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短編小説

学校が武装した組織に占拠された。

作者: 伊那

昔別名義で書いたシリーズ第二弾。2011年製。

 学校が武装した組織に占拠された。せめてもの救いはずっと好きだったアレシナの隣に座れた事だろう。彼女は怯えていた。もちろんおれもだ。だが、人生最後になるかもしれないこの世の風景の中に、好きな女がいるっていうのは悪くない。


  学校が武装した組織に占拠された。


 生徒は皆体育館に集められて座らされた。おれたちの国はいわゆる情勢不安というやつが続いていて、それでも一般市民は余計な事に首を突っ込みさえしなければまともな人生を歩んでいけるはずだった。詳しくは知らなくとも、大勢の生徒たちを人質にとって政府と交渉をしたがる武装組織がいたっておかしくない時代だっていうのは、おれたち生徒の共通の認識なんじゃないかと思う。それがまさかうちに来るとは思ってもいなかったが、ひどい話だ。

 アレシナの様子は他の生徒たちと変わらない。やつらのAK-47が火を吹くのを恐れている。だが何とか気丈に振る舞おうとして失敗している自分に気がついている。それでも彼女はどうする事も出来ない。

 おれはというとこんな状況なのに、アレシナの隣にいるというだけで降ってわいたような幸運を逃してはならないと思いこんでいた。ずっと好きだった。交友はあったのに、それらしい事は何一つ言えなかった。むしろアレシナをからかい冗談で茶化してみせた。はた目にはおれがアレシナを好きだなんて見えなかっただろう。あと少しで死ぬかもしれない身としては、過去を後悔している。

 どっかのバカが騒ぎ始めた。トイレに行きたいとか止めろとか、生徒たちがわめいている。ロクな事にはならなそうだ。アレシナは身じろぎして、隣のミナルと不安げな顔をつきあわせた。ミナルはその隣に居るグレーに好かれているって事を知らない。まるでおれたちは片想い仲間だ。だがおれはグレーと報われない片想いの話をした事は一度もない。今になって少しくらいしてもよかったんじゃないかと思えてきてる。

 全ては武装グループたちのお陰だ。おれはつきつけられた死を目の前にしてやっと思い切りの良い人間になろうとしていた。

 アレシナ。彼女はお高くとまるのが好きらしいが、その内面はまったくもってやわらかで優しい。たまにマヌケなヘマもやらかす。おれは彼女の失敗をこっそりカバーした事がある。文化祭前日の事だ。あれも、この体育館での出来事だった。場所はステージ、未完成の舞台装置の周りにクラスメイトが集まっていた。

『アレシナ! あなたが任せてって言うから信じたのに』

『わたしだって、ハムセたちを信じたわ。でも、まさか途中で放って行くなんて』

『見張ってた方がよかったんだ』

 何て事はない、アレシナが任された仕事を不良どもがやっておいてやるとのたもうて放棄した、ただそれだけの事。アレシナもハムセたちを信用しなきゃよかったのだ。だがこれが文化祭を明日にひかえる日でなければ誰もあそこまでアレシナを責める事はなかったのだろう。

『時間がないのよ。まだ買い出しに行かなくちゃならないし』

『いいわ、わたしがやるから皆は買い出しに行って』

『今度こそ一人で?』

 アレシナは頷いた。大がかりな舞台装置を作るのにそれはないだろうと思ったが、アレシナはリーダーとしての信用を取り戻すのはこれがチャンスだと感じているようだ。皆もそれぞれ仕事がある。アレシナにも彼女の仕事があるのは周知の事実だが、実質彼女はこれまでにリーダーとして指揮を取る事しかやってこなかった。ここらできちんとリーダーとしての威厳を示さなくてはならない。

 クラスメイトたちは三々五々と各自の仕事に戻った。誰もアレシナを手伝おうとはしない。親友のミナルだけは彼女を気づかうが、アレシナはそれすら拒んで首を振った。名残惜しげにミナルはその場を去る。アレシナは自分の作業に取りかかった。

