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夢で遭いましょう  作者: 神夏美樹
■第3章 悪だくみ同好会の野望
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・第1節 悪だくみ同好会の野望

 「御帰還、おめでと~」

 ケイラの音頭であたし達はジュースで乾杯した。人事だと思って、皆、お気楽な物だ。あたしが反省室で、どれだけ心細い目に有って居たか。この小鳥の様にか弱い心を見せてやりたい物だと思ったが彼女達にとっては宴会の理由にしかならないらしい。

 「しかし、反省室行きなんて、何年ぶりなんだろうな。此処十年以上無いんじゃぁないか?」

 ケイラがあたしの背中をバンバン叩きながら、妙に嬉しそうにそう言った。あたしは記録破りの達人か?

 ユキとナルルも密かに目配せしてほんのり微笑んで居るしスェルはちょっと困ったなぁと言う表情であたしを見て居る。

 「それで、ニーナさん、反省室って、どの様な感じでしたの?」

 おそらくナルルには一生縁の無い場所だと思った。そしてあたしは反省室の老人の話を皆に話した。

 「やはり、生徒会は何か隠しているのでしょうね」

 スェルがコップのジュースを一口飲んでから、ちょっと真剣な表情で皆に向かってそう言った。

 「しかし、ニーナの携帯を取られたのは困ったな」

 ケイラが真面目な顔でそう言った。そうだ、携帯を取られてしまったから、生徒会長やハル寮長に内緒で外部と連絡を取る術が無くなってしまったのだ。寮長室の横の共同電話で外部と話すのは危険だ。この前のニュアンスから察するに生徒会長と寮長は陰で繋がってると思われたか。

 「後は、ユキの携帯が頼りね」

 あたしがぼそっとそう呟くと全員の目がユキに注がれた。

 「ユキ、あんた携帯持ってるの」

 ケイラが驚きの声を上げる。

 「まぁ、人は見かけに寄りませんね」とナルルそして全員が一斉に喋り始めて収拾がつかなくなった。ユキは頬を染めてはにかみながら皆を黙って見つめるしかなかった。そしてトンデモ無い事を一言…

 「だって…彼とは毎日話したいじゃないですか…」

 頬を染めて恥じらうユキの姿にあてられて全員の魂が抜かれてしまい、その日の会合は其処でお開きとなった。

 「ユキ…可愛い奴…」

 あたしはユキの一途さが愛おしくてたまらなくなった。もし自分が男だったら絶対惚れてると思う…そう実感した。


          ★


 反省室の老人は生徒会の事をもう一度洗って見ろと言っていた。あたしは、その事を実行に移した。それには先ず、生徒会と和解する必要が有ったので単身、生徒会室に乗り込む事を決めたのだ。そして形だけでも謝罪する。これで、生徒会の包囲が緩くなるも良し厳しくなるのも良し。どちらに転んでも突破口は開ける筈だ。

 生徒会室は職員室の隣に有る。扉の前で一度大きく深呼吸して徐にノックする。すると中から返事が有り、何時もの生徒会長の取り巻きが胡散臭そうな表情で扉を開いた。

 「生徒会長にお話が有るのですが」

 そう言って、ちょっと済まなそうだと見える様に演技する。取り巻きは「分りました」と一言言って、一度扉輪閉めて、暫くしてから再び扉を開いた。

 「お会いできるそうです、どうぞ…」

 胡散臭そうな表情を崩す事無く取り巻きはあたしの表情を伺いつつ生徒会長の前にあたしを案内した。

 「こんにちは、ニーナさん」

 生徒会長はあくまでにこやかだがこれは営業用だと思われる。そして全てを見通す力すら持っている様に感じられるから油断する事は出来ない。

 「先日はご迷惑をおかけしました」

 あたしは先手必勝、大きな声でそう言うと、深々と頭を下げて謝罪の意思を示した。地球の日本と言う処では、謝る時に「土下座」と言う物をする仕来たりが有るそうなのだが、流石に其処までやるのはわざとらしかったので、深々と頭を下げる、ここで留めておく事にした。

 頭を下げてきっちり三十数えてから徐に頭を上げた。其処には生徒会長の笑顔、そして優しい声であたしに向かってこう言った。

 「ニーナさん。良いんですよ分って頂ければ。あなたは反省室で十分反省しました。その時点で償いは終わって居ます。これからは、今迄の事は忘れて、楽しく明るい学園生活を送ってください。生徒会は何時でもこの学園の生徒達と共にあります」

 あたしは思わず「はは~~~」とか言ってひれ伏してしまいそうになった。過去に存在した「女帝」達って、こんな感じだったんだろうか…

 あたしは、その言葉を有りがたく拝聴してもう一度一礼してから左右の手足が同時に出るのを抑えながら生徒会室を後にした。

 「はぁぁ…」

 生徒会室を出て扉を閉めたら思わず大きく溜息が出た。そして廊下に向かって視線を移すと、何時もの悪企み同好会の面々が角からひょこっと顔を出す。そして、ケイラがぐいっと親指を出して見せた。あたしもそれを真似て親指を出す。取りあえず作戦の第一段階は成功である。それを確認して、悪企み同好会の面々は、それぞれの教室に戻って行った。

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