今、大人が見せたのと同じ様に、街を根絶やしにすると脅した事」。

「迷惑料として、無償で巫女を差し出させようとした事」。

自分達は「正義の味方」である「トリタ神軍の名誉の為」、

その「男達と戦った事」を必死に伝える。


自分の息子の必死な姿に心を打たれ、グロブスは溜息を吐く。

部下に事実確認をさせ、答えが出た所で、

『「蛟の街を滅ぼす」と言った事は撤回する』と言い。

蛟から『子供等の治療をさせて欲しいのですが』との申し出を受け、

水霊アルケーの血族である朱色の瞳の子供等の水属性の回復魔法、

厳つ霊の崇拝者の子供等の傷を癒す「その力」を目の当たりにし、

少し考え込む。


更に、イグニス達の話に出て来た珍しい髪色の巫女、

グロブスの娘と同じ年の3歳児、

奴隷の様に連れて行かれそうになった「イデア」が、

メロウとか言う「同じ髪色の兄」、

グロブスの長男イグニスと同じ年齢の男の子に抱き締められ、

母親だと言う「この地では珍しい赤毛の女」に見守られ、

今も舞台の上から動けないでいるらしい。と耳にし……。


グロブスはイデアと自分の小さな娘シナーピの事と重ねて考え、

「相当、怖かったろうな……。」と胸に痛みを覚え、

街を滅ぼせば、素晴らしい戦利品になったであろう、

朱色の目の子供達の事を見なかった事に決めて、

適当な布施を迷惑料代わりに巫女に渡して帰る事にした。


イデアを守った厳つ霊の崇拝者の子供等は、

「巫女を守って貰った御礼に……。」と、

蛟から、蛟がその場で身を削って作った「蛟の鱗の御守り」を貰い。

硬く、真珠の様に白い宝石の様に綺麗な鱗を見せびらかし、

喜んでいる。


噂でグロブスは、蛟が「白蛇」であると聞いていたのだが、

「蛟は蛇では無く、鱗から察するに、

ドラゴンに近い生き物なのかもしれないな」と考え、

攻めるのではなく、様子を見る事が正解であると判断した。


で、今回、蛟の街の神殿の方では、

トリタ神軍遠征部隊行商団の団長から投げ渡された御布施で、

2か月分の収入。

ちょっと腹黒い、朱色の瞳の子供達の行動の成果と、

水霊系特有の魅了の効果を上乗せして増えた御布施を合わせて、

1年分の収入を1日で得ていた。


これに街の交易で得た収入からの寄付金を合わせると、

必要経費を抜いても、物凄い売り上げになる筈だ。


今回の祭りで、傍若無人な来訪者達から被害を受けた店や、

トリタ神軍遠征部隊行商団のキャンプの所為で被害を受けた者達、

蛟の街の南東で放牧を営むメンバーの生活が安定するまで、

そこから補助金を出しても、余りあるであろう。


イデアも、怖い思いをしてトラウマを……。と言う訳ではなく、

腹が立ち過ぎて、

母方から受け継いだ火霊ヘラクレイトスの血の暴走させかけ、

苦しい思いをしただけで、後遺症も無い。

来月から毎月ある。月に一度の大市に合わせてでの舞の奉納には、

影響は無いだろう。


取敢えず、その日は…トラブルあれども、

結果的に、順風満帆な一日の終わりとなった……。

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