 おれは彼女の仕事を肩代わりする事に決めた。正攻法ではアレシナは仕事を譲ってはくれないだろうから、そっと体育館を後にする。体育館の外には何故か、古ぼけたピアノがあっておれはそれを蹴りつけた。あまり動かないそれを今度は両手で押す。するとけたたましい音を立ててピアノは倒れた。巨大な音がしたはずだ。アレシナは何が起きたのかとやって来るはず。それほどの音だった。

 予想通り彼女は血相変えて飛び出してくる。これから彼女はピアノ救出作業に躍起になるはずだ。おれはアレシナに姿を見せないようにして体育館の中へと戻る。正面口の鍵を閉めて彼女が入って来られないようにすると、舞台装置の完成を目指して腕をまくった。

 そんなわけでおれの影の活躍は誰にも知られていないはずだ。もちろん体育館から閉め出されたアレシナ自身も。だが構わない。知る者がなくともおれが彼女のためにした行為は変わらないのだから。

 まだある。アレシナはよく物をこぼすので、体育祭の横断幕作りの時にはきっとまた何かをやらかすと予想していたんだ。

 横断幕は国旗の一部と同じ黄色が基本だった。彼女は学校行事が好きだ。クールに行動しようとしているのに、にじみ出るうれしさや期待感が隠せていない。そうやってはしゃいでいたからだろう。今度はペンキの缶を蹴倒した。やった。横断幕のみならず教室やクラスメイトにまで黄色が広がった。些細なミスにしては被害が広すぎたため、周囲の視線はアレシナに突き刺さる。

 おれはいち早く行動した。新聞やタオルやらを持って彼女に駆けつける。缶を倒した彼女自身、一番の被害者だった。さりげない調子でアレシナに、そしてその周りのクラスメイトにペンキを一時的でもぬぐえる道具を手渡す。その時のアレシナは(まなじり)に涙を浮かべていた。自分の失敗を恥じているのだ。おれが視線を注ぎすぎたのが分かってアレシナは顔をこちらに向けた。顔についたペンキでも取り除くようにして、彼女は言った。

『ありがとう』

 まさか、おれがアレシナを最優先して動いたのがばれたのか、と危惧したが生憎とその後のおれたちの距離が狭まる事はなかったので杞憂に終わった。

 そんなわけでおれはアレシナにべた惚れだったが意図的に隠してきたため本人にも周囲にも勘ぐられた事はない。今思えば残念な事だ。誰か一人でもおれをせっついてくれれば何か変わったかもしれないのに。

「もれそうなんです!!」

 生徒の一人が仲間に支えられながら尿意を訴えた。まだトイレ問答は続いていたらしい。青ざめたその生徒はたしかに急を要するに様相に見えた。

「ぼくもトイレに行きたい!」

「あたしも!」

 声を上げる者が一人でもいると周囲も勇気がわいてくるものだ。追従するように、言い出しっぺを守るかのように生徒たちは主張する。トイレに関しては、たしかに生理的なもので止めろと言われて止められるものではない。食事は絶たれても尿意はやって来る。

 が、武装集団は尿意も許さないようだった。しばらく銃口に怯えながらも果敢に排泄の必要性を訴えていた生徒たちは突然黙りこむ事になる。AK-47から発射された弾丸が生徒たち三人の体を貫く。悲鳴が上がる。泣き叫ぶものたち。

 おれはそれを遠くの世界の出来事と見なすように目にしていた。極度の緊張状態にあるため感覚が麻痺してしまっているのかもしれない。それとももう諦めてしまったのだろうか。助からない、と。

