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君と・・し合いたい  作者: 上木 MOKA
第二章[運命の不協和音]
14/39

014[婚約の果てに 1]

広大な平原の恵みを受け、遊牧や放牧をする畜産と、

軍の遠征部隊を行商団にして発展した国家「フルグル」の、

「6歳から婚約者を持つ事が許される」と言うルールに則り。


妹の巫女デビューを見届けた「その足」で、

6歳になったイデアに、求婚しに行った当時9歳のイグニスは、

「怪我の功名」と言うのに助けられ、

何処の国家にも属していない「蛟の街」で、

自国の宗教が許さないかもしれない婚約を正式に成立させ…、

イデアは、花嫁修業の名目で、母親と共にフルグルへと赴き、

蛟の鱗の効果が薄れ、途切れがちになっていた「水源の修復」をし、

「この婚約は、国家的に有益なモノである」と示し、

フルグルの国王の名の元、

トリタ神軍の遠征部隊行商団、団長グロブスの息子、

イグニスの婚約者として自分の存在を認めさせた……。


それは、イデアの両親とイグニスの父親の策略。

想定外を含みながらの思惑は、叶い。

平和的な形で、フルグルの国からの侵略攻撃は回避された。が…。

蛟は、イデアに対する罪悪感を拭えず……。

「大人達が促したイデアの愛が、

年上に対する尊敬や友愛ではなかったか?」と、心を痛め続ける。


そんな事を知らない2人・・・

髪も目も黒く、肌も日焼けで浅黒いイグニスと、

そんな彼とは対照的な白っぽい色合い、

ピンク掛かった淡い色の金髪とアルビノ種に近い白い肌、

朱色の混ざるワインレッドの瞳のイデアは、

一緒に巣作りをする小動物の様な雰囲気で、誰が見ても仲睦まじく、

互いを思い合って、寄り添い合っていた。


それと同時に、イグニスの父「グロブス」を「師匠」とし、

兄妹弟子として、格闘技、剣の技術を競い合い。馬術を競い合い。


イグニスとイデアは、奇妙な程、互いを喪う事を恐れ、

行商で危険な地域に行くイグニスの無事をイデアが願い。

蛟の他の子孫達と一緒に、「人間を護る為に、魔物をも狩る」

イデアの無事をイグニスが同じ様に願っていた。


結果、別々の場所で危険に晒されるより、

ずっと一緒に居て、一緒に危険に遭う事を求め。同じ景色を見て、

同じ物を食べ、同じ生活を一緒にする将来を想定し、

互いを育て合い。

互いの気持ちや思いの本音を語り合う事の無いまま、知らぬまま、

無意識に切磋琢磨する道を選び取る。


何時の間にか、2人が、互いを大切に思い合うのが当たり前になり、

イグニスとイデアの仲に進展するモノが無い中で、月日が流れた。


長い婚約期間の後半・・・

イデアの周囲の朱色の瞳を持つ同じ蛟の子孫、イグニスと仲の良い、

イグニスに好意を抱く、イグニスに年齢が近い娘達が、

厳つ霊の信者達が喋った「蛟の恩恵に関する噂」を耳にし、

『馬鹿じゃないの?私達のが、女としてイグニスに好かれてるわよ?

イグニスは、国の為、蛟様の恩恵を受ける為に、

雑種なアナタの引き取り手になっただけでしょうに!

勘違い甚だしいわね!』と意地悪くイデアに向かって言い放った。


これまでの経緯を思い出し、不安を煽られ、

不意に自信を無くし、怖くなった15歳のイデアは、

蛟の街のルールでは、結婚できる年齢になる18歳のイグニスに、

どうしても、その日の内に会いたくて、単独で行動し、

イグニスの気持ちを確認する為だけの為に、危険な道を通り、

獣の群れに襲われ、傷を負い、獣を斬った帰り血を浴び、

酷い状態で辿り着いた先にて、

不安をそのまま具現化した様な現実を見て、心を折られる。


公衆の面前、他の青年達と同じ様に、

裸に近い恰好の女性の腕の中で、イグニスも笑っていた。


イデアは深呼吸し、首から下げていた指輪を外し、

自分の指には大きい「イグニスに最初に貰った指輪」を手に、

密かにイグニスの近くに居たイグニスの母ピペルに近付き、

指輪をイグニスに返却する様に頼んで、渡して、

そのまま、行方を眩ませてしまう。


その事は暫く、ピペルによって隠蔽される…が……。

蛟の街での事が発覚し、イデアを捜しに来たメロウによって、

イデアがココに来たかもしれない事と理由がイグニスに伝わり、

捜し始めて直ぐ、イグニスの母ピペルの服に残った血の汚れ、

ピペルがイデアから指輪を受け取る時に付着した血液と、

隠し持っていた血の付いた指輪が発見される。


その御蔭で、イデアがイグニスに会いに来た事。

ピペルの自白で、イデアがココで何を見たのかが発覚する。


メロウは静かに、

『そう言うのは、お前等にとって、当たり障りの無い事でも、

水霊の者にとっては、裏切り以外の何モノでもない。

その程度の貞操も守れないなら、水霊の者と、付き合っては駄目だ。

イデアが死ぬか、将来、お前がイデアに殺される事になる。

イグニス、お前はもう二度と、イデアには会わないでくれ』と言い。

そのまま立ち去ろうとして、

『そんな事より、優先されるべきはイデアの安全だろ』と説得され、

イグニスに引き留められ、メロウはイグニスと一緒に、

イデアを捜す事になった。


イグニスは、自分が贈った婚約の証だった指輪を手に、

商売女を自分に宛がった親戚の男と、それを祭り事だからと許し、

自分にも強要した父親を巻き込もうとするが、

『事情があるなら、断固拒否して、断ればよかったんだ!

自分で受け入れてからの損失は、自業自得だろ?』と笑われ、

父親にも、『世の中そう言うモノだ』と諭され、

商売女達からの祝福を受け入れた事を後悔し、

受け入れてしまった自分にも憤る。


そして、血と言う情報から、

普段は避けて通る血の臭い、タンパク質が焦げた臭いを辿り、

水溜りと血溜まりの泥に塗れ、

樹に取り込まれていく獣達の死骸と、既に意識を取り込まれ済みで、

眠って衰弱が始まってしまっている無傷の馬を発見する。


メロウは、その樹に近付き、

イグニスには見せた事の無かった冷たい表情で樹に触れ、

触れた場所を炭化させ、

『ドリアード!その馬は、僕の家の馬だ。

馬の近くに、僕に近い姿の女の子は居なかったか?

それは僕の妹だ!答えろ!何も答えないと、

枯らして周囲の木々と一緒に燃やし尽くすよ』と言った。


ドリアードと言う「樹の精霊」だったらしき樹は、

カサカサになった葉を落としながら、

『いや!ちょっと、止めてぇ~!乾涸びちゃう!』と

緑色の髪をした小柄な美女の姿を樹の中から出現させ、

『脅すのは止めてよ!』と半泣きで、樹洞の中の琥珀を見せ、

中で丸くなって眠るイデアを見せて、

『この子は、元素の霊としての影響で、選択を迫られて、

魔物になるのではなく、潔く失恋を受け入れて消える所なの!

でも、水霊として水に溶けて帰る事も、

燃えて火霊として帰る事も出来ないから、私を通して、

母なる大地、土霊クセノパネスの元に帰る所なのよ』と説明した。

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