遭遇、犬娘!
家から出てから俺は、おじいさんから貰った黍団子を食べていた。
すると、道端に可愛らしい女の子が立ってこちらを睨んでいる。
どうしたんだろう……
俺は気になったが、気付かない振りをして通り過ぎた。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
何か言ったような気がしたが気にしない。
「待ちなさいって言ってるでしょうが!」
その言葉と共に背中に激痛が走る。
耐え切れず、俺は地面に顔から滑り込んだ。
「痛った……」
そう言って顔を上げてみた。
そこには、青と白の縞々模様の布が見えた。
「縞々だ……」
俺はそう呟いた。
すると
「ば、ば、馬鹿~!」
声と共に足が近づいてくる。
ドカッ その鈍い音と共に俺の意識は無くなった。
俺が目を覚ました時、目の前に犬耳をつけた女の子の顔があった。
自分の頭の後ろには、柔らかい感触が……
もしかして……
膝枕!?
「大丈夫?」
「うん……」
「ごめん…、強くけりすぎちゃって」
「大丈夫、大丈夫。その分良い物を見れたし」
「それは忘れて!」
その子はそう言い、俺の頭を弱い力でポカポカと叩いてきた。
俺はあまり痛くないが
「痛い、痛いよ」
そう言った。
すると
「あ!ごめん……」
すぐに叩くのをやめてくれた。
「君、優しいんだね」
俺がそう言うと、その子は顔を赤くして
「な…、何言ってるのよ!も、もう平気そうね?」
こういってその子は急に立ち上がった。
そうなると当然、膝枕をしてもらっれいた俺の頭は地面に向かって落ちて いく
ゴツン
俺の頭の後ろの方に衝撃が走る
「痛って!!!」
地面は硬いな・・・
「だ、大丈夫!?」
心配してくれるなら最初からしないでくれ・・・
そう言いたかったが言ったらまたややこしくなりそうだから
「俺は強いからね 大丈夫さ」
頭の後ろ方を押さえながら俺は立ち上がった
「そう・・・ だったらいいけど」
「そうだ! 君、俺になんか用?」
「え?」
「俺に用があるんじゃないの?」
「あ! そうだ、あんたが食べてた物が欲しいの」
「あれのこと?」
そう言って俺は黍団子の入った風呂敷を指差した
「そう! あれが欲しいの!!」
「そんなに欲しい?」
「ええ!!」
「なんで?」
「なんでって・・・ 犬の世界ではあれを食べるといい飼い主に出会えるって言い伝えがあるの」
「へ~ そうなんだ」
「だからあれが欲しいの!!」
「じゃあ、俺の言うことを1つ聞いてくれるならあげるよ」
「いいわ! あなたの言うこと聞くからちょうだい!!」
「わかったよ」
そう言って風呂敷から黍団子を1つ出してその子に渡した
「ありがとう!!」
その子は黍団子を受け取ると一気に食べつくしてこう言った
「これでいい飼い主に出会えるわ」
「もう会ってるじゃん」
「え?」
「俺だよ、オレ」
俺は自分の方を指差しながら言った
「あんたが?」
「ああ、そうだよ ってか君に拒否権ないから」
「なんで!?」
「さっき黍団子食べたよね?」
俺はその子に笑いかけながら問いかけた
「う・・・」
その子は言葉を失っていた
ちょっと待てよ・・・
俺が今やっていることって脅しじゃないのか?
脅しなんて・・・駄目だよな
「やっぱなし・・・ 俺が飼い主なんて嫌だよな・・・」
暗い顔をしながら俺は言った
「え?」
俺が急にそんなことを言うのでその子がきょとんとしていた
「俺、先を急いでるからそろそろ行くわ いい飼い主が見つかるといいね」
そう言って俺は荷物をまとめて歩き出した
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
その子が俺の服の端を掴んできたので俺は止まった
「どうしたの?」
「い、犬はね 人への恩は忘れないの だから・・・ だから・・・」
「?」
この子は何が言いたいんだろう
「ご、ご・・・ ご主人様!!」
その子は顔を真っ赤にしてそう言った
「え!? ご主人様!?」
思いもしなかった言葉に俺は驚いてしまった
「そうよ あんたは今から私のご主人様なんだから」
「俺でいいの?」
「何度も言わせないでよね」
「そうだね・・・ そうだ! 君の名前は?」
「そんなのないわ だからご主人様が決めて」
「え!? 俺が?」
「そうよ」
「名前か・・・」
俺はその子のじっと見ながら考えた
髪は長く茶髪その上には犬耳、顔は可愛いしなにより、スタイルがいい!!
このことから考えて
「奈々なんていいんじゃない?」
「奈々・・・ いい名前ね」
「よし! じゃあ君は今日から奈々だ」
「わかりました、ご主人様」
そう言っている奈々の顔は嬉しそうに笑っていた
「奈々、俺はこれから鬼を退治に向かっているところなんだよ 奈々はどうする?」
「ご主人様についていくに決まってるでしょ!」
「でも、危険だよ?」
「私はご主人様についていくって決めたの!!」
「そうか・・・わかったよ 2人でがんばろう」
俺は奈々がそう言ってくれて内心嬉しかった
「ええ、がんばりましょ」
「じゃあ行こうか」
「はい、ご主人様」
こうして俺は奈々と共に歩き出した