同類
神居から出てきた男はだるそうな顔をしている。
「久しぶりだな、15年ぶりか?アスタロトさんよ。」
「相変わらず同期のくせに偉い口叩くわね。」
カイムは無気力な口調のまま続ける。
「そもそも、あんたなんで人間になってんの。そんな身体で仕事出来るわけ?」
「それは...」
「それは、俺の親父に見つかりそうになったからって勝手に自分の設定いじって自滅したんだよ。」
少年がしれっと代弁するように話した。
「ちょっと、何言っちゃってるのよ!」
少女の顔が赤くなっていく。
「ハハハハ、なにドジこいてんの?馬鹿なの?」
「うるさいわね、ソロモン72柱の中では私の方が上なのに。」
「オイオイ、じゃあ※1毒蛇や悪臭を操ってみろよ、そんな契約者の背中で寝てないでさ。あ、そうか!今日は木曜日だから定休日ですか!」
「こ、の、や、ろ、う」
少女がキレた。何故かさっきまで一切動かなかった身体を躍動させ、カイムに飛びついた。
「この※2鶫野郎!身ぐるみ剥いで焼き鳥にしたろかああん!?」
「痛い痛い痛いごめんなさいごめんなさいごめんなさいあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ」
少年が神居に歩み寄った。
「まったく、滑稽な連中だな。」
「まったくそのとおりね。ところで1年後どうするの?」
「契約の事か?それならまだわからない。詳しい事はまだ聞いてないからな。」
「そうね。でも私は契約を切ろうと思ってるの。」
「寿命が縮むからか?」
「そうかもしれないわね。でも一番の原因は...使い魔が中二臭くてうざったらしいことかしら。」
神居が2体の悪魔の方に振り向くと、まだ喧嘩が続いていた。
「鍛え上げられた我が拳。受け止められるものならばやってみるがいい!」
「上等じゃない!私の能力、とくとご覧いれよう!」
セリフは大袈裟だが、どう見ても普通のパンチを避けたり受け止めたりしている様にしか見えない。
少年は神居に激しく同意した。小競り合いはこの後30分続き、引き分けで終わった。
少年は軽傷を負った少女を背負って再び帰り道に戻った。
「今度は絶対に許さないんだから。」
「ガキっぽいこというなよ。高校生って設定になってるんだろ。とっとと帰って勉強するぞ。」
「うげぇ」
「中間考査は近いんだ、俺が徹底的に教えてやるから覚悟しておけ。」
歩くこと約10分、いつもより遅く家に着いた。
ルシファーは本部の一角で暇を持て余していた。
「あ〜暇だな〜。今日は挨拶回りもないし。」
するとドアの隙間から霧が入ってきた。
「あ〜、ノックぐらいしてくれよ〜。」
ルシファーは回るタイプの椅子でクルクル回っている。
「まったく、仕事がないからってだらしないですな。」
気がつくと、霧は老いた男になっていた。
「先代アスタロトさんお久しぶり〜」
加速した椅子を先代アスタロトが溜息をつきながら止める。
「ところで最近どうですかな?」
「どうって何が?」
「私の後継者です。私が定年退職してから15年たった、もう出番でしょう。」
ルシファーは急に真剣な顔になった。
「ああ、まずいことになってる。」
「そうですか、では失礼。」
老人は今度は律儀にドアから退出した。
※1
アスタロトは毒などを扱う悪魔。尚水曜日以外は定休日の模様。
※2
カイムは本来鶫の姿をした悪魔で。言語に精通しており、口論なら誰にも負けないとされている。
もっと詳しく知りたかったらググってください。