01ー『状況もこの先真っ暗闇』
「とりあえず、この敷地の狭さは致命的だよな。何とかしないと…」
まずは、この足を踏み外しかねないレベルの浮島を広げないと話にならない。えーっと、土地拡張は…お、出てきた。
「土地拡張は、主に自然素材を使用します、か。…この資源量で大丈夫なのか?」
自然素材の量はたったの50しかない。50がどれくらいなのかは知らないが。
とりあえず、拡張してみる事にする。
えーっと、土地の広さは…限界指定でいいか。それじゃ、土地拡張っと。―――って、え?ちょっとこれは…
「全然広がってねえじゃねえか!?」
資源を全消費して生み出された土地は、元居た浮島の広さが倍になる程度の面積だった。倍って聞こえはいいけど、元が2畳程度の広さしかなかったからな?どれくらいかは分かるだろう?
「こ、これじゃあ寝る事もできねえじゃねえか…もしここから落ちたら、多分生きて帰れねえぞ。」
というか、多分即刻ゲームオーバーになるだろうな。…いや、現実になってるこの世界なら、死ぬのかな俺。
それで、安全な土地が出来るくらいの資源が溜まるまで、この4畳程度の土地で寝泊まりしろと?死ねと言いたいのか。
…何か打開策は無いか?と考えていると、とあるウィンドウが出てきた。これは…ヘルプ?
ヘルプと書かれた項目には、いくつかのQ&Aが記されていた。…おお、最初期の進め方について書いてあるぞ!何々…
『最初期は、資源回復量も極端に遅い為非常に苦しい状態になります。なので、ゲーム開始から一定期間、ルーキーワールドと呼ばれる部屋に滞在できます。』
「ルーキーワールド?…えーと、ここでは自然素材の他、若干数の低級金属や魔法素材等が採取できます、か。ふむふむ。」
一種の救済措置か。行き方は…お、ヘルプの項目から行けるようになってる。なら、さっそく行くか。
俺は、ヘルプから『ルーキーワールドへ行く』の項目をタップし、別世界へ飛んだ。
*
「ここがルーキーワールドか。…何というか、大自然だな。」
飛んだ先には、草原が広がる世界だった。所々に小規模の林が乱立しており、遠目には山も見える。
それで、自然素材って何を採取すればいいんだ?…っと、ヘルプがあったな。
―ヘルプによると、足元にある土や草、木材、キノコや雑草等の素材すべてが『自然素材』となるらしい。
だが、素材によって自然素材の量の増え幅も違ってくるようだ。例えを言うなら、無尽蔵にある土を掘ってウィンドウに放り込んでも、数本の木材を放り込んで得た自然素材量に負ける可能性もある、という事だ。
そして凄い事に、この素材カテゴリ内では同じように、カテゴリ内の素材と交換が可能らしいのだ。
さっきと逆パターンだが、土で得た素材量を木材として出す事もできる、という訳だ。凄いな、全自動錬金術師じゃないか。
「それじゃあ、早速採取するか。」
俺は足元に落ちてる木の枝を拾い始めた。拾うのは主に木の枝を優先。他にも、大きめの雑草を根元から引っこ抜いていく。…完全に町内会の清掃じゃねえか。草むしりレベル。だけど、これには訳がある。
たかが木の枝、されど木の枝、だ。落ちてる枝といえども、元は木であり『木材』として扱われるのだ。即ち、草とかを集めるよりも効率がいい。
「…おー、だいぶ溜まったな。」
作業開始から2時間。(ウィンドウ内の時計で分かる)自然素材量は47になっていた。よし、これで例の物が作れる。
「…行くぞ。――物品作成《木製スコップ》と《木製の斧》!」
と俺が言うと、俺の手元にやや小型の木製の斧とスコップが出てきた。おー、成功だ成功。
これもヘルプからの知恵だ。貯めた資源は、必要に応じて品物に変える事も出来る。
自然素材は木材も含まれる。コマンドの1つである《物品作成》は、必要なカテゴリの素材量があれば、そこから目当ての物を作り出せる能力がある。
ただし、木材を材料に設定している為に、出てくるのは木製の道具だ。石製にも出来たんだが、何か重そうだからやめておいた。
まあとにかく、だ。これで土を掘り起こす事ができるし、小さい木なら切り倒す事もできるな。
もし壊れたとしても、まだ1、2回は作れるし、何とかなるだろう。
俺は作った道具を持って、木を伐採したり土を掘ったりし始めた。
*
「うあー疲れたーもう働きたくないー」
数時間後、へとへとになって元の真っ暗闇な世界にたどり着いた俺は、体力を使い果たしていた。
だが、数時間に及ぶ採取(という名の自然破壊)の結果、かなりの資源を貯めこむ事が出来た。
低級金属...5/1000 中級金属...0/1000 上級金属...0/1000 自然素材...1170/10000 魔法素材...1/50
自然素材が凄まじい勢いで増えた。低級金属と魔法素材が僅かに増えてたけど、俺には心当たりがない。…まあ、適当に掘り返したり切り倒したりした物をウィンドウに放り込んでただけだし。
だがまあ、これで多少は土地を広げられるだろう。
「よーし、消費資源指定からの――土地拡張!」
すると、目に見えてグーンと土地が広がっていくのが見えた。うおお、すげえな。家2、3軒くらいの面積にはなったな。
後、物品作成でやや小さめの鉄製の斧とスコップを作っておいた。僅かな低級金属もこれで使い果たしたが、これで明日の作業もやりやすくなるだろう。
「ふあぁ、寝るかー。…地面が冷たい。」
早く家を建てたいなぁ、と思いつつ、俺は眠りについた。
自然素材は、土や草、石や岩、木材等、自然に転がってる材料を言います。
低級金属は、ここでは銅や鉄、青銅を現します。
魔法素材は、…のちのち。