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【ダ=ザイン】〔1〕

 アーキタイプを残らず灰にした男は、慣れた手つきで煙草を取り出そうとしたが

「んぁ、ダメか」こちらに仮面越しの目線をやり煙草をしまった。

「少年、氷水(ひすい)の事、負ぶってやってくれ」

「俺も疲れてあんま動きたくねぇんだ」

氷水(ひすい)…ひすい…あぁ、会長の事か。

霧景(きりかげ) 氷水(ひすい)、確かそんな名前だったな。

今日まで接点が殆ど無かったから名前で呼ぶこともなかったしなぁ。

それにしても会長軽いな。

これであの斧ぶん回してたんだしそりゃ疲れるか。


「あ?氷水の名前も知らなかったのか?」

「知ってはいたんですけど、ずっと『会長』呼びだったので」

「そんくらいの関係で命懸けてたのか」

「まぁ、そうっすね」

「ハハッいかれてんなァ」


「名前忘れられてたの、ショック」

「うわぁ!」

耳元で急に離されると吃驚するなぁ!

落としそうになるから気をつけてほしい。

「会長起きてたんですね」

「やだ」

「え?」

「その呼び方、やだ」

ええぇ~~~

この人こんな感じだったっけ…。

随分甘えん坊になったなぁ。

「ごめんなァ、そいつ疲れると面倒な性格になるんだよ」

「そんな無理な要求はしないだろうから適当に了承するのが吉だぞ」

んな雑な。

「な、何がお望みで?」

「名前呼び」

「あ~、はぁ」

役職名で呼ぶのはそりゃ失礼か。

俺も『生徒』呼びされたら嫌だしな。

「ひ、氷水ちゃん?」

「!!」

いきなり『ちゃん付け』はキモイか…?

でも呼び捨てって訳にはいかないしな

『さん付け』は…いや、それが一番安パイだったぁぁ!

ミスったーーー!

「ひ、氷水さ」

「氷水ちゃんで」

「え?」

「『氷水ちゃん』採用」

採用されちゃった。

本人が気に入ってるならいいか…。

「…若いっていいな」

「兄さんも若いでしょ」

「え!氷水ちゃんのお兄さん!?」

全然似てない!仮面付けてるからなんもわかんないけど!

「血は繋がっては無いがそんなとこだな」

「複雑な感じっすかね?」

「まぁだいぶ複雑だな」

「そのうち一一君も、複雑になるよ」

「何、ドユコト?」

氷水ちゃんがまたよくわからないことを言ってる。色々説明を省きながらそういう事言わないでほしい。

気になるでしょうが。

「追々分かるよ」

また謎が増えた…


「あの、その仮面って…?」

触れていいのか分からなかったが気になりすぎた。

「なんて言えばいいのやら…所謂、正体隠しってやつ?」

 頬をポリポリと掻きながら困ったようだった。

「ホントは氷水もやってる筈なんだけどナァ!?」

 氷水ちゃんを指差し、呆れているような怒っているような風だった

「スタミナ切れ早まるから今回は無理」

「だからってなぁ!」

「気配もないしいいじゃん」

なんかすごい『兄弟感』あるな

「そもそも、兄さんが来るのが遅いのが悪い」

「おっまっえっなぁ!こっちは仕事帰りだったんだよ!」

「知らないし」

 ムキ―!っと起こるお兄さんに氷水ちゃんはどこ吹く風だ。

年頃の女の子だなぁ。先輩も家族にはこんな感じなのか。

シゴデキ人間とばかり思っていたけど、やっぱ普通に女の子だ。

斧振り回すのは普通じゃないか。


「っとスマン、()()()についてだったな」

 仮面とトントンと叩き、説明を始めた。

「氷水の斧と俺の能力は見たよな?」

「何となく察しているかもしれないが、俺たちは【超人】と呼ばれている」

「【超人】ってあの都市伝説の?」

とある少女がアーキタイプに襲われていたところを、仮面を着けた集団に助けられたという。

そしてその全員が超能力持っててそれでアーキタイプをボコボコにしたという。

正直信じてはいなかったが、色々見た今信じるしかない。

ボコボコというよりスパスパ切ってたが。

「超人が特殊な能力を持つ事は知ってるか?」

「噂で聞いたことは」

「よしじゃあ話が早いな」

「さっきみたいに能力を使うと目立っちまうだろ?そっから個人を特定されかねないしな」

「そこで()()()だ」

「この仮面は優れもんで、俺を別人だと認識するようになる」

「早い話、仮面を取ってもそれが俺だとは思えないってことだ」

「取るとこ見られてたら話は別だが」

原理は全く分からないが、なるほど随分と便利だ。

完全犯罪し放題じゃないか?

「目立つって言ってもシンカイ内だったら別に良くないですか?」

目撃者がいるわけでも無いのに。

てかこの人どっから来たんだ【トリップ】したのか?

「いるんだよ、見られたくない奴らが」

 「はぁ」とため息を吐き捨てる姿からは、何となく苦労を感じ取れる。

「氷水の【ギルガメシュ】は、『()()()()()()()()()』っていうシンプルかつ強力な能力なんだが」

 ぐったりと背負われる氷水ちゃんを指差し

「御覧の通り燃費が悪い」

「仮面はつけるだけでまぁまぁ体力持ってかれるからな」

ホントに疲れてる様子を見るに限界まで戦ってくれていたようだ。

やっと気付けた。

さっき俺を逃がそうとしたのも自分は動けないからという事だったのかもしれない。

余裕そうに見えたのも俺を不安にさせない為だったんだろう。

「氷水ちゃん」

「なぁにぃ」

「ありがとね」

「ふふ、どういたしまして~」




 暫く歩いているとお兄さんはふと立ち止まった。

「着いたぞ」

 彼は目の前の立派な民家を指さした。

 【哲道荘(てつどうそう)】と書かれた看板があり、推察するに下宿の様だった。

「着いたって…ここ何処ですか?下宿?」


「ん、出口」


「出口!?」

【シンカイ】に出口!?な、なに言ってるんだ!?

そんな簡単にあるなら、こんなに【トリップ】による行方不明者は出てない!

これが本当なら世紀の大発見だぞ!行方不明者なんて居なくなる!

しかもそれがこんなに普通の家!?ここだけが出口ってことなのか!?

 動揺する俺を横目に彼は、特別声に抑揚もなく

「入り口があるなら」

 扉を開ける。

「そりゃ出口もあるだろうよ」

 徐々に表情を覆い隠す仮面が薄れ消える。

 隠されていた麗しい顔が明らかになる。

 その顔を惜しみなく使った笑顔で彼は歓迎する。


「ようこそ少年、【ダ=ザイン】へ」

      「今日からここが君のあの世だ」

【シンカイ】

50年前に出現した世界を覆う海。異界に繋がっているという。

【アーキタイプ】

シンカイに生息する怪物。

【トリップ】

シンカイに引きずり込まれる現象。まともな生還者は無いはずだ。

【超人】

特殊な能力を持つ人。詳細は不明。

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