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夢で遭いましょう  作者: 神夏美樹
■第4章 崩壊・そして脱出
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・第7節 託された希望

「マーチンは、一体何をしようとしたの?」

 生徒会長はあたしの横をすり抜けて窓のそばまで行くと、空を眺めながら更にあたしにこう言った。

 「惑星『パピル』の開拓は、連邦政府が発案したものだった。マーチンは技術者の職を捨ててその開発に志願した。疲れちゃったのね、人間関係に。新たな環境に身を置けば、何かが変わると思ったのよ」

 あたしは、生徒会長の姿が何時もと違う様に感じられた。それは、絶望感にも似た諦めが感じられた。生徒会長は。暫く何も言わなかった。そして

 「良い天気ね…」

 彼女はそう呟いてからあたしに向かってゆっくりと振り向いた。

 「鍵を盾にして、マーチンは何をしたの?」

 生徒会長は力なく微笑む。

 「最初マーチンは技術者として純粋にコロナに興味を持ち、発掘、解析をしていた。彼にとってそれは有る意味楽しみでも有って、コロナとも良い関係でいられたの。でも、有

時から、彼に邪念が湧きあがって来た」

 「邪心?」

 「そう、邪心、マーチンは思ったの、コロナとナノ・マシンを使えば、連邦を乗っ取る事が出来るんじゃぁ無いかって。自分は未知の技術を手に入れた。世捨て人同様のマーチンは、そう考えると、居ても立ってもいられなくなった。コロナを『鍵』を盾に自分の意のままに動かして、遺跡の上に学園を設立して、秘密裏にナノ・マシンを宇宙にばらまき、自分は学園長と言う立場を利用して私腹を肥やして行った」

 ユキがあたしにしがみ付く、少し震えているのがわかる。息も少し荒くなっている。あたしは生徒会長に尋ねた。こんな荒唐無稽な計画、上手くいく訳が、無いではないか。現に連邦政府は、そのままだし、あたしは、この星に来るまでマーチンなんて人物のそんざいすら知らなかった。

 「技術者が、そんな、不確定な計画を立てる物なの?」

 あたしは、生徒会長にそう尋ねた。

 「そうね、そう思うわ。マーチンは、自分の未来を想像して有頂天だったのかも知れないわね。結局、マーチンの計画は上手くいかず、でも、その意思は学園に脈々と受け継がれ、闇の伝統は宇宙に向かってナノ・マシンを放出し続けた」

 そこまで言って生徒会長はにこりと微笑んで、言葉を区切った。そして…

 「もう少しだったのよ、本当に。後は、コロナが意思統合プログラムを起動すれば、全てが上手くいく筈だった」

 生徒会長の視線に力は無かった。聡明で頭の切れる彼女の姿は、見る影もない。全てを諦めてしまった様に感じられた。

 「それに地球外生命体が存在するなんて言う事になれば、人々の世界観がガラッと変わってしまう筈、経済活動だって麻痺しかねないでしょう。絶対無二の知的生命体だった筈の地球人にとって、自分の文明以上の星が有るなんて、今の人類レベルじゃ政情不安を煽るだけ。だから、連邦政府は、全て無かった事にするつもり。コロナも含めて封じ込めてしまおうって言う計画よ」

 あたしは、生徒会長の言葉を聞きながら、体の芯が熱くなって来るのを感じていた。

 「コロナは関係無いわ。不幸にもこの星に偶然落ちていただけじゃない。彼女には意思が有る。それは命と同じだ、そう思って接してやらなけれあならない、ニーナはそう思いましたが生徒会長は彼女をあくまで『道具』としか見て居ない様だった。

 あたしはやり場の無い怒りに襲われて、また、生徒会長に殴りかかりそうになったが、その感情を必死で抑えた。幾らなんでも、そう何回も暴力沙汰を起こす訳には行かないだろう…

 「まぁ、全てはあなたの手に有るわ…」生徒会長はそう言って、ゆっくりとあたしの横をすり抜けて部屋の外に出て行った。そしてすれ違いざまに「頑張ってね…」そう呟いたのを、あたしは、はっきりと聞いた。

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