 静まり返って、すすり泣きと武装した男たちの身に着ける金属的な何かが立てる音だけが体育館に満ちた。

「クソなら隅に行ってしろ」

 武装した男の一人がまだ撃ち足りないというように銃口を生徒たちに向けて牽制する。これで体育館はトイレにもなった。

「神さま神さま神さま……」

 耐えきれなくなったのだろう、アレシナは何かに取りつかれたように早口に助けを請う。それが近くに来ていた武装した男の耳に入って、アレシナを黙らせようとした。

「静かにしやがれ!」

 びくりと大きく身を震わせたアレシナはほとんど腰を浮かせてしまった。それが武装集団の気に入るはずがなく、座れと促されているにも関わらず、アレシナは自分を威嚇する銃器の近さに我を忘れて動けないでいる。おれは思わず手を伸ばしていた。

 大丈夫だ。何一つ大丈夫な事などないのにそう言い聞かせるつもりで彼女の肩に手を置いた。生身の人間に触れて冷静さを取り戻したのか、ゆっくりと腰をおろした。アレシナはやっとおれの存在に気づいたようにこちらを向く。

 いつ見てもきれいだ。こんな時なのに、こんな時だからこそそう思う。最後に見られるのがアレシナでよかった。

「スィルグ……」

 おれは、自分の家が灰燼に帰したのを目の当たりにしたような疲れた顔のアレシナを見た。ああくそ。彼女にこんな顔をさせるやつらをぶん殴ってやりたい。

 アレシナを抱きしめたい衝動にかられた。現実問題そんな事をすれば武装集団は不審な動きをするなと黙っていないだろうし、何よりおれとアレシナはそんな仲じゃない。

 だがこの不幸中の幸いは彼女の隣にいるのはおれだって事だ。アレシナにとっても最後に見る光景がおれかもしれない。それなら、行儀良くしなくちゃならない。最後に嫌な男と隣にいたなんて思われるのはごめんだ。

 なんていうおれの自制心も知らないのだろう、アレシナは近くにあった手を重ねてきた。おれが床についていた右手の上に、だ。我知らず顔を上げると、彼女はまた泣きそうな瞳をしていた。

「お願い……」

 しばらくこうさせて……。声にならないそれまで聞こえてきた。確かな感覚。触れる手はなめらかだ。それはアレシナのもの。

 体の真ん中がかっと燃え上がったような気がする。好きだと言われたわけでもないのに、叫び出したい気分。

 ああ、おれは彼女を守りたい。これで最後なんてごめんだ。おれの手の中にもAK-47に匹敵する武器があれば!

 残念ながらもうれしい事に、おれの手の中にはアレシナの手しかなかった。アレシナの左手。すべらかで、しっとりとしてやわらかく、あたたかい。アレシナ! 胸が突かれたみたいで苦しい。今、すごく彼女にキスをしたい。彼女が望もうと望むまいとお構いなしに。アレシナを味わいたい。

 アレシナ、アレシナ。お前がほしい。こんなにも手の届くところにいるお前が愛しい。血色をなくした唇は、それでもおれを誘い出す。光る化粧(グロス)を舐めとりたい。その奥底まで。

「……あ」

 気の抜けたようなアレシナの声に我に返る。おれは瞬時に全て思い出す事は出来なくて、つられるように後ろのやつが見ている方角に視線を移した。アレシナもそちらを見ていたからだ。

 ミナルがグレーからの口づけを一身に受け止めていた。これで後ろのやつらのマヌケ面が理解出来た。こんな状況なのに何を、というわけだ。かくいうおれも自分の事は棚に上げ、友人たちの行動に開いた口がふさがらない。

 ミナルは泣いていた。まるで涙をぬぐう代わりとでもいうように、グレーは彼女にキスを降らせる。恋人同士みたいだった。二人はいつの間につき合う事にしたのだろうか。それともまさか、この状況で上手くいったのか?

