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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第二章[運命の不協和音]
24/39

024[変わってしまった運命]

夜風と揺れる草木の音を掻き消す。悲鳴と嗚咽。

立場の逆転で強気になった者達の怒号が場を支配する中。


蛟の祟りの核となったシナーピから、

最初で最後、初めての強い思念がイデアへと流れてきた。

それは、異種族間の交わりに対する嫌悪感と、メロウに対する愛憎。

そこでイデアは、シナーピの心の声から今回の事の真相を知る。


今回起きた出来事の発端を簡単に説明すると・・・

メロウに片思いしていたシナーピが、メロウと結婚する蛟に嫉妬して、

厳つ霊の巫女である事を利用し、雷霆ダエーワからの神託だと偽り、

ダエーワの意向を行使する役割を担う神トリタに、偽の神託を奉納し、

今回、トリタ神軍の下請け傭兵によって、蛟の街を襲わせた……。

と、言う事だった。


「自分からは、好意的な態度を取らずに、

好きな相手に好いて貰えると思っていただなんて……。」とイデアは、

理不尽極まり無いシナーピの思いに苛立ち。

その憤りをイデアが執行した蛟の祟りを伝い、シナーピにぶつける。

シナーピは蛟に祟られた状態で、

「私は間違っていない!メロウ様は私の額にキスしてくれたもの」

「メロウ様は、私に好意を示してくれたわ!」と何度も主張し、

「蛟さえいなければ……。」と、

「アナタがメロウ様を殺さなければ…、」と

蛟が存在しなければ生まれなかった存在を「私のモノだったのに」と、

繰り返し、世迷い言を吐いてくれる。


どうやら、シナーピは・・・

知らずに、メロウをも殺してしまう命令を出していたらしい。


イデアはシナーピに対し、はっきりと、

「私とメー兄は、アナタが嫌って討伐を命じたのより、

重複した3種の異種間交配によって生まれた存在だよ」と告げ、

「シナーピ、アナタは、

自分で仲間に殺す命令を出して、メロウを殺させたんだ」と教え、

何だか空しくなった。


「馬鹿だね、それ以前に、例え、両想いになったとしても、

自分が愛した人を独占する事なんて、出来やしないのに」

イデアは悲し気な表情を一瞬だけ浮かべてから、色々諦め、

シナーピと繋がる思念を断ち切り、

『厳つ霊側の者達を総て滅ぼして下さい』と、

『皆、家族や恋人を殺されてしまいました!仇を討って下さい!』と、

イデアの目の前で、涙を零しながら真剣にこいねがう者達を眺め、

大きな溜息を一つ吐いた。


後、少しで、イグニスと結婚する約束のイデアの18歳の誕生月。

今日は、蛟の街の誕生記念日までも、後、ひと月も無い日だった。

だが、その結婚の約束は、シナーピ1人の暴挙の為に、

立ち消え、この日を境に、果される事の無い約束となる。


イデアは・・・

『来年には、弟か妹が生まれるわよ』と言った母イデアルに対し、

『結婚諦めて、母上の傍にずっといても良いよ』と言った言葉が、

嘘と思える程に、今を嘆き悲しみ、大粒の涙をポロポロ零し、

イグニスへの気持ちを断ち切る為、

3年程前、15歳のあの時に見たイグニスの事を思い出しながら、

「あの人とは、縁が無かったんだ」と、自分に言い聞かせ、

怒りや憎しみ、憤りよりも、悲しみ、焦燥感に支配され、

崩れ落ちるように座り込んで、竜から人の姿に戻ってしまう。


その様子を目の当たりにしたグラシュタンは、

人としてイデアが流す「その綺麗な涙」に心打たれる。

結婚式を間近に控え、結婚相手の親族に住んでいる街が襲われ、

両親と兄、兄の婚約者である街の地母神を殺されたイデアに対し、

