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断罪イベント365ー第1回 断罪イベントでマイクトラブル

作者: 転々丸

断罪イベント。

なろう界隈ではもはや「季語」と言ってもいいくらい有名な場面ですが・・・

本日はその荘厳なる場に――ちょっとした“機材トラブル”が入り込みました。

大広間はざわめきに包まれていた。

豪奢なシャンデリアが輝き、列席した貴族たちは期待に目を光らせている。


「今日はあの婚約破棄が見られるのだ」

――噂は既に王都を駆け巡っていた。


玉座の横に立つのは、若き王子クラウス。

金髪を揺らし、堂々と胸を張っている。

 

そしてその正面に並ばされたのは、美しいひとりの少女。

 

高位伯爵家の娘にして、王子の婚約者

――悪役令嬢として断罪される運命にあるアナスタシアだ。


大広間の空気が一段と張り詰めた。

ついに、王子の口から「婚約破棄」の言葉が放たれる瞬間。


王子は大きく息を吸い、声を張り上げ――


「本日、この場をもって――」


 ……ザーッ。


大広間に響いたのは、王子の声ではなく、不吉なノイズだった。

列席者たちは顔を見合わせる。


なぜなら、今日の断罪イベントは「王国広報室」の取り計らいで、

魔導拡声器を通して中継されていたからだ。

 

その拡声器が、よりによって今、異常を起こした。


「え? あれ……入ってます? 

     あ、あ、あ……テストテストテスト」


マイクに向かって真剣な顔で繰り返す王子。

ざわめきは、笑いを必死にこらえる咳払いに変わった。


「テスト……?」「いまテストって言った?」

「いや、でも断罪じゃないのか?」

「マイクの調子を試してる……?」


大広間の空気は一気に緩む。

断罪を見に来た貴族たちの期待は、白い湯気のようにしぼんでいった。


アナスタシアは、思わず口元を押さえた。

笑いをこらえているのだ。

 

数分前までは、理不尽な断罪を受ける覚悟を決めていた。

けれど今、目の前の王子は

「公開マイクチェック男」になり果てている。


 ――なぜか勝った気がする。


「……あ、あ、あ。本日、この場をもって……ザーッ……」

 

王子は必死に声を張り上げるが、

断罪の言葉はノイズにかき消されていく。

 

時折、変なエコーが混ざって「ざまぁぁぁあああ」

だけが無駄に響き渡り、列席者は顔を真っ赤にして肩を震わせた。


ついに耐えきれなくなった老侯爵が咳払いをしながら言った。

 「……クラウス殿下、まずは音響を整えてから断罪なされては?」


会場に、ドッと笑いが広がった。

 

その笑いの渦の中、アナスタシアだけはすっと背筋を伸ばす。

彼女の目は「私、もう十分ざまぁさせてもらったわ」と言っていた。


 ――こうして、断罪イベントは前代未聞の

「マイクトラブル事件」として歴史に刻まれることになった。


―終わりー

ご覧いただきありがとうございました。

本来は泣き叫ぶ場面のはずが、

まさかの「テストテスト」で会場全員がずっこける事件に。

まずは軽やかにご挨拶できたでしょうか。


さて、次はどんなテンプレで遊びましょう。

――マイクの調子が良い時に。


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