「そこ、何をしてる」

 鋭い声が飛んでくると、グレーはぱっとミナルから体を離した。武装男たちが訝しげにグレーたちを観察していたがすっかり大人しくなった彼らが銃の的になる事はなさそうだ。

 グレーと視線が合う。これが常時であればグレーは彼女をものに出来たとばかりににやりと笑ったかもしれない。だがグレーはそうせず、刹那の会瀬さ、と言わんばかりに切なげな笑みを浮かべた。苦笑にも似た、死が約束されている悲劇のロミオみたいな表情。それからお前はどうするんだ、という詰問する瞳。

 くそ、何でばれてんだ。グレーはおれがアレシナを好きだって事を知っていたのか? それとも手を重ねられて鼻の下を伸ばしているのでも見られていただろうか。やつの視線から逃れるように手の中に視線を戻すと、そこにはアレシナの華奢な左手。くそ、おれの手は汗でべたべたのはずだ。手を拭きたい思いにかられるが今はアレシナの手を振り払うだけになる、やめておいた方がいい。と、アレシナの手も緊張しているのだと分かって顔を上げると目が合った。

「びっくりしたね」

「……ああ」

 まさか、あの二人が。いい感じになってた過去があるかどうかを思い出そうとし、やめた。おれの高校生活はアレシナで大半が占められていたから周囲がどんなかなんて知るはずもない。

 一度顔を上げたものの、おれはアレシナの顔を正視出来ないでいた。グレーたちにあてられたかもしれない。彼女に、キスがしたくてたまらない。もうこれで終わりかもしれないんだ。いっそ、嫌われても構わないから行動に移すべきかもしれない。グレーたちのように上手くいくとは限らないから、おれは死ぬ前に自分のやりたい事をすべきなのだ。

 うつむいていても、アレシナの体の一部は視界に入ってしまう。細身の黒いパンツに包まれた彼女の両足。くそ、見るんじゃない。考えるな。

 アレシナ、アレシナ。お前がほしい。

 いつかこの事件が過去のものとなってあれは決して忘れられない記憶だよと言える頃には、おれとアレシナはどうなっているか分からない。ただの友人のままかもしれないし、恋人同士になっているかもしれない。もしくは破局を迎えた元恋人。どちらにしろ、行動を起こすなら未来においてではない。過去だ。未来にとっての過去、今だ。

「アレシナ」

 顔を合わせると不安そうな瞳。彼女が微笑むだけで、おれは胸がひどくざわめく。笑ってくれた方がうれしいのに、何故か息が出来なくなる。だから、今の表情も不本意なのにおれは、うれしくなる。今、彼女の瞳の中に映るものはおれだけだ。おれだけの彼女。おれのアレシナ。

「アレシナ、おれ……」

 続きを待つアレシナの瞳。きれいだ。よこしまな自分の考えを見抜かれたような錯覚に陥る。落ち着け、自分。心音がうるさい。左の胸が爆発しそうだ。

 おれが何も言えない間に、うるさくわめいた教師がまた一人武装した男の手にする武器の餌食になっていたが、その時のおれは知らない。

 アレシナは期待するような瞳でずっとおれを見つめていた。台詞の続きを待っているのだ。だがおれは、ここ一番で勇気が出ないでいた。ちくしょう、おれにもグレーくらいの気概があれば。

「……スィルグ?」

 口を開けばただの欲望があふれ出そうだった。違う、そうじゃない。おれはお前が好きなだけだ。愛してるんだ。こんな風に死ぬかもしれない今になってからじゃ遅いかもしれないけど、それでも、アレシナ、好きなんだ。

 好きだから、アレシナ、お前が嫌だと言ってもその唇にキスをしたい。愛しているんだから、お前と、おれは――。

「スィルグ、あのね、わたしがもし、」

 にわかに武装した男たちが騒ぎ出したと思ったら、突然爆発音が空気を切り裂いた。

 砂塵で視界が真っ白になる。いや、違う。爆弾の他に発煙弾もぶちこまれていたのだ。体育館は騒然となる。武装集団は銃器を振り回しその弾をなくそうとするかの如く撃ちまくる。何が起こったのかも分からずに生徒たちは皆身をかがめて床にはりついた。おれも、アレシナも、グレーも、ミナルも他のクラスメイトも下級生たちも皆、全員。

