赤燕
暖かい太陽の光を背に浴びながら赤燕は時に地上や空から地平を見る。
幾つの国を巡っても見つけられない自身の居場所を探しながら。
最初に入った国は貧困によって都までが廃していて、
その国で最後に見たのは国の王が都の最上部にて自身で命を絶つところだった。
赤燕は何も言わずに国を発った。
その次に辿り着いた国は、市民と貴族との争いが何十年も続いているようで、
その国で最後に見たのは市民の勢いに飲み込まれ抗う事も出来なくなった貴族に対しての拷問だった。
赤燕は何も言わずに国を発った。
その次に辿り着いた国は誰もが笑顔で幸せそうに生きていて、
その国で最後に見たのは笑顔の住民を材料にして幸せな人間を成型する機械だった。
赤燕は何も言わずに国を発った。
その次に辿り着いた国は用心棒と皇女が一夜にして不明になっているらしくて、
その国で最後に見たのは用心棒の故郷が皇帝の軍によって焼き払われるという計画だった。
赤燕は何も言わずに国を発った。
その次にたどり着いた国は、撫子に注意せよという警告が鳴り響きながらも、
日中には人の姿がまったくない国だった。
いくつの国を巡っても、
どれだけの大地を眺めても、
みえてくるのは人の様々な想いだけ。
そう思った時――赤燕は、
そう言えば、私が求める国とはいったいどんな国だったかと考え始めた。
今までどんな国を求めて、
どんな想いで探してきたのか。
そんな当たり前の事を考えないまま様々な国を巡った事に、
少しの後悔と虚しさを抱いて、
悠々と高く飛んでいく。
意味のある赤燕の旅は、
今この時から始まりを迎えた。
そんな赤燕が、
様々な想いを観測し記録するという目的を持つようになるのは、
まだまだずっと先の話。