番外編 放課後デート
「--デートがしてみたい」
愛しの、可愛い人が突然そう言い放ったのは付き合い始めて3ヶ月が過ぎたところだった。確かに他の貴族子息子女はデートというものに勤しんでるしそろそろ俺の部屋で戯れるのも飽きるだろう、ならしてみようじゃないか。
▽
「どうかしら?」
ふふん!と得意げな声上げながらリリーナがクルンと一回転する。格好は街で悪目立ちしないための裕福な商人の娘風の薄水色のストライプのハイウエストワンピース、裾に白銀の子供心残る可愛い刺繍がしてありとてつもなくリリーナのまだあどけない可愛さを表現出来ている。
巷で流行っている丈が短めのワンピースからのぞく白い脚はあまりにも無防備、だ。
「・•・もう少し足を隠せないのか」
「やっぱり似合わないかしら?」
いや、鼻血が出そうなくらいにあってるとも!!
ただその姿がほかの男のにさらされるかと思うと――嫉妬でおかしくなる
無言の俺を肯定と受け取ったのか少し悲しそうな顔をしながら「着替えてくるわ」と言い隣の部屋に消えていくリリーナ
罪悪感に蝕まれながらそれでも嫉妬心を打ち明けれない自分は相当見栄を貼ってる。
▽
結局真紅のジャンパースカートにリボンが特徴的なブラウスという無難な格好に落ち着いた。リリーナはこういう庶民風の格好は珍しいのか先程から軽やかに動いている。
初めは、アイス屋から王都で話題の雑貨屋で俺からしたら変な兎の人形(驚く事にリリーナはこれが好きらしい)をみたり時計塔に登ってみたりと彼女はよっぽど"デート"がしたかったらしい
――彼女の笑顔を見る度、すべてがどうでもよくなる。
初めてあった時、折檻を受け庭園で泣いていたリリーナの手をとったのはフェーゼであり俺ではなかった。その真実はずっと消えない、俺は彼女の初恋にはなれない。
偶にとてつもない不安に襲われる。
彼女が俺を捨ててフェーゼに思いを寄せるのではないかと、彼女はフェーゼへの思いは憧れだというがそれが恋でない証は何処にあるだろうか?
いつか、リリーナが俺を捨ててしまうならいっそ―――
「どうしたのエルンスト?」
目の前には夕日に照らされどこか不安げな表情したリリーナがいた。
「•・•私ばかり楽しんでごめんなさい。エルンストを疲れさせてしまったわね」
クルっと背中を向けてそういう彼女は初めてあった時みたいに消えてしまいそうな儚さだった。
「――疲れてなんてない」
出てきた言葉はそんな無愛想な言葉
「嘘よ。変装までしてつき合ってもらっちゃってごめんなさい、帰りましょ!」
振り向いた彼女は、笑顔だった。
痛々しくて切ない笑顔。
「俺は、リリーナが喜ぶなら苦痛なことなんてないと思ってる」
それこそ嘘だ。リリーナがフェーゼと幸せになることは何があっても許せない。
「――だったら、キスして」
―私に証明して
愛しい恋人からのおねだりに答えないわけがない
俺は静かに目を閉じたリリーナを抱きしめながら桜色のその唇に触れた。
どのくらいそうしていたんだろう、一瞬が永遠のような時の中彼女の熱だけが確かだった。
「ホントはね、エルンストをみんなに自慢したいの」
「自慢なんてする必要ないだろう」
そうしてまた唇を合わせる。
「だってこんな素敵な男性、ほかの人に取られちゃうがしれないから私のだーって言っておかないと」
卑怯でごめんね、そういったリリーナは寂しそうだった
俺は――
「愛してるよリリーナ」
ただ抱きしめて唇を合わせるしかできなかった。
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―荘厳な鐘の音が鳴り響く
今日、王太子妃となる彼女は純白のウェディングドレスに包まれている
幸せを浮かべる彼女を、俺は少しでも満たしてあげているだろうか?
どうか、この愛が彼女に届いてますように