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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第二章[運命の不協和音]
18/39

018[蛟側の失策]

イデアは背中まで伸びたストロベリーブロンドを一つに纏め、

奉納の舞の時、

身を飾る宝石を出掛ける者達と一緒に宝物庫から持ち出し、

竜種の蛇が1粒の大きなルビーを抱くブローチをビーズの首輪に飾り、

両手首にラリマーの嵌め込まれた蛇モチーフの輪。

普段から愛用して、

奉納の舞の時にも流用しているルビーの飾られた真剣を手に、

赤と青と白の宝石の色合いの邪魔にならない色の服装、

長袖長ズボンと言う普段着で、何時も通りに魔物討伐の支度をし、

他の蛟の街のメンバーも、宝石を飾った似た様な支度をする。


シンプルで飾り気の無い巫女服を着ているシナーピと、

御付きの2人の少女、そして…、

厳つ霊の崇拝者である物々しい武装集団は……。

その光景を不思議そうな目で見ていた。


蛟の子孫である朱色の瞳の者達は、

水属性の浄化の力を持つ「ラリマー」と言う宝石を数個、

両腕の籠手やピアス、髪飾りの装飾にして、その身に飾っている。

メロウとイデアは、その「ラリマー」に加え、

火属性の退魔の力を持つ「ルビー」を装飾品に飾り、

イデアは、ルビーの飾られた退魔の剣を持っているが、

メロウに至っては、

イデアや他の蛟の子孫達の様に、簡易でも、武装をする事は無く、

無駄に宝石を使い、着飾っただけ…に、

厳つ霊側の人には、見えているのかもしれない……。


呆然とした厳つ霊側の代表のシナーピは、

一番、討伐に向かない雰囲気の服装のメロウに対して、

『そんな恰好で行くのですか?』と、微かに震えた声で言う。

言われたメロウは、

シナーピに特別に向けていた昔と変わらぬ作り笑顔を向けた。


『水属性だけの子等と違って、

僕とイデアは、必要なだけ水気を連れ行って水の盾で身を守ります。

足りなくなったら、水の無い場所でも、生き物が存在すれば、

水気を奪って、利用する事だってできるんです。

水の鎧で護られた僕とイデアに、動物の皮や金属で作られた武具って、

寧ろ、重たいだけでしょ?』と平然と言ってから、

メロウは、見本をシナーピに見せる為、掌の上に水球を作って、

『武器も、この通り、自分専用の物を幾らでも生み出せるんで、

僕とか、だと、持っていかなくても良いのです。』と、

水できた水の剣を作って見せた。


欠けず、生き物を斬っても油で切れ味が鈍らない水の剣は、

現時点で、蛟とメロウにしか作れないし、使えない最強の武器で、

同じ要領で作る鎧や楯は、最強の防具である事は内緒です。


因みに、父ゲムマと母イデアル、そして当時のイデアは、

それに近い力を剣や衣服に付加する事まで、しかできず。

他の蛟の子孫達には、それも出来ないって事は、

公然の秘密だったりして……。


そんな、シナーピ達に教えていない事は多々あれども、

メロウが、シナーピに隠し芸を披露した「この時」、

シナーピの表情を良く観察していれば、

蛟の街の者達が、沢山のモノを失う事など、無かったかもしれない。


そして、虫の知らせでもあったのか?

メロウが、久し振りに魔物の討伐に参加するからであろうか?

蛟の街を出る時、蛟は目尻に涙を滲ませ、何時もより過剰に、

身内の参戦者に水の加護を追加で与え、見送ってくれた。


この時も、メロウとイデアが、

シナーピと付き添いの少女達と一緒に先頭を歩かず。

蛟の街の主戦力メンバー、シナーピの母ピペルと傭兵集団一行と、

歩いていれば、傭兵達やピペル等の強い思いを感じ取り、

危険を察知出来ていたかもしれないが、後の祭りだ。


そうこうして、出向いた先、

流通路となっていた岩山に囲まれた岩砂漠では、

ある意味で、本当に大変な事になっていた。・・・


その北側となる出入り口には、魔物ではなく、

複数のゴーレムの姿が見え隠れしていて、こちらに気付く様子も、

そこからこちらに来る様子も見せないと言う奇妙な事になっていた。

而もその数は、奥から次々と出て来て、次第に増え続けている。


その時も、メロウとイデア、朱色の瞳の者達は、

それがとても奇妙な事である事は理解しても、

それが、自分達を陥れる為の罠だと言う事に気付けない。


シナーピは、その様子が見える場所で立ち止り…深呼吸し……。

『私には、あの魔物と戦う力がありません。

メロウ様!皆様方、相手は再生能力の高い魔物なので、

気を付けて下さい。』と少し、ギコチナク言い。

シナーピ側の者達は、「任せとけ」的な歓声を上げたのだが・・・


『ちょっと待って!あれ、魔物じゃないよ!』と、

蛟側の者達全員が、突っ込みを入れた。


メロウは非常に困った御様子で、

『シナーピさん…ゴーレムは魔物ではありません。

ゴーレムは、土霊クセノパネス系の魔術で作られ、

魔法の力で動く、土や泥の人形、石や岩の石像で……。

生き物ではないのです。言うなれば、自立可動式のトラップ。

人為的に作られた罠です!』と、ゴーレムが魔物ではない事を説明し、

「魔法陣・魔法道具」を利用した種類のトラップの解除、又は、

破壊が出来るメンバーを募る。


結果・・・

朱色の瞳を持つ蛟の街の者達の中に、

水源が無い為、解除方法が分っても出来ない者が数人と、

破壊が可能なメロウとイデアの2人だけ、

厳つ霊側には誰一人として、その対処ができる者が存在しなかった。

と、言うか…、罠を仕掛けた者が、ココで名乗り出る訳がない。


その後の話し合いの結果・・・

仕方ないので、厳つ霊側の人間に露払いを任せ、

それを指揮する巫女見習いだと言う少女達2人を1人づつ、

メロウとイデアの2つのチームに分ける事になる、


イデアがゴーレムを操る主体となる魔法陣か魔法道具の捜索、及び、

発見し次第の破壊。

メロウが水源となって、ゴーレムの魔力の供給源を解除、若しくは

メロウが、ゴーレムを操る主体となる魔法陣の為の結界を壊す。

そんな予定となり、

それに参加できない戦力外通告を受けた朱色の瞳の者達は、

ゴーレムトラップが発動する手前の場所で、

警備&退路の確保を受け持つ事になった。


これまた厳つ霊側の戦力外なシナーピは、

残された者達と共に、待機する事になっている。


だが、しかし…それにしても……。

蛟側の者が、基本主体となり立てた筈の「この作戦」も、

総てが、厳つ霊側の手の上での事となり、戦いの序章となっていた。

その事に、蛟側のメンバーは、誰1人も気付く事がなかった。

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