必要以上に同情してしまい。感情に流されるまま、

動揺する信者達を押し退けて、イデアに駆け寄って抱き締めた。


それからグラシュタンは、その水の魔物としての属性から、

「僕は絶対に浮気しちゃうから、恋人にはなってあげられないけど、

この娘を支える保護者役にはなれる筈だ!」と自己判断して、

「そうだ!この娘の死んだお兄ちゃんを運んだ御礼を僕は貰ってない。

御礼として、イデアのお兄ちゃんになる権利を請求しよう!」など

色々と勝手な事を考え、その結果……。

得た力の反動と、精神的なダメージで弱り、

隙だらけになっているイデアの意識を手持ちの薬で混濁させる。


グラシュタンが思っていた以上に、

その薬は、良い具合にイデアの意識を落として行き、

グラシュタンの腕の中で、安心して眠ってしまったかの様に、

イデアを眠らせた。


グラシュタンは、新しい人脈として確保した相手、

事前に籠絡しておいたイデアが助けた女子供達を利用する。


そして、もう一つ、

メロウの死体のからブルーサファイヤと勘違いして盗んだ宝石。

それは、盗んでもバレナイ状態で、運良く盗めた物を運悪く落とし、

その女子供達に発見され、メロウの持ち物だと気付かれ、

苦し紛れに『遺言と共に預かった』と言ってしまって、

興味本位で見に来ただけのグラシュタンを一度、

窮地に陥れてくれたのだが、此れ幸い。グラシュタンは、

死んだメロウが握り締めていた水属性のカイヤナイトを利用して、

まず、イデアの横に居る為の地盤を盤石にする為に行動する事にする。


皆に藍色の宝石カイヤナイトを見せたグラシュタンは、

『僕の名はグラシュタン。死の淵にあったイデアの兄、

メロウから直接、この宝石を託され、

戦う力の無い僕は、イデアを見守る事を頼まれ、ここへ来た。

だが、辛い目に遭ったイデアを支える筈だった蛟と彼女の両親も、

イデアの目の前で殺されてしまった。

だから僕は、メロウの最期の願いを叶える為、

これからも「イデアを支え、見守って行きたい」と思っている。

その為に、皆に力を貸して欲しい』と尤もらしい事を言って、

優しくイデアを抱き上げた。


丁度その時・・・

グロブス率いるトリタ神軍遠征部隊でもある行商団と、

イデアの婚約者であったイグニスを含む一行が、自国フルグルへ戻り、

ダエーワの神託の話を聴いて、蛟の街に駆け付け、シナーピを保護し、

シナーピが自分の都合の良い様に改竄した話を聴いて、

先程まで竜の姿が見えていた場所へと近付いていた。


それと同時に・・・

厳つ霊の者達に攻め入られ、蛟が藁にも縋る思いで、

火霊ヘラクレイトスを信仰する東の地域にある国、

「アオスブルフ」に助けを求めた為に、そちらの軍も、

先程まで竜の姿が見えていた場所へと近付いていた。


突然やって来た黒いトリタ神軍と、

紅いアオスブルフの軍は、不気味な程、静かに、

グラシュタン達の目の前で対峙し、互いの代表者だけで先に話し合い。

イデアを抱き上げるグラシュタンの方へとやって来る。


トリタからは、騎乗し武装したグロブス。

アオスブルフからも、騎乗し武装した男が1人、白い小さな蛇を連れ、

グラシュタンの前にやって来た。


グロブスはグラシュタン達の奥、神殿の前にピペルを発見し、

眉を顰めながら、『蛟の街の者達を好きに連れて行くと良い』と言い。

アオスブルフ側の男は、白い小さな蛇を人型の蛟に変えて見せ、

薄れ消え行く蛟の姿越しに、

『蛟からの救援要請にて参上した。一緒に来るが良い。』と言って、

蛟の街の住人達を荷馬車へと誘導し、グラシュタンに向かって、

『その娘は、我が同胞でもある。引き渡して貰おう』と言った。

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