 銃器が弾を撃ち何かにぶち当たる音、男たちのわめく声、生徒たちの悲鳴。体育館は悲劇の舞台そのものだった。ほとんど放心したおれは叫び声を上げる元気もない。何なのだ、この状況は。

 気がつくとおれの右手はアレシナの手を失っていた。おれは顔から血が引くのが分かった。まだ近くにいるはずのアレシナの姿を探す。

「アレシナ!」

 顔を上げようとして、ひときわ大きな爆発音と大人数の足音が聞こえ、首を引っ込めた。警察の特殊部隊が動いたのか。

「スィルグ!」

 伸ばされた手が見えた。少し前までおれのものだったそれが。アレシナ!

 おれは這っていた。アレシナがまだ生きていると分かっていても、少しでも彼女の元へたどり着くのが遅ければ死んでしまうと思ってるみたいに急いで。手がアレシナに触れるとそれは彼女の頬だと知れた。あたたかい。

「好きだ。好きなんだ、愛してる」

 彼女を捕らえた。手当たり次第に抱き込んで唇を探して肌に吸いついた。彼女の肌。彼女のにおい。彼女のぬくもり。唇を見つけたおれはこじ開けもせずただ自分のそれを重ねた。少し埃っぽくて、化粧のにおいがして、アレシナの味だった。弾力があって、ゆるやかで、いとおしい。

「……スィ……、……!」

 おれの名前を呼ぼうとするアレシナの懇願の声で、おれははっとなる。

 軽蔑した眼差しで見られたら? 泣きそうに顔を歪めていたら? アレシナがおれを全身で拒絶したら? おれは自分の行為に青ざめた。無理強いなんてさせるつもりは――。

「あ、あのね。わたしの答えは聞いてくれないの?」

 困惑するような声。だが、拒否するようには見えない。腕の中から出て行かない。嫌がっては、いないのか……?

 おれの気のせいでなければ、アレシナはまるでさっきみたいに何かを期待するような瞳でおれを見上げている。今度は答えを待つんじゃなくて、彼女が何かを告げたいようだが、アレシナはおれを見ている。おれを、だ。

 無理矢理キスしたにも関わらず、逃げ出さずにいてくれる。

 って事は――。

 その時、流れ弾が一つ逸れた。おれは知らなかったが、おれ以外にも武装組織のものだか特殊部隊のものか分からない弾に撃たれた生徒や教師はいたという。特殊部隊が人質を救うのは当然の運びなのに、彼らは上からこうも命じられていた。“敵”を殲滅出来るならば多くいる人質は少しくらい死んでも構わない。

 アレシナの「答え」とやらも聞けずに、おれは腹をぶち抜かれて呆然としていた。混乱と硝煙の中でアレシナが叫んでいるのが見えた気がする。





   +++





 おれは今でも覚えている。彼女のぬくもり。

 彼女の答えがおれにとって肯定的なものだったはずだと、信じている。

 すべて片付いたら、行くから。だからそう泣かないでくれ。





   +++





 病院のベッドで自力で呼吸も出来なくなった男子高生が、チューブを体につながれて生きながらえている。動く事も出来ずにベッドに縛りつけられているようなものだ。

 傍らにはいつも離れない、同じ年頃の女子。

 何も語らない相手に彼女は常にその日の出来事を語る。あれから幾日もたったのに黙ったままの相手に向かって。

 男子の腕がぴくりと震えたのを彼女はまだ知らない。

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[一言] 現代社会を描いた作品として興味をひかれ、いざ読んでみたら、その緊迫感と描写に引き込まれました。 そして、ただの悲劇として終わるのではなく、可能性としての「生」への期待という描写にほっこりした…
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