騒動
校庭には部活中だった生徒や教室で勉強していた生徒でごった返していた。先生は少年がいなくなっている事に気づいていない。そんな混乱の中、1人教室を見上げる女子生徒がいた。
「あいつも天才の1人だったなんて意外ね。なんで気づかなかったの、カイム。」
『いや、あいつ昨日あたりまで普通の人間に見えてたから分からなかっただけだ。しかしアスタロトの野郎無茶しやがるなぁ。』
「全くです。」
教室では、犯人と少女が言い合っていた。
「お前さっきから何わけわかんねえこと言ってんだ。お前さ、自分で悪魔を名乗る奴があるかよ。」
どうやら少女は気が動転して、本来のプロフィールを名乗っているようだ。
「だから本当ですってば。試しにルシファー先輩に電話掛けますから。」
「つまりそいつがお前の保護者だな。よしかけろ。」
少女はルシファーに電話をかけた。
「もしもし、ルシファーです。アスタロトどうした。」
犯人は少女の携帯を奪うと大声で言喋り始めた。
「お宅の、自分からアスタロトとか名乗ってるお子さんは預かった。返して欲しくば...」
「あ、うちDQNの迷惑電話はNGなので切らせてもらいますね。」
「あ、手前コラ。」
通話が切れた。もちろん犯人もキレた。
「てめえらいい加減にしとけやぁぁぁぁ。」
一方少年は廊下を音を立てないよう歩き、なんとかバレずに教室の扉まで来た。ここからどうしようかと思ったが、すぐにいい作戦を思い付き扉を勢い良く開けた。
「誰だ手前。」
「そいつの兄だ。悪いが妹は無償で返してもらう。」
少年は少女に強く念じた。この2人はあくまで元々1人のようなものなので、強く念じることで意思疎通が出来る。そして少女に作戦の全てを伝えた。
「分かりましたよ。はじめからこうしておけば良かったです。」
少女は一瞬にして霧になると少年の耳の穴から体内に入った。犯人はあまりの出来事に呆気を取られている。
「じゃあそういうことで。」
少年は一目散に駆け出した。
「待てやゴルァァ」
犯人も全力で少年を追いかける。少年がトイレに入って行ったので、ゆっくり犯人は中に入った。見渡すと、個室の1つが施錠されている。強引に開けたが中に誰もいない。犯人は窓が開いているのに気づき窓から飛び出した。しかしここは2階である。犯人は腰から地面に落下し、周りの教員に取り押さえられた。少年は隣の鍵のかかっていない個室にいた。隣に鍵をかけ、窓を開けることによって、犯人に窓から逃げたと思い込ませていたのだ。少年はトイレから出た。
「もう出てきていいぞ。」
すると、少女がニキビ跡から出てきた。しかし動けない様子である。
「あいたたた。今は人間の肉体なのでこういう事は勘弁して欲しいです。」
しょうがないので、少年は少女を背負って校内から出た。犯人はその後の取り調べで容疑を認めているが、同時に悪魔だの人質が消えただのわけのわからない事を供述したそうだ。
下校中、少年はあの教室を見ていた女子生徒「神居真奈」と鉢合わせした。すると背負っている少女が神居を指さして、
「カイム、いるんでしょ。」
とつぶやいた。
「な、何言ってんの。」
神居は図星のような顔をしている。
「お前、天才なんだろ。」
少年が更に聞いた。神居の顔が腹をくくった顔になった。
「しかたないわね。」
神居がそう言うと、彼女の指先から霧が出て来て、彼女そっくりの男が現れた。