019[岩砂漠のゴーレム 1]
蛟の街方面から、北側にある岩山の隙間を入った場所。
その岩山に囲まれた岩砂漠を通る物流の流通路の入り口、
その直ぐ近くの場所に、少し広くなった3つの分岐が存在している。
メロウは最初の分岐地点に、ゴーレムの発生源が無い事を仮定し、
イデアと一緒に連れて来た水を消費して、岩壁に水鏡を作り、
ゴーレムが、それに反応しない事を確認する。
それから、岩山の隙間から、覗き見る予定の場所や近くに、
魔法陣やら魔法道具やらが無い事を調べて、
3つの分岐、その周辺の様子を道の真ん中に立ち、確かめる。
その鏡に映る光景を確認できるのは、無駄に視力が良い者か、
視力を強化し、遠くまで見る事が出来る者だけ……。
残念な事に、その場で見れる者は、メロウとイデアしかいない。
この時、2人は、溜息を吐きながら、
グロブスとイグニスの様な、厳つ霊側の主戦力が行商に出て、
この場に居ない事を残念に思いながら、ゴーレム達の観察をしていた。
東の噴火と言う意味を持つ「アオスブルフ」に続く道からは、
ゴーレムが出て来る気配は無く、そちらに向かうゴーレムもいない。
アオスブルフへの道に、ゴーレムの発生源は無い事は確かで、
確認しに行く事すら、無駄であろう。
分岐の真ん中にある登り道、入口から見える場所、
3つの洞窟の様になっている場所に続く細めな道からは、
見るからに、ゴーレム達が数多く出て来ている様子が見て取れる。
最後に、一番大きな道、
イグニスやシナーピの母国「フルグル」に続く道は、
他のより小さなゴーレムが往復し、時々、他のゴーレムが入って行く。
気になって1体に炎で焦がした印を付けたら、中央の道から出て来て、
入って行った。そう言えば…その道は、確か……。
細い道で、真ん中の道へと繋がっていたと思う。
そんな感じで、メロウとイデアは、
観察して得た感想と、推察を出し合い。話し合った。
結果、一番最初に確認すべきなのは、
「小さなゴーレムが行き来するフルグルへ続く道の先の分岐点」と、
メロウとイデアは見定める。小さなゴーレムの役割が気になるのと、
その道の先にある分岐点に、
ゴーレムの材料となる「石や岩が転がった崖崩れの跡」があったと、
メロウとイデア両方が記憶していたからだ。
『取敢えず、そう言う罠っぽい「小さなゴーレム」は壊さず、
捕獲して、何時でも壊せる様に、
水球の中心にでも閉じ込めて隔離しておこう。』と、
メロウが当たり前の様に言うので、イデアには出来ない芸当だし、
イデアの方は黙って従う事にした。
の、だが…そこに発生源が無かったら……。の場合の事も考え、
次の候補地へと思考を移す。
次の候補は、3つの洞窟の一つ。
洞窟を北・東・南と仮に名付けるとすると、「南」になる。
洞窟の一番奥の天井が崩落した場所。
メロウとイデア、2人の意見は、先程と同様に一致する。
第一候補と同様、広さと材料を考慮すると、間違いない場所だ。
意見のすり合わせをしたメロウとイデアは、適当に、
皆にその話を伝えてから、
『取敢えず……。
目の前のだけは、僕等が全力で排除しておきましょうか』と、
メロウが言うので、2人で細かい砂利を拾い。
イデアはメロウと手を繋いで、2人同時に1歩踏み出し、
集まってやって来るゴーレムに対し、互いに砂利を持った手、
繋いでない方の手を突き出して、水平に手を移動させ、
砂利混じりの水の刃で、目の前のゴーレム達を簡単に破壊する。
厳つ霊側の者達は静まり返り、
朱色をした瞳の蛟側のメンバーは、感嘆の吐息を吐いた。
『あぁ~…疲れたぁ~……。』とイデアが愚痴を零し、
メロウも少し疲れた様子で溜息を吐き、
『さて、そろそろ行動を開始しますよ!
各自、ゴーレムに囲まれない様に注意して下さいね!
囲まれたら、助ける事なんて、誰にもできませんから』と言い。
メロウがさっきと似た動作で小さなゴーレムを水球に閉じ込めた後、
イデアの手を放し、事前に決めた役割をこなし始めた。
メロウ達は、迷わずアオスブルフに続く道の手前のモノと、
入って来た場所のトラップの境界線を壊し、中央の細い道から、
壊れたゴーレムの山を乗り越えて来たゴーレムの対処をしながら、
魔力の供給源をも壊して、最初の分岐点の調査が終わり次第、
「フルグルへ続く道の先の分岐点」へ向かう予定。
イデア達は、小さいゴーレムを閉じ込めた水球の横を通り、
最初から「フルグルへ続く道の先の分岐点」へと向かう。
そして、イデアが向かったフルグルへ続く道の先の分岐点の先には、
壊れた荷馬車と、ゴーレムに追いかけられ逃げ惑う馬、
元人だったかもしれない肉塊と血溜まりが数か所に存在していた。
次は我が身な肉塊と血溜まりを目にして、厳つ霊側から動揺が走る。
イデアは呆れ、取敢えず・・・
ゴーレムより、暴れ馬の方が危険と判断し、蛟のメンバーが全員、
メロウと共にいる為に使える蛟のメンバーが苦手とする炎を使い、
馬を余計に怖がらせ、逆方向に走らせて、
フルグルへ続く道へと逃がす。
イデアがそんな事をしている間、厳つ霊の者達は、
使え無さをイデアに示してくれるが、
幸い、ゴーレムは知能の低いタイプである事が分った為、
イデアは、特に気にしない事にする。
先にトラップに掛かっていた馬がいなくなると、
後から入って来たイデア達に向かってゴーレム達は動き出す。
イデアは、刃毀れしかねない為に剣を使わず。素手と水だけを使い。
邪魔なゴーレムを破壊しながら、
『すみません!次の候補地を視て来ます。』と言い残し、
一人でゴーレムの発生源ではなかった場所を後にした。
ゴーレムが不定期に出て来る下の道を避け、
岩山にできた段差の上を歩いて進んだイデアが目にしたモノは、
犇めき合い身動きが取れなくなったゴーレムの群れ……。
どうやら、細い道に進むゴーレムが詰まって、
動けなくなってしまったかららしいが、ゴーレムの製造は止まらず。
どうしようもない状態になってしまったらしい。
イデアは無言で出てくる場所を目で追い。
想定していた「南」の洞窟である事を確認すると、来た道を戻り。
分岐地点で悲鳴を上げる厳つ霊の者達を無視し、
フルグルへ続く道の途中の頻繁に崖が崩れる場所へと走り。
イデアは、崩れやすい崖を幾度か滑り落ちながら登り、
天井の崩れた洞窟の上の方へと、一人で向かった。