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the god of death  作者: hayate
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命令ゲーム6 黒服

真実たちの10mほど前で龍也は走ることをやめ、歩き始めた。


「どうしたんだよ?ずいぶん遅くないか?」

歩いて近づいてくる龍也を責めずに、優しく真実は聞いた。


遅く来たことへの怒りはみられない。

むしろ心配しているようだ。


「理由ぐらい聞いてやるよ。」

早く手を繋ごうと近づいて来た香織と立っている龍也の間に体を入れて真実が遅れた理由を聞く。


「いやぁ聞いてくれよ!何か黒服の男にぃぃぃッ!!」

「言い訳してんじゃねぇ!」


話を始めた龍也の顔に真実の右フックが炸裂する。

龍也の話の途中にである。


左頬に激痛が走ると共に龍也は体ごと右に吹き飛んだ。

足や手より先に顔が地面着き、そこで始めて顔面にパンチをくらったことに気づいた。


「お前が理由を言えって言ったんだろ!!」


うつ伏せから体育座りに体勢を変えて左頬に手を触れながら龍也が言った。


「俺は3歩歩いたら何でも忘れる主義だ。」

「にわとりか!」

「ハハハハハッ」


真実のボケに龍也が間髪入れずツッコミ、笑いが起こる。

皆の不安そうな顔が笑顔に変わるのを真実は嬉しそうに微笑んで見ていた。


こんなゲームの中ででも皆といつもみたいに笑っていたい。

そんな想いから行動したようだった。


「よし!じゃあ龍也のこと1人十発殴っていいぞ!」


いや、やっぱりただ遅れて来たことにムカついていただけかもしれない……。


「殴るのは置いといて、手を繋がないと。」

座っている状態から立ち上がり、汚れた服を叩きながら、恐らく香織を探していた。


「ここです。手貸してください。」

遅れて来たことへの怒りなど微塵も感じていない優しさの塊のような香織は、龍也が自分を探しているということに気づいて近づいて行った。


「あぁ、香織だったっけ。はい。」

龍也は、一瞬だけ香織の顔を見ると、右手だけを伸ばして、汚れている箇所をまた探し出した。


「はい。」

小さく短く返事をしながら、香織は龍也の右手を左手で掴んだ。


♪〜♪〜♪〜


時刻は18時56分になった。


「はい。」

「10番ペア成功です。まもなく19時です。11番目の人は命令を実行してください。」


電話は切れる。

1分が過ぎて、57分に。


「皆、何が起きても絶対に死ぬなよ。」

「真実もね。」

震える声で会話が進む。

58分に。


「ドクンッ」

隣の人の心音が怖いほど鮮明に耳に入る。

59分に。


嫌な予感が全身を覆い、鳥肌が立つ。

19時に。


「……………」


何も起きない。


「早く!手を繋ぐんだ!!」

何か起こる前に繋いでしまった方がいいと考えた真実の本能的な叫びだった。


真実の考えはおおよそ正しい。

手を繋いでしまえば普通なら何も起きない。


しかし、おおよそ正しいは完全に正しいではない。

普通じゃないことが起きてしまえば真実の考えはそれまでなのだ。


そう。普通じゃないことが起きてしまえば。


真実たちがいる屋敷前の周りには森がある。

森は屋敷を囲うように出来ており、その森と屋敷を合わせて宮崎家となっている。


宮崎家の出入り口から…つまり、森の端から真実たちがいる屋敷前までは100mほどは軽くある。

その道を片道6秒ほどで走れる者がいたらその者の凄さは計り知れない。


19時00分04秒。


真実が恐怖の中震える声で本能的に叫んだ僅か二秒後、真実たちからは目で捉えることも許されない絶対的な距離から、2人の黒服が走り出した。


真実たちが目で捉えることも出来ない距離から走り出したのだから当然、宮崎家からもある程度の距離があった。

しかし、走り出した場所から宮崎家までの移動に黒服が有した時間は五秒であった。


19時00分09秒。


真実が叫んでから七秒が経ったこともあり、ちょうど桃子と真が手を繋いでいた。

それと同時に黒服が宮崎家に到着、侵入した。


19時00分11秒。


真と真実の2人だけが何かが来る。

それだけを理解した。


19時00分13秒。


ほぼ全員が黒服の存在に気づく。


19時00分15秒。


2人の黒服が若い男女であることに全員が気づく。

すると、真実たちの約30m前方で黒服が足を止める。

走りを辞めたことに驚き、2人の黒服を全員が凝視した。


次の瞬間……。

素人でも分かる圧倒的な殺気が真実たちを襲った。


『ヤバイ。』

そう思った時、黒服は消えた。

より正確に言うならば、勢いよく前に飛んだのを30m離れているのに見失ったと言うのが正しい。


再び黒服の男女を一番最初に見たのは、美穂と龍だった。


2人が一番に黒服を見たのは、2人の目が良かったからではない。

黒服が2人の目の前に飛んだからである。


驚く間もあたえず、男は美穂の女は龍の手を握った。





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